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同志を集める旗印に。若い世代が「B Corp」で実現していくより良い社会。

こんにちは!B Mediaの宮下です。

今回は、2023年2月にImpact Hub Kyoto(京都市上京区)にて行われたトークイベント【これからの「いい会社」の紡ぎ方~新しい資本主義時代の国際企業認証『B Corp』】のレポートをお届けします。

少し過去のイベントですが、B Corpへの理解を深める上でたくさんのヒントがあり、ぜひ多くの方にも知っていただきたいなと思い、まとめてみました。

イベント概要

・期日:2023年2月21日
・場所:Impact Hub Kyoto(京都市上京区)
・イベント名:【これからの「いい会社」の紡ぎ方~新しい資本主義時代の国際企業認証『B Corp』】第二部 〜若手世代が紡ぐ 「社会」 と 「会社」 のカタチ〜

創業間もないベンチャー企業と、300年を超える老舗企業の経営者が登壇しました。一見対極にいる2人の若き経営者にある共通点は「B Corp認証」です。国際基準をクリアした公益性の高い企業に与えられるこの認証が、社会や地球環境をより良くするといった高い志をもつ仲間を集めるための旗印になっています。若い世代がB Corp認証を道しるべにして「いい会社」「いい社会」をどのように実現していくかを語りました。

登壇者:溝渕由樹 (みぞぶち・ゆき|株式会社ovgo 創業者)
1993年、東京都出身。大学卒業後、大手商社の法務部に勤務。食品企業へ転職し、フードビジネスを学んだ後に独立。小学校の同級生と共に、プラントベースのヴィーガンクッキー屋としてマルシェ出店から開始、2021年に株式会社ovgo(オブゴ)を設立。現在、東京・長野・京都・福岡に6店舗を展開するほか、ECサイトでの販売も行う。2022年12月、創業当初から目指していたB Corp認証の取得を果たす。

登壇者:矢代真也 (やしろ・しんや|株式会社矢代仁 取締役)
1990年、京都府出身。大学卒業後、東京で漫画や小説の編集者としてキャリアをスタート。その後、『WIRED』日本版編集部にて雑誌の取材・編集に携わる。独立後、当時の上司からの声がけにより『B Corpハンドブック:よいビジネスの計測・実践・改善』を監訳、B Corpに触れる。また実家は1720年から続く京都の呉服屋である株式会社矢代仁(やしろに)を営み、2022年に10代目として取締役に就任。会社を時代に適した形に変えていくための手段として、B Corp認証取得を目指している。

司会進行:仲山 徹(なかやま・とおる|株式会社 成基 取締役、B Corp認証取得支援コンサルタント)


ベンチャー企業でもB Corp認証取得を目指せる?

仲山
ベンチャー企業がB Corp認証取得を目指すことはできるんでしょうか?

溝渕
結論、私たちがそうであったように、ベンチャー企業でもB Corp認証取得は可能です。グローバル基準に合った「いい会社」を作りたいと思って起業するのであれば、起業するゼロの段階からB Corp認証の基準内容は見ていた方が進めやすいと思います。

仲山
なるほど。そもそも溝渕さん自身は、B Corpをどうやって知ったんですか?なぜ取得しようと思ったんですか?

溝渕
元々学生の頃から人権問題やフェアトレードに関心がある人間でした。そういった観点で見ていた商品の中には、B Corp認証のマークがついたハーブティー、小麦粉があったり、カフェを見つけたりしていて、その存在を知りました。
また、新卒で入社した総合商社では法務部で勤務しており、業務の中で認証について調べる中で、B Corp認証というのがあらゆる認証の中でも一番バランスが取れているものであると感じ、その時から自分がもしも将来会社を作るなら、B Corp認証を取りたいと思っていました。

仲山
バランスがいいというのは、具体的には?

溝渕
例えば、環境系の認証っていわゆる「環境にいいこと」を目指す一方で、少しビジネス視点が欠けてしまいがちな気がしていて。でも、B Corp認証は「ガバナンス」というめちゃくちゃビジネス要素の強い基準も含まれているのが特徴だな、と。
そこからもわかる、ビジネスとして「事業性」を諦めない姿勢が好きです。これはB Corpが、アメリカの元起業家の方々が生み出した認証だからこそだと思います。

仲山
そんな「バランスが良い」という点が、溝渕さんにも刺さったんですね。

B Corp認証が「いい人」を呼び込む

仲山
ベンチャー企業を経営していて、若者の社会に対する意識について感じることはありますか?

