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新年度、始まります~中学校ABDレポート2024 準備編

新年とか新学期って、心も身体もリセットされて、新しく始まる感覚が好きです。
大人になっても「新学期」を感じさせてくれるのが、私にとっては恒例になった中学校でのABD授業。

というわけで、今年も半年間、総合学習で読書会の授業を行うことになりました。
今年はどんな子たちに会えるのか、どんなふうに展開するか。
年を追うごとにアドリブ性がだんだん強くなる感じがありますが、始まる前に考えていることをひとまず残しておこうと思います。


エンジンをかけるための「本選び」

毎年、授業が始まる前に最初にすることは、どんな本を持っていこうか吟味すること。自分を「授業モード」にするための作業なのですが、この作業がすごく楽しいです。

子どもたちと読みたい本

本を選ぶときの基準は、自分が中学生だったとして「自分では手に取らないけど、内容には興味がありそうな本」です。

私は楽しみとして読む本は、興味があるタイミングで自分が読めばいい。
私が提案するのは、本を「情報を得るツール」として扱う読み方です。

情報が限られた地方ならなおのこと、本は専門家から直接情報を得られる貴重な資料。
これからたくさんのことを学んでいく中学生は、「まだ」出会っていない本がたくさんあります。それを、「難しそう」「読みきれない」などの理由で出会うのが遅くなっているなら、そのハードルを外すのに早いのに越したことはないと思っています。

お世話になるのが、図書館や書店の「ちくまプリマー新書」棚。
文章が中高生向けの表現で書かれていて、かつ新書なのでページ数が少なく、1回の授業で読み切れることがほとんど。ジャンルも幅広く、どれを選んでも中高生に刺さりそうな本が網羅されています。

塩尻市立図書館の「古田晁文庫」。ちくまプリマー新書をはじめ、筑摩書房の本が揃っています

最初に選ぶのはたいてい、「勉強」「友人関係」「ものの言い方」など、誰もが一度は気にしたことがありそうなテーマ。今年はどんな感じのテーマでいこうかといくつか目星をつけ、参考までに何冊か借りてきました。
最終的には生徒に候補を提示して、読む本を決めようと思います。

自分のモチベーションを上げる本

それから、授業で使うのとは別に、自分の新年度へのモチベーションを高めるための書籍も読むことがあります。
私は本を読むと、助走がつく感じで、やる気が出てきます。それは、ぼーっとしがちだった冬の間の思考回路から、新年に向けて頭が開いていく感覚です。その勢いのままノートやパソコンに向かうと、頭が働いていろいろスムーズなのです。
今回気になったのは、書店で見つけたこちらの本。

https://www.toyokan.co.jp/products/5048?variant=44682965188841

教師としてシンプルに生きる』は、多忙な生活を送っていた現役小学校教師の著者が、禅の思想と出会い、「そもそも教師の役割ってどういうもの?」と問うところから始まります。
前提にはもちろん、先生たちの業務が多様化し、多忙になっているという現状があります。
その状況とはとても比べ物にならないと思いますが、毎年、私の授業もやることがいっぱいで、私も生徒も気持ち的にあわただしくなっている気がしていました。

こちらの本から得たのは、子どもを「育てる」のではなく「『育つ』に関わる」というコンセプト。ここで、改めて授業の方向性が定まりました。

やることがたくさんある授業ではあっても、最終的には「楽しかった!」で終わる授業にしたいというのが、私の今年度の目標です。

今年のテーマ:もっとシンプルに

ABDという形式の読書会は、「読んでまとめる」「発表する」「対話する」という過程を一度に行います。

  • 本を理解すること。

  • 他人にわかるように要約を書いたり、説明したりすること。

  • 意見が違う前提で、他人と意見交換すること。

  • 自分が気になる情報を、どう取りに行くか考えること。

こうしたことは、ほとんどの生徒たちは初めてやる内容であることに加え、大人にとっても、集中力を要することが多いです。
しかも、一つの授業(110分)は、大人のABDでも比較的短い時間。大人は、1回につき2時間半〜3時間で、傍らにはお菓子と飲み物(!)がある状況でやっています。(中学校でもお菓子持ち込みOK ならそうしたいという気持ちはあるけど、流石にそこは私だけで決められないですね)

そんなこんなで生徒たちは、やることが多くて、どうしても「大変だ!」って気持ちになっちゃう。
だけど、感じてほしいのは「大変だ!」よりも、「こんな本の読み方があるんだ!」という楽しみのほう。

