見出し画像

MOX燃料の値段は輸入ウラン燃料の10倍!!貿易統計を調べてわかったこと


危険!処分に困る!高い!MOX=良いことないのになぜ使う?

MOX燃料とは、原発の使用済核燃料を再処理して、プルトニウムを取り出し、それをウランに混ぜて作った原発の燃料です。MOX燃料は普通のウラン燃料と違って、新燃料の状態でも発熱していて、冷却が必要です。炉内で燃やす時も、より危険で、最大で炉心の3分の1しか入れられません。しかもMOX燃料の再処理は今後フランスで実験をするといっています。そして詳しく書きますが、値段もとても高い!燃料なのです。そんなMOX燃料をなぜ使うのでしょうか?

プルトニウムの使い道がなくて

日本の電力会社(原発の事業者)は使用済核燃料をイギリスとフランスに運んで再処理をしてもらっていました。当初の契約では廃棄物の返還は契約条項になく、再処理してプルトニウムを取り出し、それを譲渡すれば再処理費用が賄え、廃棄物問題も解決すると、とても安易に考えていたようです。しかし、再処理費用は高騰、反対にプルトニウムは不良債権となり、危険で厳重な管理が必要なお荷物になりました。また高レベル放射性廃棄物のガラス固化体が日本に返ってくることになりました。
1993年1月、日本はフランスから約1.1tのプルトニウムを「あかつき丸」で輸送しましたが、危険な核物質を海上輸送することに諸外国から反対の声が相次ぎました。また高速増殖炉もんじゅが動かず、核燃料サイクルが回らないのでプルトニウムの使い道がありません。多くの余剰プルトニウムを抱えることは、核武装への道を疑われ、国際的に批判を浴びます。そこで考えたのが「MOX燃料」を普通の原発で燃やすこと。海外再処理で発生したプルトニウムをMOX燃料に加工して、日本に運び、普通の原発で燃やすことにしたのです。

フランスからMOX燃料がやってきた

2022年11月、関電の高浜原発にフランスからプルトニウムを含む原発の燃料=MOX燃料がやってきました。
このときの貿易統計をみると、MOX燃料の値段がわかります。タイトル画像がその検索結果です。
192億7857万4千円で、これがMOX燃料16体分の値段になるので、MOX燃料1体当たりの値段は12億491万875円で約12億円となります。
以下のページから検索したものがタイトル画像です。
(具体的な検索方法は最後に解説します)

アメリカからの輸入ウラン燃料は

2021年6月と9月、アメリカから、高浜原発にウラン燃料がきました。
この値段も検索してみると、6月が66億9438万8千円、9月が69億5844万8千円。合計が136億5283万6千円。燃料体数は1回に56体で2回合計で112体。1体当たりの値段は約1億2千万円となりました。
比べてみると、MOX燃料の値段は輸入ウラン燃料の10倍!!になりました。

2021年6月輸入ウラン燃料貿易統計
2021年9月輸入ウラン燃料貿易統計

MOX燃料の値段はどんどん上がっている

1999年から6回高浜原発に搬入されたMOX燃料の値段は、どんどん値上がりしています。1999年搬入のMOX燃料の値段を1とすると、2022年に搬入されたMOX燃料は2.28倍にもなります。

高浜原発MOX燃料値段の推移

再処理費用も含めたコストだという説明

MOX燃料の値段について、この貿易統計のデータを示して、なぜこんなに高い燃料を使うのかと関電に聞いたことがあります。「MOX燃料はウラン燃料より高いが、経営努力で吸収する」との回答でした。貿易統計から算出された数字については「再処理費用などそれまでにかかった費用が含まれている」との説明でした。これは再処理費用も含めたMOX燃料のコストがウラン燃料に比べて10倍も高くなるということを関電も認めたということです。再処理をし、取り出したプルトニウムをMOX燃料として普通の原発で使うことはとても不経済!!なのです。

使用済MOX燃料をフランスに

関電森社長は2023年6月12日に福井県庁で高浜原発から使用済みのMOX燃料約10トンを含む約200トンをフランスへ搬出し、MOX燃料の再処理の実証実験をすることを発表。これをもって使用済核燃料の県外搬出の「約束が果たされた」と発言し、反発を受けました。
2022年搬入のMOX燃料16体の重さは10,587kg。ちょうど約10tになります。フランスに運ぶ使用済MOX燃料はたったの16体?!。ちなみにこれまでにフランスから高浜原発に搬入されたMOX燃料は合計80体です。

使用済MOXの再処理は難題がいっぱい

上の毎日新聞の記事に読むと、MOX燃料の再処理は実験段階で技術が確立していないことがわかります。
有料記事なので一部を引用します。
***日本では現在、関西電力高浜原発3、4号機(福井県高浜町)など3原発4基でプルサーマル発電が実施されており、約46トンの使用済みMOX燃料が保管されている。しかし、使用済みMOX燃料の再処理、つまり使用済み核燃料の再・再処理は、プルトニウムの含有量が多いことなどが原因で、まだ世界的に技術は確立していない。
 さらに、仮に今後の研究開発に成功して「再・再処理」ができるようになったとしても、軽水炉で「再・再利用」するには、別の大きな問題が待ち構えている(中略)
関西電力は、使用済みMOX燃料の再処理の試験のために、使用済みMOX燃料10トンと一緒に、使用済みウラン燃料190トンをフランスに搬出する計画だ。関電によると、使用済みMOX燃料を使用済みウラン燃料で薄めるのは、プルトニウムの含有量が多い使用済みMOX燃料の「臨界」などを防止するためという。元原子力機構の岩井さんは「(使用済みMOX燃料に含まれる)質の悪いプルトニウムを、(使用済みウラン燃料に含まれる)質の良いプルトニウムで薄める意図もあるのではないか」と話す***

