見出し画像

深夜の訪問者

夜中にふと目が覚める。
いつもと違う気配を感じる。
甘い吐息を耳元に感じ目が覚めてしまう。

日中、等間隔で背後から歩かれるのに気持ちの悪さを感じて、不自然さを感じさせないように立ち止まり、私の先に行ってもらう。
それと似た気配でもある。
殺気はない、寝る前に笹沢左保の『木枯し紋次郎』を読みかけていたからだろうか、気にし過ぎである。

すると、耳元の息が胸の上に移動していく「なんだブウニャンか」、愛猫ブウニャンが目を覚まして私にすり寄って来ていた。
往年の元気なトラは体重が10㎏近くあった。
トラに胸に上がられるとさすがに苦しかった、悪夢を見た。
痩せてきたブウニャンは今4㎏、それでもあまり気持ちの良いものではない。
ただ、当人は気持ちが良いようで「ゴロゴロ」喉を鳴らしている。
しばらく身体を撫でてやり、仕方なくトイレに立つ。
戻ると私のベッドの真ん中ですやすやと寝入っている。

そっとしてやりそのまま、パソコンを開く。
放置竹林整備の理事長のメールを読み8月の流しそうめん付きの親子竹伐採行事の案内を考える。
兄貴と母の姉、台湾の黄さんへハガキを書く。

そして気が付けば夜はしらじらと明けて朝が目の前にやって来ていた。
朝の早い夏場はいい。
いつまでも朝がやってこない冬場は気が滅入る。
徐々に明るくなる外を見ていると徐々に私の気持ちも明るくなっていく。

自身の生を感じ、今を生きるを感じる。
そして、腹が減る。
生きている証拠である。
なんとなく朝から餃子が食べたかったが、考え直しチャーハンで手を打った。

これまで二万三千日、同じような朝の営みを続けてきた。
あと七千日続けられるのだろうか。
こんな数字で考えると私の人生がアナログからデジタルになるようで本当に味気ない。
『もう長くはない人生を思いのまま生きて行く』こんな言い方の方が好ましい。

朝から一人チャーハンを食べ、深くもなく人生を考えた。

この記事が参加している募集

#猫のいるしあわせ

21,640件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?