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地方移住から1年。久しぶりの上京でみえたもの

先日、1年以上ぶりに上京した。
絶対にやらなきゃいけないことは正直なくて、でも、やりたいことと、やった方がいいことがあった。

must to doはないのに県外移動するのは、このご時世で気が引けたけれど、もうこれ以上我慢できなかった。自分のために、自分だけのために、東京に行かせてもらうことにした。
子は夫がみてくれて、ご飯は作り置きして、思い切って、えいやっと新幹線に乗った。

出発前に夫は「寂しい」と言ってくれたけど、私はただただ楽しみで、嘘はいえなくて、「まあ1泊だから」とごまかした。

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遠距離恋愛時代にお互いの家を行き来していたときは、片道3時間は長いなぁと思っていた。

しかし久しぶりに1人で乗った電車は快適で、子が泣く心配も、オムツや着替えの大荷物もなくて、3時間の道のりはあっという間だった。本を読んでいたらすぐに時間が経って、車窓の景色はみるみる変化する。
ひとりってなんて楽なんだろう、なんて自由で身軽なんだろうと、気持ちがふわふわ高揚した。

今思えば、このときが盛り上がりのピークだった。積読になっていたエッセイ片手に窓から富士山を眺めて、これから始まる1泊2日に浮き足立っていた。

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品川駅について、ホームに降りると、ムワッと人混みの匂いがした。見渡す限りのひと、ひと、ひと!そうだった、東京は人が多いのだった。

産休に入る前は、大きなお腹と不安を抱えて通勤していた。この人混みのなかで、まだまだ分からないことばかりのウイルスに感染してしまうのではないかと、気が気でなかった日々の記憶が蘇る。東京にいた頃は毎日、早くここを去りたいと、人混みから逃れたいと、切に願っていたことを思い出した。

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日中はやるべきことを済ませるためあちこち都内をまわった。職場にも顔を出して復職の打ち合わせをして、すっきりした気持ちでいざ夜ご飯!妊娠中に見つけて、ずっと行きたかったお店に行くと決めていた。

ひとりで夜に飲食店に入るなんて、もう、いつぶりかわからなかった。まずは生ビールをゴクリ。
ゴク、ゴクリ。プハーーーッッ!
このときばかりは、最高!最高!と心の中で連呼した。

でも料理に手をつけたあたりから、どんどん寂しさの影が広がって、ワインをおかわりした頃にはもうホームシックだった。
夫と食べるおうちごはんの方が美味しいし、息子と食べるおやつの方が楽しい気がした。おしゃれなお店で、おしゃれなごはんを食べても、いまいち満たされていない自分がいた。

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ホテルに着いてもやっぱり家が恋しくて、夫に電話したり、「みてね」にアップされた息子の写真をながめたりして過ごした。
移住後、辛いことがあるたび私は東京に逃げ帰りたかった。でもいざ訪れてみると、そこには今の私の心を満たすものはあまりなかった。
(妹や友達には会いたい。でも今はコロナが気になって会えなかった。)

1人暮らししていた頃の東京生活を、いつのまにか美化しすぎてしまったようだった。
東京にあるものより、東京にないものを求めて、私は今の暮らしを選んだのだと思い出した。

自分の選択を肯定したい気持ちがあるから、少し地方都市と自分の現状に贔屓目なのかもしれない。それでも、それも含めて、今の私が心満たされる場所は、私たちの家のある、あの町なんだと思った。

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翌日、見たかった展示をまわって、帰路に着いた。
早く家族に会いたい。そしてご飯をつくって、食べさせたい。一緒に美味しいねって、ごはんを囲みたい。そう思うと、東京に向かった時と同じくらい、もしくはそれ以上に、家路への足取りは軽かった。最寄駅から家まで、早る気持ちをおさえて小走りで帰ったあの気持ちを、忘れないようにしたい。








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