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鈴木のぞみ「特別な何かでなくても」南伊豆6日目

・ゲストハウス コドコド
・伊浜地域でスケッチ
・千景さんとKibi


・ゲストハウス コドコド
昨夜、小浦のお囃子の見学と打上げに参加させていただいた後、帰ってからはコドコドのオーナー よしえさんとゆっくりお話をした。
ここは、12年前に作られた、南伊豆初めてのゲストハウス。

ここには、アップライトピアノがある。それが、ここを選んだ理由。
ピアノの音とキーボードでは、曲作りへの入り込みが全然違うのです。

コドコドのピアノは、よしえさんが生まれた年が同じ

2日間とも、よしえさんが朝食を用意してくれる間に、ピアノを弾きながら、これまでの滞在のいろんなことを思い出していた。
ふと上を見上げると、、
龍が、カエルが、猫が空を舞って遊んでいる。龍とゆかいな仲間たち・・なんというワンダーランド!
これにわたしの脳内は興奮しまくって、物語が走り続け
・・気づいたら止まらなくなっていた。
よしえさんが、「朝食を準備しながら映画の中にいるようで、なんだかすてきな気持ちになった」と言ってくれた。同じ空気を共有できた感じがしてとても嬉しい。

空舞う龍とゆかいな仲間たち
窓の向こうは山が見えて静かで心地よい

・伊浜地域でスケッチ
朝食を終えたらよしえさんにお別れを告げ、南伊豆町役場の山口さんに会いに。今日は南伊豆の伊浜地域に行きたいと思ってると伝えたら、伊浜の区長をされている松本さん(つねさん)を紹介してくれた。伊浜は、南伊豆の西側、少し隠れたような場所にあって、何だか惹かれて帰る前に行きたいと思っていたのです。

伊浜に着いて、つねさんに、天竜の龍山というところから来ました、と言ったら、「ああ、龍山村ね」って。龍山、知ってるのですか!?とビックリ。
行政のお仕事してたから、春野町には行ったことあるし、とのこと。なんだか嬉しい。

つねさんは、今伊浜の町で作っている途中のコミュニティスペースに案内してくれた。

もともと庄屋さんのお家だそうで、建物も立派だしお庭もものすごく広い!

つねさんは、このピアノを甦らせたいんだと、音がどんなでも、ここにあった、このピアノであることに意味があるんだと熱く語ってくれた。

今はまだ1/5くらい音がでなかったが、ひっそりとかわいらしい空気を纏っていた

この近くに、地域おこし協力隊の人がゲストハウスを準備中なので、そこに泊まる人たちがここに集まったり、町の人が集まったり、
プロもアマチュアも、ジャンルも関係なくフラットな場所にしたいんだ、と言っていた。
こんな区長さんがいて、こんな素敵な場所があったら、きっとあっという間にここが輪が広がるんだろうなぁと思った。

床はリノベーションイベントでみんなで張り替えた
手前の緑の屋根のお家がゲストハウスになる予定

そして、井浜に訪れた理由のひとつは、滞在初日からずっと探し続けた、スケッチ場でした。海を見ながら、静かにその場所の音とアンサンブルができる、音日記ができる場所。

つねさんに聞いたら、伊浜海岸で自身が作られたという いくつかの「流木ベンチ」に案内してくれた。なんて素敵なベンチ!広めのスペースがあって、私が求めていた理想的、以上の場所。

流木は重くて大人2人でかついでのせたらしい

この日は朝から曇ったり雨が降ったりで、夕陽そのものは見えなかったけれど、ピンクのオーロラのような変わった空が見えた。
寄せてはかえる波のさざなみ、少し石の音、鳥の声、やわらかい風、、
自分も、そこに控えめに混ざってできあがるアンサンブル。

お散歩で通りかかったここに住む女性が、行きも帰りも 立ち止まって聴いていて 「いつもの景色が、あらためて素敵に思えるね。何だか涙がでちゃう」と・・・そして、私も涙が出ちゃう。