使用済MOX燃料は冷却するのに300年以上かかる

「使用済MOX燃料の発熱量が、使用済ウラン燃料と同等になるのに300年以上かかる」と経産省資源エネルギー庁の役人が認めています。以下は2019年6月21日、福島老朽原発を考える会等の政府交渉報告からの抜粋です。
**交渉で、参加者が一番驚いたのが、プルトニウム燃料(MOX燃料)をプルサーマルで用いた後の使用済MOX燃料の発熱量が、使用済ウラン燃料と同等になるのに300年以上かかることをエネ庁が明言したときでした。こちらで示した資料は100年までしかなく、100年以上かかりますねと聞いた答えがこれでしたのでなおさらでした。ウラン燃料ですら、使用後15年経って発熱量が下がってからでないと、乾式貯蔵に回すことはできません。使用済MOX燃料は、300年以上経たないと再処理はおろか、運搬することもできないことになります**

使用済MOX燃料はフランスに運べない?!

高浜原発のMOX燃料のうち一番古いものは福島事故直前の2010年12月起動時に高浜3号に装荷された8体で、2020年1月からの第24回定期検査で使用済MOX燃料となりました。(毎月26日のランチタイムに関電前に集まる女たちと日本消費者連盟関西グループの2023年4月の質問に対する関電の回答より)
関電が2023年10月に発表した「使用済燃料対策ロードマップ」によれば、フランスに運ぶのは2027年70t、2028年70t、2029年60tとなっています。2027年なら取り出し後7年、2029年なら取り出し後9年で輸送することになります。
ほんとうに運べるのでしょうか?
https://www.kepco.co.jp/corporate/pr/2023/pdf/20231010_1j.pdf  関電使用済燃料対策ロードマップ

使用済核燃料を持っていくところはない

核燃料サイクルは回っていません。使用済核燃料の中間貯蔵施設の具体的地点名を挙げられず、福井県から原発の停止を求められそうになった関電が、ごまかすために作り上げた(でっちあげた?)計画がフランスでのMOX再処理実証実験だと思います。たとえ再・再処理がうまくいったとしても、再・再処理したMOX燃料はどれほど危険で、扱いにくく、コストも高いものになるのか、考えると怖いです。

関電は使用済核燃料の持って行き場のないことを素直に認めて原発を止めるべき!です。


*1 関西電力高浜原発3号機(加圧水型軽水炉、出力87万キロワット)でプルサーマル発電に使用する予定のプルトニウム・ウラン混合酸化物(MOX)燃料16体を載せたフランスからの輸送船が11月22日、福井県高浜町田ノ浦の同原発に到着した。 (中略)3、4号機にはこれまで計64体のMOX燃料を搬入。営業運転中の3号機では24体の使用を終えており、現在は4体を装荷し稼働している。4号機では20体の使用を終え、現在は16体を装荷。順調に進めば12月1日に営業運転に入る(2022年11月22日の福井新聞の記事から引用)

*2 1999年10月に搬入されたイギリスのBNFL社で作られたMOX燃料は、輸送後にデータ不正が見つかり、返送されました。データ不正について詳しくは以下の関電の調査報告をご覧ください。MOX燃料はプルトニウムが入っているので製造作業も大変なんです。フランスのMOX燃料工場でもいろいろ問題がおきて、製造がうまく進んでいないようです。詳しいことは*3で紹介する毎日新聞連載「迷走プルトニウム」をぜひ読んでみてください。

*3 「迷走プルトニウム」毎日新聞で連載されているシリーズ==国内外のプルトニウムの問題が取り上げられていて、わかりやすい記事です。

「高すぎるMOX燃料 電力会社が口をつぐむその価格と経済性」2022年9月5日の記事には貿易統計のデータも出てきます。

*4 貿易統計の調べ方
① 財務省貿易統計HP トップ画面

②貿易統計検索ページを選ぶ。

③ 1、普通貿易統計について調べる を選ぶ。

④「その他」の中の その他の統計・情報について調べるを選ぶ

⑤税関別国別品別統計を選ぶ。

⑥輸出入の指定 は 輸入を選ぶ。

⑦単一年月 MOX燃料が搬入された年月を選ぶ。

⑧高浜原発の場合は官署指定から大阪税関の430舞鶴税関を選ぶ

⑨国参照指定から西欧 210フランスを選ぶ
(ウラン燃料の場合は北米 304アメリカを選ぶ)

⑩品目 参照指定 から
84類:機械類(84.01項~84.24項)を選ぶ。
核燃料類のコードは 8401.30-000(MOX燃料もウラン燃料も同じ)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?