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読書記録『国盗り物語 四』

どうもこんばんは、歴史大好き礼岸好男(れきしすきお)です。
きょうは前回の続き、『国盗り物語(四)』の備忘録です。
『国盗り物語(三)』の読書記録は以下からどうぞ。

そんなわけですっかり光秀ファンになってしまったわたし。
四巻でも光秀目線でのストーリーは続きます。
ここでも改めて、主人公は織田信長と明智光秀のふたりなのだなぁと感じます。
三巻では信長の実力を認めつつ、人柄やふるまいにはどうも納得のいかない光秀でしたが、四巻ではその不信がますます大きくなっていきます。
読み手としては「ここからどうやって謀反を起こすに至るのだろう」とドキドキというか、ハラハラというか、なんとも表現し難い気持ちでページをめくるわけです。
作中、信仰をもたない信長が戦略として神仏への冒涜ともとれる策を講じたさい

「信じる信ぜぬというより、他人の尊ぶものを尊べということがございます」 ー引用:司馬遼太郎『国盗り物語 四』(新潮文庫)

と光秀が言います。
このことばに光秀の人となりが現れているというか、真面目で他人への思いやりのある人物であることがうかがえます。
このような光秀の人間性は作中で多く見られ、目的のためなら手段を選ばないとも思えそうな信長の言動への憤りが積もっていったことは明らかです。
これに対し信長はというと

信長にとって、光秀の頭を摑み砕きたいほどにやりきれないのは、光秀が平俗きわまりない次元の住人のくせに、言葉を装飾し、容儀にもったいを付け、文字のあることを誇りに、賢らにも自分を説きたがるところである ー引用:司馬遼太郎『国盗り物語 四』新潮文庫

といった具合で、光秀の言葉が響かないどころか「光秀のくせに生意気だ」状態。
しかもこのシーン、頭髪がだいぶん寂しくなっていた光秀の髷をわしづかみにして「このキンカン頭!」と罵っているところです。
もう見てらんない!やめたげて!と止めに入りたくなります。
とはいえどちらの言い分もわかる。
古典を愛し、歌詠みにも精通し、仏教文化や美術を好む光秀からすれば、「作戦としては有用だけど、人としてそれはやっちゃだめだろ…」と思わざるを得ない延暦寺焼き討ち(結局光秀がやるんだけど)を命じられたら、たとえ主君であっても言い返したくなります。
かといって、古典を好まず革新的な趣味をもち・古い礼儀(目上の人と対峙するときのまわりくどい作法など)に明るくない信長からすれば、直属ではないにせよ自分に仕える光秀に口答えされては「う、うるせー!!」でしかありません。

この作品を読んでいると、信長が現代に生きていたら何かしらの「生きにくさ」を抱えていたのではないかなと思うような不器用さを感じます。
天下布武、武で全てを解決できる世界であったからこそ信長はスターだったのだなぁと。
(とはいえ武田信玄との外交手腕を見ると、見事な戦略的懐柔策をとっており、したたかさを持ち合わせていることもわかるのですが。)

話は変わりますが、明智光秀の謀反のきっかけには「本当は自分が天下を取りたかった説」「信長にムカついた説」「信長を恐れた説」等々いくつかの説があるんですね。
そのなかで「光秀認知症だった説」というのがあることをご存知でしょうか。
これは比較的信頼度の低い説のようですが、大河ドラマ『麒麟がくる』放送前?中?にNHK BSでこの説にフィーチャーした番組を放送していました。
その番組では認知症のなかでも「レビー小体型認知症」である説を推していたのですが、それを裏付けるポイントとして

・本能寺の変直前に神社に立ち寄りみくじを引いたが、三本あるうち一本を引くべきところを当たりが出るまで(三本全て)引いた
・ちまきを出された光秀は、ちまきの周りの笹をむかずにそのままかじった

この2点が紹介されていました。
これらの逸話(?)はわたしも耳にしたことがあり、以前の大河ドラマ『軍師官兵衛』で明智光秀を演じられた春風亭小朝さんを見たさいには「わりと高齢な光秀にしているあたり、あの説は有力かも……」と思ったことを覚えています(明智光秀はその出自が謎で年齢も不明。おそらく信長より7歳以上は歳上とされています)。
この部分をどう描くのかも楽しみにしていた部分だったのですが、なるほどとなる展開でありました。

今回は本文中の引用を入れることによって、前回よりも本の感想感がアップしたんじゃなかろうかと思っておる次第なんですがいかがでしょうか。
いや〜今までなんとなく避けていたんですが、時代物の小説っておもしろいですね。
学生時代に読んでいれば日本史の成績ももうちょっと良くなっていたんじゃなかろうか。いやそんな簡単なものでもないか。
あ、ヘッダーは先日聖地巡礼してきた明智城跡にある明智光秀像です。
これについてもまた書きたいと思います。
そんなわけできょうはこのへんで〆

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