そこで、今年は内容を極限までシンプルにすることが一つの挑戦です。

ABDの過程である「読んでまとめる」「発表する」「対話する」という要素は削れないけれど、読む本のページ数や内容を簡単にして、読み方のほうを体験してもらいやすくしたいと思っています。

というのも去年、読んだ本が比較的難しい内容で、ページ数も多いものが何度かありました。
生徒たちは本を読むのが得意な子ばかりではないですから、理解するのに結構苦労したのではないかなと思います。

本から得た全部の情報を要約するのは、大人でも難しい。
かといって、本をちゃんと理解したいという気持ちも、おろそかにしたくない。必死に理解しようとしている子どもたちに向かって、「全部読もうとしなくていいよ」というのは、場合によっては酷だなぁと感じました。
気が済むまで時間を延ばしたいところだけど、授業時間はオーバーできないという制約もあります。
結局、削れるのは読むページ数くらいなのですが、そこでもだいぶ大きな違いかもしれません。

そのあと、生徒たちの「やりたい度」とか「慣れ」の様子を見てから、ページ数を増やすか否か判断していこうと思います。

読み切らなくても学びを得られる?

本の読む量を減らすとなると、一つの本を1回の授業で読み切れなくなるかもしれません。でも私は、それでも全然大丈夫だと思っています。

初めに書いたように、今回の授業では本は「情報を得るツール」。
全部読むことだけが読書ではありません。一部から得られた情報でも、それについて自ら考え、ほかの人と意見を交わすことは、十分な学びになります。

よそで「中学校で読書会をします」というと、読解力を高めるとか、読書習慣をつけるとかが目的だと取られます。
確かに、授業を受けることでその能力は確実に高まるでしょう。ただ、あくまでそれは副作用。
私の授業に限っては、「本というツールとの付き合い方を知る」とかのが目的と言えるかもしれません。

そもそもABDは、買ってきた本をビリビリ割いて、全員に分割するところから始まります。その工程、始めて見た人が本好きであればあるほど、「えー!!」って必ず言います。

だから、本を大事にしなさい、みたいなことは、ABDの授業では絶対言えない(笑)。
ただ、そうしなければ出会うことがなかったかもしれない本から得られることは、多いのです。しかも、一人一冊読むよりも量が少ないので、ハードル低くアクセスできます。

たとえ本をビリビリに破っても、一部しか読まなくても、読書はいつだって自分の世界を広げるツールになるということを、伝えたいです。

分割された本は、文化祭で展示されました。

独自の道をゆく「教育系ABD」として

私はABDの認定ファシリテーターをさせていただいております。
今年の初め、認定資格を更新するための講座を受講し、久しぶりに他のABDファシリテーターの方とお話する機会がありました。そこで改めて、私がやってきたABDが、いかに独自路線かということを思い知りました。

なので、私がやっているABDが王道というわけではないのは、強調しておきたいと思います。

ABDといえども、やる人や場所によって、目的がさまざまにあります。
「テーマへの学びの深さ」にこだわったABD。
「チームビルディング」を目的にしたABD。
私はというと、教育が目的ではあるんですが、その中でもなかなか変わっているということを意識しました。

ABDを教育現場で扱っている人は、私だけではありません。
ほかの事例を聞くと、授業として半強制的に参加する生徒たちのモチベーションを高めるには、なかなか苦労があるようです。

私の場合、ある程度希望者を募ったうえでの開催であること、半年という長期間であることなどから、それなりのやる気を引き出すところまで持っていけているのは幸運でした。
加えて、地域の図書館を利用すること、自分で読みたい本を選ぶプロセスなどは完全に独自のもの。
講座にはABD開発者の竹ノ内壮太郎さんも参加されていたのですが、私が授業でやっていることを話すと、「壮大な計画ですね」と言われました(笑)。

この計画がどう終結するかまだ分かりませんが、4年目にして集大成になるといいなと思います。

また、個人的な今年の目標の一つが、記事の更新頻度を上げること。
毎年記事を「まとめ」ようとする意識が働いて、なんか重要なことを書かなきゃいけないような気がして、記事を書くのがおっくうになってしまう面がありました。
その反省を生かし、何年か経つと忘れてしまうような思いや感想など、なるべくシンプルに記録していこうと思います。

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