渡瀬水葉

小説を書いています。 エブリスタhttps://estar.jp/users/1529…

渡瀬水葉

小説を書いています。 エブリスタhttps://estar.jp/users/152993034 Amazonセルフ出版 https://www.amazon.co.jp/~/e/B08RX464DY

マガジン

  • 探偵になるまでの2,3のこと

    小学六年生の三加茂良真(みかもりょうま)の父・重彦が失踪。 重彦は、職場で問題行動をとっていた部下の豊田久巳とトラブルがあったという。 折しも、豊田久巳からストーキング被害を受けていた女性・鷲尾麻美が遺体で発見され、ネットで「三加茂重彦犯人説」が盛り上がる

  • 扶桑国マレビト伝

    異世界を舞台にした長編ファンタジーです。明治大正時代をモチーフにしています

  • 検非違使別件

    平安時代の検非違使に取材したミステリーです。

  • 樋口一葉について

    名作の誉れ高い「樋口一葉の作品」自分なりに解釈し、読みやすくまとめました。 明治時代は書かれる文章としゃべる言葉を統一しようという運動があったにもかかわらず、一葉は「疑古文」で小説を発表! 日本語の美しさと新しい女性の胎動を同時に描き切った文豪です。

最近の記事

時差のため、ZERO円キャンペーン開始時刻が遅れます💦

昨日に引き続き、またしても修正があります。💦 拙作「風凛抄」のkindleダイレクト・パブリッシング(Amazonセルフ出版)での……ZERO円キャンペーンが、時差のため5月25日夕方(たぶん5時ごろ💦)になるようです。 お騒がせして申し訳ありません。💦よろしくお願いいたしますm(__)m ついでに、noteの創作大賞に応募している拙作も宣伝させていただきますね(*^-^*) ここまでありがとうございます。(*^-^*)

    • ZERO円キャンペーンの日付が変更されていました💦

      続投失礼します。 お昼ごろに宣伝した内容の変更です💦 拙作「風凛抄」を15冊目のkindleダイレクト・パブリッシング(Amazonセルフ出版)いたしましたが……ZERO円キャンペーンの開始が変更されておりました💦 明日、5月25日お昼から29日までZERO円です。 もしご興味がありましたらよろしくお願いいたしますm(__)m

      • kindleダイレクト・パブリッシング 電子書籍出版のお知らせです。

         宣伝失礼いたします。m(__)m  今回、Amazonセルフ出版(kindleダイレクト・パブリッシング KDP)で15冊目を出しました。  以前、小説投稿サイト・エブリスタに投稿していた「凛の風」を改題し「風凛抄 島原の乱異聞」といたしました。  エブリスタのみならず、アルファポリスやカクヨムにも重複投稿していた作品で、個人的には一番長く修正や改稿をしつつ、公開していたような気がします。  コンテストで講評をいただいたこともあり、それを参考にして現在の形に整えて晴れて「

        • 大河ドラマ「光る君へ」で描かれた「長徳の変」と自作について

          大河ドラマ「光る君へ」第20回「望みの先に」が放送されました。 花山院に矢を射かけた事件で中関白家の伊周と隆家兄弟が失脚。中宮の定子も一条帝の側を離れて実家へ戻されます。 そして左遷の除目(事実上の遠流)で都を追われることになった伊周と隆家ですが、なかなか牛車で発とうとはしません。一条帝は命令に従わない兄弟に激怒し、検非違使を出動させます。 貴族の邸が検非違使下部の者たちに囲まれるだけでも不名誉なのに、土足で踏み込まれます。 平安時代の序列は厳格で、「三位以上の貴族の

        時差のため、ZERO円キャンペーン開始時刻が遅れます💦

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        • 探偵になるまでの2,3のこと
          22本
        • 扶桑国マレビト伝
          27本
        • 検非違使別件
          19本
        • 樋口一葉について
          6本

