4K60p対応

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マイクロフォーサーズ陣営2トップである、オリンパスとパナソニック。
E-M1 Mark III を筆頭に、オリンパスが率いるOM-D シリーズに無く、パナソニックが輩出する映像特化タイプの変態Hグレードである最新機種 GH5M2 に存在する特殊能力といえば、やはり 4K60p 対応 という点だろう。

本稿では、上記について一方を褒めちぎり、一方はけちょんけt(以下自粛)

さて、まずその前に、4K60pがなぜ必要とされるのか、という点について、私の用途目線で書き記しておきたい。

私は舞台撮影をするなかで映像記録を行うことが多い。
舞台というのは色々なタイプがあるので、必ずしも全てにおいて60pが必要かと言われるとそうでもない。
30pのほうが良いと思われる舞台もある。

では、60pが適している舞台とは何か。
それは、ダンス演出が多いステージ撮影である。
とりわけ、流れるようななめらかな動きのダンスではなく、素早い動きを多用するパワフルなダンスは、絶対に60pで撮影したくなる。

肉眼で双眼鏡を使って観劇したことがあるある人であればわかると思うが、役者たちのクイックで力強くダイナミックな動きを絡めたダンスはストップシーンとストップシーンを細切れに楽しむだけでなく、ストップシーンからストップシーンへの遷移動作を目で追うことも醍醐味な訳である。

しかしながら、30pで撮影した映像は、動いている役者の細やかな動きを目で追うことは不可能に近い。
すべての動作がブレ絵のように見えてしまい、まるでモザイクを掛けられているようで、どれだけ目を凝らしても鮮明に輪郭が見えることがなく、ストレスフルな映像になってしまう。

私の映像は、役者さんたちが再演のときに見返して、ダンスの振付起こしをやったりするのに使われているようなので、動きも鮮明に残っている方が良いと思っている。
加えて、映像を残すからには、現実に観たままに近い情報を残したい。

そのなかで、ダンスシーンを残すには、30fpsの速度レベルはあまりにも無力だ。
途中の表情や動きを、映像で美しく表現することができない。
動きを撮影するのに必要なことは、色味でもなければ、解像力でもない。
時間分解能・サンプリング周波数なのだ。


もちろん、30pでもシャッタースピードを上げれば良い、とい考え方も出来なくはないが、現実ではない時間の流れを映像に切り取ってしまうと感じていて、あまり好みではない。
こいつなんか頭おかしいこと言ってるな?って思ってくれれば私は嬉しい。

30p=30fpsは、1フレームあたり最大でも1/30secになるわけだが、もしこれを1/60secのシャッタースピードで撮ろうものなら、映像に映り込む情報は時間方向に2倍の圧縮をかけることになる。
しかも不可逆圧縮だ。

例を挙げて話そう。
現実世界に流れている完全なる連続的時間のなかで、ある短い時間をピックアップする。
例えば、1/30secをピックアップしてみる。

もしも映像記録が30pの設定状態で、シャッタースピードを1/60secと設定した場合、1フレーム=1/30sec=2/60secという連続的時間のなかで、1/60secを映像化し、残りの1/60secは捨ててしまう、という間引き処理が発生してしまうことになる。

余談であるが、30pモードで1/60secの動画記録をするなら、捨てている1/60secの間は自由なはずなので、RAW静止画をシャッタースピード下限1/60secでRAW撮影できてもいいんじゃないか?と思うわけだ。

話を戻そう。
映像作品の表現として、映像時間の間引きをするのは全く構わないと思うのだが、記録が目的の映像でこれをやってしまうと、現実の流れとは異なる時間を映像に落とし込むというプロセスになってしまい、どうも気持ち悪いのだ。

大好きな役者さんたちが紡ぐ時間を、カメランの都合で勝手に間引くのは、なんだか気が引けませんか?
時間軸に対して完全に連続した時間を映像として記録したい。
離散的な映像記録ではなく、連続的な映像を記録したい。
だけど、1/30secではあまりにもブレブレで見辛い。

だから、60pは偉いんです。
私の欲求は変だろうか?



OM-D も、4Kでは30pが上限だが、FullHDでは30pだけでなく60pが選択出来るため、動きが激しいライブなどでは、あえてFullHDの60pで撮影するようなこともしてきた。

ところが、やっぱり4Kの解像度が無いと、クロップ耐性はないし、引きの絵で表情は拾えないしで、どうしても4K60pが欲しかった、心底欲しかったまじで欲しかったわけだ。

それで、ようやくのGH5M2が我が家においでくださった。
連続撮影していたら、触ってられないくらいアッチッチになるボディにびっくりしながらも自宅でテスト動作を重ねている。


OM-D E-M1 Mark III で、仮に4k60pが撮影出来たとしても、実は使えない点がもうひとつある。
動画時のISOオート上限が3200だ、という点だ。

実は、E-M5 Mark II の像面位相差を積んでいないセンサーでは、ISOオートが25600まで設定できた。(動画はもしかしたら6400上限だったかも?)

像面位相差AFセンサーは高感度領域で色転びが起こるらしく、処理を変えないと色味が低感度領域とコロッと変わってしまうらしい。

E-M1 Mark II, E-M1X, E-M1 Mark III これら全て使ってきたが、全て共通センサーであり、写真のISOオート上限は6400、動画は3200である。
(なお手動で設定するときは、写真はISO25600まで、動画はISO6400まで設定できる。)

30p は最低シャッタースピードが 1/30sec だか、60p は 1/60sec なので、1段分感度を稼がないと、同じ露出で撮影することができない。
60pで30pと同じ露出にして撮影するには、ISO感度をもう1段上げる必要があるのだ。

撮影で使いたいレンズは現場環境から自ずと決まってくる。
メインカメラはズーミングもしたいので、MZD 12-100mm F4 IS PRO が鉄板だ。
そしてこのレンズは、屋内撮影をするには F4 と決して明るくない。
舞台撮影で暗い情景を表現するシーンに入ると、E-M1 Mark III のISOオート上限3200で 1/60sec は、かなり暗くなってしまう。

その点、GH5M2は、動画のISO上限が12800まで設定できるようだ。
デフォルトでは6400で、上限設定を手動で変更すれば、12800まで設定できた。

ものすごくノイジーな映像になる可能性はあるわけだが、黒つぶれしていると絵が見えないため、4K60pで撮影できて、かつ動画時のISOオート上限が12800まで設定できるGH5M2には拍手を贈りたい。

私はとりあえず、ISOオート上限を、ISO12800に設定してある。
実際のノイズ耐性がどんなものかは、現場で使ってみてから判断したい。


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