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秋の夜空に恋をして_4思い出の旅行

(この間のデートが最初で最後って割り切ってたのに...。)
イケメンの彼からまた誘ってもらえた私は、(もう一度 ”だけ”  ならきっと大丈夫)そう信じて会いに行って...!?

彗斗の後ろ姿を見送り星蘭を幼稚園へ送り届けた七々星は、
淹れたてのコーヒーを飲みながら、ふと考えていた。
(あの心に感じたざわめきは何だったのだろう。)

いつもと同じコーヒーにもかかわらず、
なぜか今日は味が違う気がした。
でも、疲れているだけだろうと特に気に留めませんでした。



それにしても、彗斗と出会ってから毎日が驚くほど鮮やかに色づいている。
今までは彼氏とかデートとか考える余裕もなかった。
ううん、たぶん考えないために余裕がないふりをしていただけかもしれない。
だけど、彗斗と出会って灰色の日常がたくさんの色で塗られていく。
本当はこんな色鮮やかな日々、知らないほうが良かったのかもしれない。
でも、もう少し、この色鮮やかな日々に身を委ねてみたい。
そう、願ってしまうのは私だけだろうか...。

彗斗「来週の連休、予定ある?  旅行でもどうかな」



このとき、
彗斗がどういう心境で私を誘ってくれていたのかは分かりません。
ただ、(私たちの関係にはいつか終わりがくる)。
そう分かっていた七々星は、
あともう少し、もう少しだけでいいから色鮮やかな日々に身を委ねていたかった。
毎日を彼でいっぱいに染めてみたかった。
だから、今回も心の思うままにまた彗斗のお誘いを受けることにしたのでした。

旅行の日。

先日美しかった紅葉はすっかり落ちて、辺りの木々は寂しげで、
朝晩の冷え込みも一段と増してきていました。

ふたりはそれぞれの仕事を早めに片付け、途中の駅で落合いました。
彗斗は、七々星と星蘭を乗せて夕闇の中を走ります。

ホテルや旅館という選択肢もあったものの、今回はあえてコンドミニアムタイプのお部屋に決めました。
旅先の美味しいグルメを外食として楽しんだり、簡単に朝ごはんを自分たちで調理して済ませたり、周りに気兼ねすることなく自由度が高い旅行にできるためでした。

とはいえ、すでに夕暮れ時です。
最初の夜ごはんは、外食で済ませることに。

海岸沿いをしばらく走っていくと、
まだ営業中らしいお寿司屋さんを発見しました。
3人は、地元の漁港であがった新鮮な海の幸を堪能したのでした。

さらに車を走らせ、
ようやくお部屋へ到着したころには夜も更けていました。
すっかり夜遅くなってしまったので、
すぐさまお風呂を済ませ、星蘭を寝かせます。
そして、七々星は彗斗の腕に抱かれて眠りました。

翌朝、七々星は朝ごはんを用意しようとキッチンに立つ。
すると、少しして彗斗が「おはよ」とキッチンにやってきて、慣れた手つきで手伝ってくれる。
また彼女は彗斗のカッコよさを知ってしまった。
(本当のイケメンは、外見はもちろん、内面もカッコいい。)
この日の収穫は、彗斗は朝はシンプルに納豆ごはんとお味噌汁の組み合わせが好みと知れたこと。あと、お味噌汁の好みの濃さも知れました。

日中は星蘭のために、星蘭が楽しめる場所を中心に3人ででかけた。
そして、夜は彗斗の腕に抱かれて眠りにつく。

明くる日も同じでした。

目を覚ますと、彗斗が横に居て
カーテンの隙間から木漏れ日が射し込むリビングで星蘭と七々星、そして彗斗。
3人で食卓を共にする。
星蘭もすっかり彗斗のことが気に入ったようで、
初めてのデートの夜に夕ご飯をご一緒したときの緊張する様子はもうなかった。

本当に幸せな時間で、
いつしかこの瞬間が3人の当たり前になったらどれほど幸せだろうか、
そんなことすら考え始めていた。

一方、こんなに順風満帆な日々で現実に帰るのが怖くなり始めていた。
それでもこの幸せな時間が少しでも長く続いてくれることをただただ願うばかり。
毎朝彼のカッコいい横顔を見て、夜は彼の腕に抱かれて眠る。
そんな日々がいつか当たり前になる、それだけを願って、
また彗斗の腕に抱かれて眠りについた。













でも、七々星が心に感じていた妙なざわめきや怖い気持ちが現実になろうとしていた。
そう、幸せな時間はなかなか永遠には続かない。
「禍福は糾える縄の如し」ということわざがあるように、
ふたりの幸せが引き裂かれるのは時間のうちだったのかもしれない。






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