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見えないものと語らう

3月11日にあたり、東北の霊魂のことを考えていたら、ある聞き書の本の抜粋を読んだ。「携帯に届いたメール『ありがとう』――被災地での「霊体験」を初告白。遺族たちはこうして絶望から救われた」という記事。

かねて、仮に「震災怪談」の名で、東北の出版社を中心に収集されていた話とどこか似ている。

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青山繁晴さんの「青スポ」というコーナーが「虎8」で始まり、第1回がアイルトン・セナの話だった。彼自身がオートレーサだから詳しい。セナが他界したとき、そのレース場つきの医師が語ったことがビデオに入っているらしい。それによると、医師はセナのからだから魂が抜け出て空へ飛んで行くところを見たと語ったという。神や霊など信じない人物が語ったので信憑性がある。

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美濃奈生子さんの宮沢賢治をめぐる話を興味深く読んだ。

二つだけ感想を記しておきたい。幼少時にそばにいた存在のこと。私の経験からすると、キリスト教でいう「守護の天使」にそっくりだと思った。アイルランドのローナ・バーンという天使の幻視家が多くの著書で語っていることとも符合する。

もう一つ。賢治研究家の山下聖美・日大芸術学部教授が言った「風」が吹くと “異界”が現れるということ。例として「注文の多い料理店」では風が吹くと怪しい料理店が現れる。山下氏は英文科出身だからあるいは知っているかもしれないけれど、アイルランドの妖精譚ではある種の風と異界とは近しい関係にある。その種の風を「妖精の風」gaoth sídhe/sí, sídh/sí gaoithe, sídh/sí chóra, séideán sídhe/sí などという。英語で fairy wind. 突風やつむじ風だ。英語のページで次の説明を載せているところがある。

This is a sudden gust of wind or a whirlwind that was thought to have been caused by the faeries. The wind was preceded by a loud humming noise, like thousands of bees as was believed to have been caused by the passing of a fairy host although it may even contain a fairy host within the wind.

あるアイルランド語のバラッドでは死者が迎えに行くときに前触れとしてつむじ風を起こすと歌われる。

#風 #宮沢賢治 #妖精の風 #異界 #アイルトンセナ #東北怪談  

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