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双子出産記#1 妊娠がわかったとき


「あれれ、ふたつあるよ、ミラクルだね〜!」
先生の言うとおり、エコーの画面には胎嚢と思われる白い影が2つ映っていた。
2つ、私の中に命が宿っているらしい。
「ミラクル」なんて言葉を自分に向けられたのは初めてだ。
戸惑いの中にいる私には、その耳慣れないポジティブな単語と、先生の明るい声がとても頼もしかった。

○○○

妊娠検査薬で陽性を確かめてから病院へ行ったので、妊娠してるだろうとは分かっていたけれど、まさか双子とは、全く、1ミリも想像していなかった。
望んで授かった2人目だけど、3人目も一緒にやってくるなんて。

嬉しくないわけではないけれど、驚きの方がはるかに大きかった。
思いがけず何か受賞したり当選したりしたときの「え?私がそれ受け取るの?」みたいな気持ち。
それ、私で、合ってますか?いいんですか?みたいな。

診察を終えた瞬間から、「双子 妊娠 出産」と検索する手が止まらなくて、調べるほどに、不安は増す。
リスクが多くて、産前も産後も、どう考えても大変そう。
でもだめだ、不安だなんて、思っちゃいけない。
夫に「双子だった…!」とだけラインして、またお会計までの時間、無心で検索を続けた。

○○○

遡ること、約半年前。
流産をした。
ほとんどの初期流産は避けようのないもので、母体が影響を与えたものではないらしい。
100人中、15人くらいの確率。
よくあることだよと、慰められた。
それでも私は、自分を責める気持ちを拭いきれなかった。

長男の妊娠中には重いものを持たないようにしていたのに、今回は長男をたくさん抱っこしてしまっていた。
葉酸も飲んでいなかった。
夜更かしもした。旅行にもいった。
1番の後悔は、「え、いま?」と、妊娠判明時に思ってしまったこと。
長男が卒乳したばかりで、やっとお酒を飲めるようになった頃だった。
1か月前に復職したばかりなのに、職場に申し訳ない、とも思った。
望んで第2子を妊娠したはずなのに。
想像以上にすぐに授かったことで、喜びきれずにいた。

そんな思いを見透かしたみたいに、あっけなくその子はいなくなってしまった。
深夜に突然出血し始めて、翌日には真っ赤な血と一緒に、白い塊が出てきた。
病院にもっていくと、「赤ちゃんの一部です」と言われた。
一部って、そんな。
エコーで診てもらうと、おなかの中にはもう何も残っていなかった。
じゃあ、それ以外は、トイレに流れてしまったってことなのか。
なんてかわいそうなことをしてしまったんだろう。

診察室を出て待合室に入ると、当然たくさんの妊婦さんたちが目に入る。
急に感情の波を制御できなくなって、視界が滲み、嗚咽が漏れた。
悲しいというより、流れてしまった子がかわいそうだった。
最初から最後まで雑に扱われてしまった子。
助産師さんが駆けつけて、「辛いよね、お母さんは悪くないよ」と、他の妊婦さんが見えない半個室の囲われたスペースに通してくれた。
辛いのは私じゃないのに、あの子なのに。
ごめんね、こんなふうに被害者みたいに泣いて、本当にごめんなさい。
助産師さんに優しい言葉をかけられるほどに罪悪感が増して、身勝手に流れる涙を止めることができなかった。

〇〇〇

それから半年でまた妊娠できたのは、本当に幸運なことだと思う。
次また妊娠できたら絶対に、心から感謝して迎え入れると決めていた。
だから、双子と聞いて動揺しつつも、お腹の子たちには悟られまいと必死に念じた。
大丈夫だよ、すごくびっくりしてるし、不安もあるけど、嬉しいよ。
1人はあのときの子なのかなぁ。もう、すねて帰らないでね。
戻ってきてくれて、本当にありがとうね。

双子の妊娠出産は分からないことばかり。
産む前も、産んでからも、育てるのも大変そうだけど、でも頑張るよ。
無事に産まれてね。
ちゃんと2人とも元気に育ってね。

双子について検索すると、様々なリスクばかりが目に飛び込んでくる。
「バニシングツイン」「早産」「低体重」
怖い、でも大丈夫、大丈夫と自分とお腹の子たちに言い聞かせる。
だってこれは「ミラクル」なのだから。

想像以上のものを授かった喜びと、抑えきれない不安。そしてこれから起こることへの少しの好奇心を胸に、産婦人科をあとにした。

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