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ドイツが認めた食肉加工職人、ゲゼレの紹介 〜関進一篇 vol.2〜

前回のnote「ドイツが認めた食肉加工職人、ゲセレの紹介 〜関進一篇 vol.1〜」では、ドイツ・ミュンヘンの名店「メッツゲライ・ヴェーバー」での修行についてお話しさせていただきました。今回は、関進一が日本帰国後、どのようにその経験を活かしてきたかご紹介します。

帰国後、ハムソーセージのレシピがより本場に近づいた。

日本に帰ってきて、大きく作り方を変えたのがソーセージですね。生地の作り方をドイツに近い方法に変更しました。ハムやベーコンは、日本の他社に比べれば元々ドイツの作り方に近かったので、さらに高みを目指しました。なぜこの工程があるのか、理由をつけて助言できるようになりましたね。

今までは、機械を回して、肉を触ってみて、手の感覚で「これくらいだな」という感じで作っていました。体感しないと覚えられないので教えることも難しいし、そもそも覚えることが難しいですよね。日によって感覚も違いますから。

ドイツでは肉の変化を科学的に勉強します。温度で管理するんです。肉を機械に投入して、何度になったらこれを添加する、次はこの温度になったらハイスピードにしなさい、この温度になったら終了です、と。日本とは肉が違うから誤差はあるし温度計が壊れることもあるから、手の感触も大事なのですが。手だけでなく、生地を舐めてみて解け方や弾力を確かめることもしますよ。

愛知万博のドイツパビリオンに弊社の商品を提供できたのも、この研修があったから。コンペで勝って、弊社が任されることになったんです。約30センチという長さの焼きソーセージを出したのですが、賄い用で注文を受けたレバーケーゼは、今「バイエルンケーゼ」として商品化もされています。

ドイツの食文化を日本の皆さんへ。

社長が以前にも語っていた、商品の温度管理について、もう少し詳しく話したいと思います。

メッツゲライササキでは、ドイツのスパイスを使っています。日本で流通しているものとどこが違うのかと言うと、普通のメーカーが使う業務用のスパイスは加熱殺菌されているんです。スパイスは菌数が高いのでしょうがないことなのですが、そうすると香りが全部飛んでしまうんですね。ドイツのスパイスは殺菌があまりされていないので、すごく香りがいいんです。クオリティを求めると、そのスパイスがどうしても必要で。しかし、一方で日持ちがしなくなってしまいますね。普通の状態ではスーパーやデパートには置けません。ですから、卸す品はパックしてから表面だけ加熱したり冷凍したりします。

多少ですが品質が落ちてしまうので、メッツゲライササキには一番美味しい状態で食べてもらえる二次殺菌なしのものを届けることにしています。そのために冷蔵庫の温度を低めに設定し、賞味期限も3〜4日に設定。スーパーやデパートで買っていただいたことがある方も、ぜひ一度田園調布の店頭で購入いただきたいですね。

ドイツ人は美味しいものを美味しく食べるということにこだわっていて、食べる量だけのパンを買い、それに合わせる肉を必要な分だけ買って食べています。ハムやソーセージが日持ちしないのをわかっているんですね。日本で鮮魚を買うのと同じ感覚だと思います。ハムソーセージに対するその考え方が、日本にも広まるといいなと思います。

これからもドイツ仕込みの職人を増やしていきたい。

次は6月に女性社員がゲゼレ取得のために渡独することが決まっています。これはすごいことですよね。どうしてもまだまだ男の世界ですから。「メッツゲライ・ヴェーバー」でも昨年女性がゲゼレを取得したので、彼らにとってもアピールポイントになるのでは。ただ、私が行った当時を思い出すと、心配ですね。いろいろと助けてあげながら、無事に帰ってきてくれるのを待つのが楽しみの一つです。

タカラ食品が始まって65年、鏑木さんがブッツを立ち上げてから50年。私も後進を育てていく立場です。先輩たちが築いてきたものを引き継いで行かなきゃいけないし、もっと良くしていかなきゃいけない。ドイツへの短期、長期研修というのも、さらに環境を整えていきたいと考えています。