        記事

          探偵になるまでの2,3のこと ㉒

           先生たちが帰っても、母さんはまだ怒っていた。 「内気そうにしていて、あの畑中先生ってひどすぎる! メディア関係者にイジメ加害者の子が割り出される? 割り出されればいいのよ。ウチがどんな思いをしたか、思い知ればいいのに!」 「よそうよ、母さん」 お茶の飲み残しをシンクに流しながらぼくは言った。おなかが空いたわけじゃなかったけど、なんとなく冷蔵庫を開けて中を見まわした。 「何か食べたいの?」 母さんは不機嫌を引きずったまま顔をこっちに向けた。 「しばらくは保護者同士

          探偵になるまでの2,3のこと ㉒

          探偵になるまでの2,3のこと ㉑

           ネットでのあおりがなくなり、『森部五色村ストーカー殺人事件』の三加茂重彦犯人説は消えている。最初からそんなものは無かったかのように。  足首のひどい捻挫はまだ痛むそうだけど、「もう湿布だけで充分よ」と車いすから母さんは降りた。 背中の打撲のあざは消え始めていたし、左腕の尺骨に入ったひびも十日後にレントゲン撮影の予約を入れ、さっさと退院手続きをすませてしまった。お医者さんは「もう少し入院して精密検査が必要ですよ」と言ったけど、母さんは「検査のために日を改めて通院します」と

          探偵になるまでの2,3のこと ㉑

          探偵になるまでの2,3のこと ⑳

          「永沢光江は死んだ母親の家や土地を売ってお金を独り占めしていたって聞いています」 宮本定克の言ったことを思い出していた。 「鷲尾麻美さんに貢いで貧乏になっていた豊田久巳なのに、マンションに住んでおいしいものを食べて、きれいな陶器に囲まれて暮らしていた。そのお金はたぶん、永沢光江から出ていたんだ。その永沢光江が鷲尾麻美さんを殺した。もしかして、決定的なところでは豊田久巳は永沢光江の言いなりだったんじゃないですか?」  服部警部補と奥田巡査が一度顔を見合わせ、息を飲んだよう

          探偵になるまでの2,3のこと ⑳

          探偵になるまでの2,3のこと ⑲ 

          母さんが意識を取り戻した。白いベッドの上で手を伸ばし、ぼくの手に重ねた。 「よかった、無事だったのね……りょうま」  弱々しくてのどにからんだような小さな声。 点滴のカテーテルにつながれた母さんの様子は痛々しかった。できるだけゆっくりとぼくは言った。 「二度と意識が戻らないんじゃないかと思ってた……」 「心配かけて……ごめんね」 「安心して。ここは大学病院だよ。入院中は安静に、だって」  ちょっと笑ってから母さんの目じりの涙をティッシュでぬぐってやった。 「す

          探偵になるまでの2,3のこと ⑲ 

          探偵になるまでの2,3のこと ⑱

          五 アンゴウ  子供たちが、一言の別辞を父に語ろうと祈っているその一念が、暗号の紙にこもっている、そう考えることが不合理であろうか。 『アンゴウ』坂口安吾 ※  ≪公式動画 ネットチューブ  お詫びと反省しなきゃならないって思った!!≫ はい、今日もおいらの配信を視聴してくれて、ほんっと感謝してまぁす。 ネットで世間の悪を裁く、社会派動画のポピナンです。  今日は『森部五色村ストーカー殺人事件』について速報だよ~ん。 タイトルにもあるようにネ、お

          探偵になるまでの2,3のこと ⑱

          探偵になるまでの2,3のこと ⑰

          「は! そうよねッ。あたしもどうかしてたわッ。このガキ、メメラン・チャンネルってさっき言ってたのよね! メメラン・チャンネルのアカウントなら、こいつのイジメ映像を投稿したせいでコミュニティガイドラインに触れてはじかれたのよ! だからライブ配信なんかできないはずだわ」 「さあどうかな」  ぼくの背中を冷たい汗が流れる。スマートフォンを掲げた腕が少し震えた。  今度は豊田久巳が身をよじって笑い出した。はだけたガウンの前を掻き合わせ、ひいひいと涙を流す。嘲笑の表情のまま、一歩

