なんでもない毎日は究極の幸せなのだ
千葉の田舎に移住して19年目になるが、都会と何が違うって聞かれるとたくさんありすぎて困る。
その中の一つを上げるとしたら草刈りだ。
昔住んでいた場所では町内の草刈りなんて地元の公園に行って30分くらい草むしってゴミ拾いをして終わりだった。
田舎の草刈りは朝8時集合、昼12時までがっつり行われる。
もちろん鎌じゃなくて草刈り機を持参する。
草刈りをする道のりはかなりの距離で、最初は絶望しかなかった。
今はだいぶ慣れてきた。
途中、10時頃に休憩時間があるのだけどそこで地元の人が話していることがまたシュールだ。
最近はどこどこのじいさんorばあさん、亡くなったって?とかが多い。
疲れている時に元気よくこういうこと話せる田舎の人たちの精神のタフさよ。
ばあさん、どうやって亡くなったん?
それが午前中の仕事が終わって
昼ごはん食べ終わって
ちょっと昼寝してたらそのまま亡くなったって!
へー、そりゃ、いい死に方だね。
家族はびっくりしただろうけどね。
でも仕事して昼ごはん食ってポックリ行くなんていいじゃないか。俺もそんなピンピンコロリって死に方したいね。
”ピンピンコロリ”
この会話を聞いた時、ちょっと驚いたのを覚えている。
父はバブル期に酔っては早くリタイアしてたくさん遊んで死にたい、仕事ばかりの人生は嫌だとよく言っていた。
死ぬ間際まで仕事をしているなんて不幸だと思っていたようだ。
そういうものなのか、と幼い頃の私は思っていたのだけど、
ここの人達は死ぬまで働けることは幸せだといっている。
自分の仕事が好きで、生きている場所が好きで、なんでもない毎日を愛している。
昨年の夏に近所の人が亡くなった。
よくお世話になっていて、父母とも仲良くしてくれていた。
亡くなるほんの少し前までしっかりしていて、車ですれ違ったりしてもニコニコ笑顔で会釈してくれていたから他の人からその話を聞いた時は本当に驚いた。
その人はガンだと宣告されていたらしいが、最期まで普通に暮らせたらそれでいいと抗ガン剤治療はしなかったそうだ。
酒も飲めない、仕事もできない、それで病院に閉じ込められるなんて真っ平だ。
あの人はそんな事を思っていたのだろうか、なんて考えてしまう。
人の2倍くらい仕事して、みんなからよく頼られている人だった。
大酒呑みで夕方になるといそいそお酒を飲みに町に降りていってしまい、町内の集まりではお酒の一升瓶をすぐ空にしてしまう。
でもたまに町のスーパーの駐車場で優しい目をしてお孫さんを肩車していた。
母の作った梅干しが好きでこれで焼酎と一杯やると美味いんだ、なんて口下手なのにニコニコ話してくれた。
父が車を側溝に落として途方にくれていた時、ものすごい勢いで駆けつけてくれた。
先日、その人の家の近くを車で通りがかった時に母がポツリと言った。
「梅干し、もう一回あげておきたかったわ。」
そうだね。
きっとまたニコニコ笑って焼酎と一緒に一杯やるっていうんだろうね。
その顔をもう一度見たかったね。
最期まで
出来る限り仕事をして、家で暮らして、
お酒を楽しみにして
なんでもない毎日を生き抜いた人だった。
ディズニーの不思議の国アリスで帽子屋と三月うさぎたちが誕生日でない、特別でない364日を「なんでもない日バンザイ!」と歌っていたっけ。
1日を、なんでもない日を愛せる人はきっと
とても幸せなのだ。
日々、忙しくてしんどくなってしまうとすぐ忘れてしまいそうになるけれど
#大切にしている教え
そのことを死ぬまでずっと忘れずにいたいと思っている。
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