19歳の校閲ガール
「ひとんちを見る」というのが幼い頃から好きだった。
父の働くいろいろなモデルルームに遊びに行った朧げな記憶がある。
新築の匂い、サラサラな床、それをやわらかく照らす陽、「これからあたらしいことが始まりますよ!」感にわくわくした。
自分のとは違う子供部屋のじゅうたんを踏むのとか、
開きそうな扉と引き出しは全部開けたし、なかなか迷惑な子どもだったとは思う。
でも、まだ新品のふかふかさを足に感じたり、開けても何も入っていない引き出しの軽さが面白かったりした。
誰かの暮らしとか、生活とかを想像することが大好きだった。
自分の中の世界、思っていることを言葉や形にすることはずっと私が結局辿り着く「やりたいこと」「好きなこと」だったから、チラシの裏に絵本を書いたりくだらない雑誌を家庭内で刊行したりしていた。
人の暮らし、思いを覗くには映画や本もぴったりで、その中でもとりわけ、おいしいスープを作る映画や美味しそうなお米を炊いたりしている映画に惹かれた。
スクリーンの枠を超えて、その人の暮らし、人生を勝手に膨らませるのが楽しかった。
もう少し大人になって、インターネット世界も覗けるようになった時、モノや暮らしに愛を持ってこだわっている人がたくさんいることを知った。し、なんて素敵なんだろうと思った。
その中には、日常に溢れる幸せを、心を満たす大きな豊かさとしてやさしく教えてくれるような繋がりもあった。
誰かの思いや世界が、さりげなくも確かな存在感をもって自分の世界と繋がったときの暖かさと嬉しさに、虜になった。
豊かであり繊細なこの日本語を操って価値や思いを表現することを、私もやりたいと思った。初めて「こういう学びがしたい」と思えて、受験勉強も頑張れた。
「私、こんな考え方で生きてて」とか
「このモノをずっと大切にしてて」とか
「これ、こういう思いで作ったんです」とかを、
掬いとって、言葉を編んで、
誰かの「いいな」「好きかも」の琴線に触れる体験に繋げたい、と思った。すごくすごく。
日々の些細な気づきに光をあてて、手間さえ、綻びさえ慈しむ毎日の喜びを届けたい。
こだわりをもって選んだモノたちが織りなす暮らしはふたつとないかけがえのないもので、その何気ない尊い瞬間を切り取って、伝えたら、さらにたくさんの「わたしだけの暮らし」が創造されていくんじゃないか。
そんな仲間の輪を、書き手として広げて、とっておきの毎日を送る人を増やしたい。
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まあここまでが前座なんですけど、果たしてここまで読んでくれている人はいるのだろうか。
こちらの、長々ダラダラとちょっとカッコつけたがっているような筆致の文章は、就活のときに「エッセイを書け」と言われたので書いたエッセイに心ばかりのモザイクをかけたもの。
原文(?)は、今改めて読むとクサすぎて読めたもんではありませんでした。
でも、そういう、暮らしとか価値観とか愛着とかに寄り添った書き手になりたいなあというのはずっともう一つの将来の夢ではあった。
知らないところでずーっと続いている誰かの素敵な人生の一瞬を広げる、ってとんでもなく尊いし素敵だし嬉しい、と常々感じているので。
で、この会社には見事落ちたのだけど、このエッセイを校閲してくれた校閲ガールが1人だけいて、そのときにくれた言葉がずっとお守りみたいに居続けているのでここに残しておこうと思い。
そもそもエッセイなんて自分を晒したものを添削に出せる相手なんていないはずなのだけど、こちらも就職がかかっているのでその校閲ガールにだけお願いをした。今思えばタダ働きをさせて申し訳ない。
↓Wordにコメントスタイルで校閲してくれた。
ゴミをばら撒きながら退廃的な生活をしてしまい落ち込むこともあるんだけど、「些細な幸せをちゃんと抱きしめて自分の生活と心を豊かにする術を知っているかつ実践できている」と言ってくれた人がいるというのがお守りになっている。あと褒めて伸ばすタイプでありがたい。
写真のとおり、校閲ガールは妹だったんだけど、note、instagram、youtube、どれをはじめた時も古参アピをしてくれている。
↑これとかね。
古参というかそもそもファンが居る自覚が無いが、古参ファンがいる人生というのはなかなか良い。
あと、将来の夢は何個あってもいいし、何個叶えてもいいし、叶うか叶わないか分からないならぶつかったり飛び込んでみたりしてみなよ!というのも、
今の自分から老い先の自分に向けてのお守りの言葉にしたい。
ありきたりだけど、人に言われるのと体感をもって言葉にするのは意味と響きが全然違う。多分同じことを人に言われても私は「そうは言うけどさあ」と捻くれる。人聞きの悪い大人になってしまった。
些細な幸せをちゃんと抱きしめるために今日は明日の分のケーキを焼いた。キッチンがいい匂いで嬉しいけど、相変わらず築古の我が家の換気扇からは何故か扇風機並みの送風がされている。
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