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奈良井宿はリニューアルされた粋な宿場町

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  5月の連休中に、電車で20分ほどの地元観光地、奈良井宿へ行きました。目的は観光ではなく別の用事でしたが、電車の到着後にたっぷり時間があったので結局観光客のように周遊しました。

■奈良井宿についてざっくりと

 江戸時代につくられた五街道のひとつ中山道(なかせんどう)にある宿場町です。山あいの奈良井川沿いに、江戸時代の面影を残す町並みがつづき、その距離は宿場町としては日本最長だそうです。標高も約940メートルと中山道で最高地点となっています。国の「重要伝統的建造物群保存地区」に選ばれており、2011年のNHK連続テレビ小説「おひさま」のロケ地としても使われました。主人公を含む女学生が帰り道に寄った駄菓子屋さんのシーンを覚えています。

 地元にいながら約20年前と10年前に過去2回来ただけでしたが、今回は印象がずいぶん違いました。

■モノクロームの街並み

  まず、街並みがきれい。青空と向こうの山の緑とは対照的に、ずらりと並んだ木造の町屋が黒々と涼し気な影をつくりだしています。明るい陽射しをうけた白い街道とのコントラストも美しい。以前抱いたひなびた印象とは変わり、「粋」を感じました。可愛らしい鳥のさえずりが聞こえたと思ったら、軒先にはツバメが。まるで建物に合わせたように、ツバメさんも黒と白のコントラストを放っていました。

■にぎわいながらも穏やかな観光客

 そして、外国人が多い。これは全国の観光地で起きていることではありますが、往きの電車内や歩いている人の3分の1くらいを占めていたように思います。ベビーカーを押して歩いていたファミリーは日本在住かもしれませんが、ほかにもイスラム系のスカーフをかぶったご婦人一家、中国語を話すグループ、東南アジアからと思われる若者男子グループなど、ワールドワイドです。
 もちろん国内観光を楽しむ方も多く、家族連れ、カップル、女性グループ、気ままな一人旅、など形態はさまざまです。何よりいいのは、皆さんがのんびりと楽しんでいることです。騒いだり群がったりという喧噪は皆無。先ほどのツバメを見つけた若い女性2人が So cute! と言って笑っているのを見て、わかるわかる!と共感しました。

■入りたくなるお店が増えた

 それから、入りたくなるような新しいお店が増えていました。リノベーションを施したり、比較的若い人が営業していたりで、歴史的建造物ながらイマドキの雰囲気が漂っています。連休中ということもあって、蕎麦屋、団子屋、喫茶店は列をなすほどにぎわっていました。

この茶団子は餡がなくて上品な味わい
「喫茶・軽食 こでまり」さん
黒漆に映えるクリームソーダ

■神社やレトロモダンな建築物

 通りの一番奥には大きな神社があって、立派な大木と赤い鳥居に魅せられました。敬意をこめてお参りしました。

 宿泊施設が増えて、こんなレトロモダンな高級古民家ホテルも出来ていました。大好きなNHKの番組「美の壷」に出てきそうです。

■沿線の風景

 これはJR塩尻駅から奈良井駅まで普通電車で行った場合の感想になりますが、特急しなの号の速さでは見過ごしていた山々と田園風景、古いトンネルがまたよいのです。ちょうど新緑の美しい季節でもあり、乗って車窓を眺めるだけで癒されます。特に洗馬はレタスの名産地であり、その稼ぎで建てられた立派な住宅が並んでいて、旧来の農村のイメージをくつがえします。ちなみに「レタス御殿」と呼ばれることもありますが、レタスの形をしているわけではありません。
 この辺りは写真を撮っていないのでぜひ訪れてみてください。

■鉄オタ駅オタの皆さんにも?

 奈良井駅には改札機がなく、切符はワンマンカーのなかで渡してから降ります。駅舎には券売機もなく、乗車前に窓口で行き先を告げて駅員さんから購入します。なつかしいですね。発車10分前ころに窓がガラリと開いて「○○行き、○番線から間もなく発車しまーす」と大きな声でアナウンスしてくれます。これは貴重ではないですか?
 帰りもしばらく駅舎で待ったのですが、無料Wi-Fiがあってさほど苦にならず。お手洗いは駅舎の近くにちゃんと水洗のきれいな設備があります。手荷物預かり所も近くに。
 そろそろプラットフォームへ出ようかとのんびり向かって大あわて。のどかな駅に不似合いなほどの長い行列ができていました。おそらく2列×20=40人ほども並んでいて、乗れるのか? 大丈夫か? と焦ったものの、到着した電車は車両の数が多めだったので無事に乗れました。さすがの大型連休でした。

■小旅行にもってこいかも

 以上、10年ぶり2時間ほどの滞在をもとに書きましたが、少しでも奈良井宿の魅力が伝わればうれしいです。
 たとえば、東京からなら特急あずさ号に乗って塩尻まで2時間半、普通電車に乗り換えて20~30分です。普通電車の便数が少ないのでよく調べていただいて、乗り継ぎがうまくいけば日帰りもできそうです。余裕のある方は宿泊して翌日松本へ、というコースも良いかもしれません。
 もちろん車でも大丈夫で、国道19号からすぐでわかりやすいです。 
 距離のわりには気軽に行けて、しかも江戸時代への時間旅行も味わえますよ。

■6月にはイベントも

 6月はじめの週末に毎年開かれるイベントが今年2024年は8日と9日に予定されています。漆器祭、お茶壷道中、着物まち歩き、フォトコンテストなど盛りだくさんのようです。どうぞお見逃しなく。



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