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日記:画用紙いっぱい

仕事の研修があった。
来週からの勤務開始のために、半日研修というものに呼ばれて行ってきた。ついでに諸々の入社手続きを済ませる、みたいな内容。ちょうどその日は絵を描いてみんなで見せ合おう、というイベントを行っていたらしく、ぜひ参加して、と言われるがままに席を用意され画用紙を一枚渡された。
ここに水彩で好きに絵を描いてください、という。小説は日々書いているけれど、水彩で絵を描くという経験は最後がいつだったのか思い出せないほど過去の話。そもそも私は、頭の中にある映像をどう表現したらよいのかと悩んだ末に絵のセンスが壊滅的になさすぎて小説を書くことで落ち着いた女だ。
小説を書くとき、最初から文字で出てくる人と、頭の中の映像を文字化する人がいるらしいのだけれど、私は完全に後者のほうで、出てくる映像をせっせと文章に変えて吐き出している。できる限り読んでいる人には私と同じ映像を見てほしいと思っている。(ので、情景描写がやたら多い)

話が変わった。というわけで絵が描けないのだ。小説ならいくらでも書けるのに…と思いながら文字通り頭を抱えた。まあしかし私はここで新人。ここは何も描けませんでしたと言うわけにもいかないし、無難になにかしらで埋めておかねば……。と、なんとか渡された絵の具を使って海の絵を描こうとした。なんかいい感じに光をきらきらさせよう、綺麗なグラデーションをつけてみよう、画用紙全体に海の色をつけて……としていたら、講師の先生に「素敵な空ですね」と言われた。アッこれ海なんです…とか言えない。確かに言われてみたら色も光も空っぽいんですよ。深みがない。アッはい空です。と頷く私。これは海ではない。空です。

終了後、他の人たちは犬だったりケーキだったりを画用紙の真ん中にいい感じに配置していて、私みたいに紙全体を塗りつぶす描き方をしている人はいなかった。あっそうですよね、ポスターじゃないもんね。画用紙いっぱいに塗りつぶされた空の絵はやたら悪目立ちしていて「大物新人じゃん…」と言われてしまった。こんなはずではなかったのに。

無事研修は終わりました。

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