ここに住む稲葉さん

つねさんは、私がポロポロと音を鳴らしている後ろで
待っていてくれて、なんだか申し訳ないな、と思っていたのだけど
振り返ったら すごい!すごい!と、興奮していた。
ここで、ピアノの音を聴いたのははじめてなんだって。
波の音があって、自然の音の中でメロディが重なることを 新しい発見だと言って喜んでくれていた。

・・そうなのか。

これは自分にとっての日常で、なくては生きていけないくらい 当然のこと。
そして、私は なんとなくこの風景にインスピレーションを感じながら馴染む音を探してポロンポロン鳴らしているだけで、ピアニストでもないし ピアノとして聴かせる音は鳴らしていない。(作曲のためのメモをしている)
でも、つねさんにとってはこの風景の音とはじめて混ざり合ったピアノの音は初めて。
先ほど一緒に見たコミュニティスペースで何をしようか、といろいろ考えていたつねさん、ここでもできるのか。こんなすてきなのか。と。

マイクロアートワーケーションに来て、「何かこの地域に来た意味をもたなければ」と思って肩に力が入ってしまい、自分の感性とつたない能力と、何がマッチするのかを探していた日々だった。 そうか、いつも通り過ごすだけで よかったのか。・・つねさん、稲葉さん、ありがとう。涙

つねさんは、Instagramで井浜の夕陽や、打ち上がったもののいろいろを毎日アップしてるようです。 つねさん Instagram <海からの贈りもの>

流木ベンチで 夕陽が落ちるまで

何とも言えない幸せな気持ちで伊浜海岸をあとにして
夕食を誘ってくれていた、小浦の画家
矢谷千景さんのところに戻った。

昨日お世話になったよっしーさんと、3人で食べよう、と言ってくれていたけれど
戻ったのが遅くなってしまったので、よっしーさんは翌日のお祭りの準備と練習があるからと先に就寝。

千景さんと2人で、今日も体にやさしい食卓。お互いの作品づくりや食べ物のお話をしながら。
あおり烏賊、今日近所の人が釣ってくれたみたいで、ものすっっっごく美味しくて美味しくて・・感激でした。

お野菜は千景さんが育てているもの
千景さんが拾った銀杏

夕ご飯の前に千景さんが連れていってくれた 「Tea Salon Kibi」にも、ピアノが置いてあって。

11/1から始まる「矢谷長治 写生展」のために、生け花をしている間 ここでも 伊浜の波打ち際を思い出しながらピアノを鳴らしていた。
・・わたしのピアノは、"弾く" というより、"鳴らす" という感じで、日記のように今日の音をつまびいているだけなので 曲を演奏している感じではないのだけど

帰り道、千景さんがぽつりと
「なんだか、ただただそこに馴染んでる音で 今、展示準備で忙しかった疲れが癒やされたなぁ」と言ってくれた。

今日は、朝から夜まで、2か所でピアノがさわれて、伊浜海岸で夕暮れスケッチもできて なんと豊かな1日であったことか。
そして、あまりこんなふうに 自分のスケッチ(即興の書き落とし)を人に聴かれる機会もあまりない。でも、常にゆらぎ続ける自然とのアンサンブルにより、完成された曲じゃなくても心地よいと感じてくれるんだなぁという気づきがあった。


今日、実は昼間 伊浜に行く前に、五十鈴川美術館にお邪魔して、よっしーさんと千景さんにお茶をたてていただいた。
MAW6日目、本来 話すのも歩くのもゆっくりな私は、似たような空気を纏う人たちに触れ、
そしてだんだんこの町のことも知れて、やっと力を抜いて過ごせるようになってきた。明日が最終日。

京都の抹茶と下田の豆大福

MEMO :
・粟の長者伝説
・この海とともに、生きる
・マーガレットのように美しく清らかな
・ウバメガシのようにたくましく
・灯台の光のように明るく
・湯けむりのように高く仰ぐ文化
・山の緑のようにうるおいと活力

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