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春ともし

堀本祐樹が選者の回を観た(「NHK俳句」2016年4月10日)。ゲストは又吉直樹。兼題が「春灯」。漢詩や漱石だと春燈。

入選九句から上位三句を撰ぶ。予想が当たった。堀本さんとはぴたっと合うようだ。三席は略す。

二席

海の香の 電話ボックス 春灯

埼玉県川越市 諏訪一郎

片岡義男の小説を想起させると堀本氏。確かに。

一席

柔肌を さらってしまえ 春灯

新潟市 笹川麻友

与謝野晶子の歌「柔肌の熱き血潮に触れもみで寂しからずや道を説く君」の本歌取り。草食系男子にけしかける感じの命令形が熱い青春を感じさせると。本当にそうだ。

添削

司会の岸本葉子の次の句を堀本が添削した。

春灯の ひとつ映して 潦

春の灯の 映えて美しきや 潦

添削後、「は」の音を重ね、音でも美しさを見せてあげたいと思ったと。(るのひの えてしきや にわたずみ)

この感覚も合う。頭韻に対する感覚。漢詩でいう双声。

※ ところで、にわたずみ(潦)は漢字が出ないことがある。ニハ+タヅ+ミのうちミが水として他の二つが憶えられない。はし(美し)も出ない。これは詩歌のみの訓のようだから当然か。北原白秋の処女詩集『邪宗門』の「かの美しき越歴機の夢は天鵝絨の薫にまじり」が典型例らしい。この「越歴機」も読めない(かのはしきえれきのゆめはびろうどのくゆりにまじり)。

※ 一席の笹川麻友さんは、あるいは「おはなしエンジェル 子ども創作コンクール」(KUMON)の2012年中学生の部で銀のエンジェル賞を獲得した『涙であり花びらは』(笹川麻友 新潟県 中3)の執筆者と同一人物かもしれない。実に読ませる物語だ。ひょっとして note におられるかもしれない。

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