溝渕
今、アルバイト登録してくれているメンバーは約100名、正社員は10名ですが、ほとんどが元はお店のファンで、InstagramなどのSNSで求人募集の呼びかけを見て応募してきてくれています。その中の多くが20代前半、いわゆるZ世代。店柄もあって、9割は女性です。彼女たちは特に環境問題、社会問題に対する理解が深いな、と感じます。その背景には、小学生の頃から学校の授業で気候変動とかSDGs的な内容が多く入っているからだと思います。
実際にアクションは起こしていなかったとしても、「畜産は環境負荷が大きいから、プラントベースの食材を選ぶと環境にとって優しいんだよ」といったメッセージに対して偏見なく、すっと理解して「いいね」と共感してくれる方が多いです。
実際、2022年12月末にB Corp認証を取得してから今日まで約2ヶ月ですが、すでに3名の方がその情報を見てovgoで働きたいと連絡をくれました。日本ではまだB Corpの認知度が低いと感じている中でしたが、その影響力に驚きました。
やはり、社会にとって良いことをして、恥じるところなく活動していると、ファンになってくれて応援されやすいし、いい子たちが集まってきてくれますね。

仲山
SNSだけで人材が集まってくるのはすごいですね。ちなみに「いい子」って仰っていましたが、具体的にはどんな方でしょうか?

溝渕
何か社会にとって良いことを仕事にしたいと思っている人、ですかね。
そういう人は、仕事を通して自己実現しようという気持ちで取り組むし、コミットメント力、エンゲージメント力が大きいです。
店頭であれば、「もっとこうしたらお客さんが喜ぶのでは」と積極的に行動したり、製造過程では食材に対して「もったいない」という意識が強いから、ロスに対してすごく厳しかったり。

仲山
今後B Corp認証自体の知名度が上がれば上がるほど、いい人材がより集まってきそうですね。

江戸時代から続く呉服屋がB Corp認証取得を目指すわけ

仲山
では、そんなベンチャー企業とは対称的に、300年続く呉服屋の後継者である矢代さん。歴史と伝統ある企業がB Corp認証取得を目指すのはどうしてでしょうか?

矢代
矢代仁は、現在ぼくが最年少のメンバーで、会社として高齢化が進んでいます。よくいえば伝統を守っているともいえるのですが、自分の目から見たときに「当たり前」が実現されてなかったりしました。たとえば細かいことですが、自分が取締役として入った当初は全員が仕えるWi-Fiがなく、社内で話しあいながら導入してもらう、という状況からのスタートでした。
今後は若い人材を入れていかなければ、300年の歴史を50年後の350年までは絶対に継承できないと思います。
そんな中、編集者時代のご縁からB Corpハンドブック日本語版の監訳に携わったことで、「これは会社全体のアップデートのために使えそうな認証だな」と感じました。
B Corp認証取得にはBインパクトアセスメントという百何十問にも及ぶ設問へ回答する必要があり、その過程を通して、社内の変えるべきポイントがしっかりと可視化されていきます。
これを一つずつ改善していったら、若い人が入ってくれそうな会社に一歩ずつ近づくことができると思っています。

大きな課題にはみんなで取り組む

仲山
そんな矢代仁が、今後も持続可能な経営を目指していくにあたり、危機感を感じることはありますか?

矢代
そもそもの呉服業界全体が危機的な状況だと感じます。
お茶会、式典、結婚式といったフォーマル需要に支えられていた業界でしたが、それがコロナで一掃されてしまった。いまは徐々に需要も戻りつつありますが、コロナ禍以前の水準に戻れるかは、誰も確信がない状況だと思います。
呉服屋にとって「着物文化の継承」こそ、会社が存在する最大の意義だと思っています。でもそういった文化継承であったり、業界の問題解決、地球環境の保全や回復といった大きな課題って、一社だけで取り組んでもどうしようもないですよね。
そんな時に、B Corp認証というのは分かりやすく意思表示ができる旗印みたいなものなのかな、と。旗のもとには同志が集まりやすいからこそ、B Corp認証はいいなと思っています。

仲山
そうですね。B Corp認証は国際認証であり、国内だけでなく、世界のコミュニティに仲間入りし、ムーブメントを起こしていくことができますよね。

B Corpは同志を集めるための仕組み

仲山
では最後に、お二人が考える「いい会社」や「いい社会」ってどんなものでしょうか?

溝渕
気候変動を止めるために、私たちがどんなにヴィーガンクッキーを作ると言っても、与えられるインパクトには限界があります。だからこそ「みんなでやらなきゃ」という意識が大切。「自分たちだけが勝てばいい」ではなくて、「協力、応援、支え合いの中で、お互いが良くなっていこう」という姿勢が強い会社がいい会社だなって思います。
今後、「ソーシャルインパクトを考えて企業は何をするのか?」という視点が重要視されていって、財務諸表だけでなく、その取り組みの中身を見て評価されていく世の中にしていきたいですね。

矢代
今の時代、不正みたいなことも普通にSNSやネット検索をしたらすぐにバレてしまうし、そういう浄化作用みたいなものが昔の時代よりはよく働いてるんだなという気がしています。
これはポジティブなことで、情報の透明性が高まり、流動化していくことは、B Corp認証企業のように真っ当に事業をしている会社にとって良いことだと思うので、それがもっと進んでいくといいなと思っています。

仲山
「お互いが良くなっていこう」というところは、世界規模のチーム作りというか、同じ志を集めるための仕組みがB Corp認証なのかもしれませんね。
そして、正しいことを正しくやっている会社が評価されるのがいい社会だし、それの分かりやすい基準がB Corp認証ということですね。
今日はお二人とも、ありがとうございました。


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