野本九尋

ものかき。

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最近の記事

セウォル号沈没事故から10年

今日でセウォル号沈没事故から10年のセウォル(歳月)が流れました。 あの事故の衝撃は今も忘れません。あらゆることがリアルタイムでした。事故はネットですぐに日本にも伝わりました。高校生たちがスマホからSNSなどを通じて“助けて”というメッセージを発信していました。映像にうつる高校生たちはパニックになっている様子ではなく、船室内に留まれというアナウンスに従って、大きく傾いた室内で、手に持ったスマホで家族などに連絡をとっていました。あの時、高校生を含む乗客たちはまだ生きていたので

    • ビットコイン通貨論

      ビットコイン通貨論とは ビットコインについては賛成(擁護)論者と反対論者がいます。「どっちでもいい派」もいるでしょう。 私はその何れであるとも言い難いです。賛成論者は現状のビットコインの在り方をよしとし、ビットコインを擁護します。私は現状のビットコインの在り方をよしと思っていないので多くの賛成論者と意見が異なります。一方の反対論者はビットコインについて「あんなものは禁止・廃止すべき」と言っていますが、私は基本的にビットコイン支持者なので禁止・廃止すべきとは思っていません。

      • ケーニヒスベルクの皮肉〜カントと平和〜【生誕300年】

        今年2024年は、哲学者イマヌエル・カントの生誕300年にあたるため、それを記念した大小さまざまなイベントが計画されています。 中でも大きな国際会議が二つ予定されています。一つは、4月にロシアのカリーニングラードにある、イマヌエル・カントバルト連邦大学で、生誕300年記念国際会議が開かれます。もう一つは、9月にドイツのボン大学でやはり国際会議が開かれる予定です。 なぜ二つ開かれるのでしょうか。それにはカントが生まれ育った街が関係しています。 哲学者イマヌエル・カントは1

        • 日本の女性医師のパイオニア宇良田唯 〜生誕150年〜

          石原あえか『ドクトルたちの奮闘記』(慶應義塾大学出版会)を読んだ。 宇良田唯について書いた本を読みたかったからだ。宇良田唯は明治〜昭和初期頃の女性医師。日本初の女性医師の一人である。宇良田唯について書かれた本を読みたいと思っていたがなかなかなくて、やっと見つけたのがこの『ドクトルたちの奮闘記』だった。 この本は副題が「ゲーテが導く日独医学交流」なので、宇良田唯だけではなく、幅広く日本とドイツの医学交流の歴史を扱っている。文学者である著者がわくわく楽しみながら書いている雰囲

        セウォル号沈没事故から10年

          お金とは何か 〜価値の本源〜

          日経が #お金について考える というお題で募集していたので、お金とは何かということについて考えてみたい。 日本経済新聞で「今読むべきお金の本」というシリーズをやっている。 私はここに二冊の本を加えたい。アダム・スミスの『国富論』と三浦梅園の『價原』だ。今から約250年前にお金とは何かということを根源的に考えた二人の思想家の本だ。 私は、お金の価値の本源について考えたくて三浦梅園の『價原』を読んだ。そのあとにアダム・スミスの『国富論』を読んだら、三浦梅園の思想と多くの共通

          お金とは何か 〜価値の本源〜

          理想主義のドイツ人と現実主義の日本人

          ドイツ人と日本人の国民性は対極にある。 ドイツ人と日本人は似ている、とよく言われる。勤勉で真面目なところ、法律を守るところ、時間を守るところ、等々。 一方で、私はドイツ人と日本人は真逆でもあると思う。ドイツ人は理想主義者で日本人は現実主義者だ。この点においてはドイツ人と日本人は対極に位置している。 ドイツがいま凋落しているのは現実を見ずに理想ばかり追い求めているからだ、という説をネット上のどこかで見た。ドイツという国がいま本当に凋落しているのかという真偽はさておき、その

          理想主義のドイツ人と現実主義の日本人

          CBDCの本質は「デジタル」ではない

          今月、日本経済新聞が「動き出す中銀デジタル通貨」という特集を上、中、下、番外編と四回に分けてやっていた。日本国民の間でまだほとんど話題になっていないCBDC(Central Bank Digital Currency 中央銀行デジタル通貨)に関する特集である。 ここに「紙幣等」というグループと「ビットコイン等」という二つのグループがあったとしよう。そこに新しくCBDC(中央銀行デジタル通貨)が入って来てどちらかのグループに分類しなければいけないとしたら、あなたはCBDCをど

          CBDCの本質は「デジタル」ではない

          死亡・相続ワンストップとマイナンバー

          2023/10/17の朝日新聞(多事奏論)に載っていたこちらの記事。 記者が、親が亡くなったときのさまざまな手続きがいかに大変だったか、そしてそこからタテ割り行政を生活者視点で見直すことを指摘している。 記者も記事中で言っているように、今は「年150万人が亡くなる大相続時代」であり、このような大変な手続きを経験しなければならない人は何百万人もいる。「死亡・相続ワンストップ」の話は国でも以前から出ている話なのに一向に改善されないのはなぜなのだろう。 記事中にはマイナンバー

          死亡・相続ワンストップとマイナンバー

          関東大震災100年

          #日経COMEMO #NIKKEI 今から100年前、関東地方を強い揺れが襲った。日本史上最大の地震の一つに数えられる関東大震災。神奈川と東京で揺れが大きかった。特に人口が密集していた東京では被害が大きかった。東京の中でも特に被害が大きかったのは本所・深川地域。今でいう墨田区・江東区あたりだ。地震後の火災によりほぼ「全滅」と言われた。東京市内全域で甚大な被害が出た。 その当時から今に至るまで多くの学者が東京の街づくりとその危険性について指摘してきた。にもかかわらず、東京は

          関東大震災100年

          三浦梅園の経済論 〜生誕300年〜

          今年2023年は三浦梅園生誕300年の記念すべき年になる。大分県国東半島の思想家、三浦梅園は自然哲学者として有名だが、経済に関する書物も書き残している。『價原』という本がそれである。『價原』はお金の本質とは何か、価値の本質とは何か、に鋭く迫って考察している名著であるが、現代ではほとんど読まれていないのをもったいなく感じる。 梅園が語るお金の本質 梅園『價原』に曰く、 と。 つまり、「お金」は小さいが故に、そこに価値を載せて運ぶことができるが価値そのものではない、と。お

          三浦梅園の経済論 〜生誕300年〜

          マイナンバーカードの本当の問題点

           マイナンバー、マイナンバーカードで相次いで問題が発覚し、国民のマイナンバー制度に対する信頼はどんどん下がり、ますます厳しい批判の目が向けられるようになってきた。  しかし、マイナンバーカードの本当の問題点は誤紐づけではない。  今のマイナンバーカードのより深刻な、そして一番の問題は、一本化による「強制」である。マイナンバーカードは、マイナンバーと違って、本来持つか持たないかは選択式であり自由だった。これが国民に「便利」を齎す。私はマイナンバーカードは当初は賛成派だった。

          マイナンバーカードの本当の問題点