          探偵になるまでの2,3のこと ⑰

          探偵になるまでの2,3のこと ⑯

           ぼくの家族。ぼく自身をしんどい目に合わせた『敵』を憎んでないわけはない。カッターをサッと動かしてやりたい。どんなに憎んでいるのかを思い知らせてやりたい。 だけど、いまそんなことをすれば母さんはどうなる?  ハンドルを切り、右へ左へ車線を変更しながら黒田圭子を名乗っていた永沢光江が笑い出した。 のどをのけぞらせたヒステリックな笑いで、聞いているだけでイラついた。思わずのどにカッターを突っ込んでやりたくなる。外はどしゃぶりで、ひっきりなしに雷鳴が空を切り裂いている。たった

          探偵になるまでの2,3のこと ⑯

          探偵になるまでの2,3のこと ⑮

          やがて大きな銀行の建物やオフィスビルが建ち並んでいる通りへ出た。陸橋の上を走ると、海岸に突き出したネオンに輝く湾岸都市が見渡せた。  とんでもなく遠くへ来たような気分だ。空が暗いせいだろうか。それとも台風のせいだろうか。  再び空が白っぽく輝いた。ガラスを流れ落ちる雨水の半透明な影が、車内に不自然な形を描いている。続いて落雷の音。近くに落ちたな。それもごく身近に。  不意にぼくの手もとを黒田圭子があごでしゃくる。ぼくがランドセルのふたを持ち上げ、ペンケースを出していたか

          探偵になるまでの2,3のこと ⑮

          探偵になるまでの2,3のこと ⑭

          四 イノチガケ 人にまことがないほどの恥辱がありませうか                     坂口安吾『イノチガケ』  公園を出たとき、「センター長の三加茂さんの息子さんね」と声をかけられた。 傘から滴り落ちる雨水ごしに、ぼくはその人を見た。  もはや豪雨になっていた。その女の人は黒い大き目の傘を差し、真っ赤なワンピースの上にひざ下まで裾がある黒いレザーコートをまとっていた。薄紫色のサングラスをしているから、人相はよく分からない。  ただそこに立っている

          探偵になるまでの2,3のこと ⑭

          探偵になるまでの2,3のこと ⑬

          ぼくは自分の傘を拾い上げた。 「じゃあ、緑川さんも帰った方がいいよ」 「……そうね」  足元でうずくまっている宮本定克に目を落とし、それからぼくにうなずいた。 「良真くんも早く家に戻ってね。宮本くんも」 宮本定克は身動き一つしない。ぼくはうなずいた。 「うん、さよなら」 篠田正次がぼくをターゲットにした理由。  宮本定克のそそのかしに簡単に乗ったのは……。 傘を差して背を向けた緑川さんの姿が角を曲がって見えなくなる。 「義理だと思ってなかったと思うよ、篠田は

          探偵になるまでの2,3のこと ⑬

          探偵になるまでの2,3のこと ⑫

           ランドセルを背負って玄関を出て傘を差した。路地を渡って右に折れたとき 「おい……」  おずおずとした声がかけられ、ぼくと緑川さんはちょっと傘をあげた。 植木の枝、電信柱とコンクリートブロックの塀の影になった狭い小道。そこから篠田正次と下川秀和、佐野健司と宮本定克の四人組がいた。傘を差さず、レインコートをばたつかせている。  身構えたぼくだったけど、四人の様子は変だった。 篠田正次はふてぶてしい表情をしているものの、その背後では下川秀和と佐野健司が宮本定克の身体を文

          探偵になるまでの2,3のこと ⑫

          探偵になるまでの2,3のこと ⑪

          「わたしの家、良真くんチとは反対方角だよね。それに小学校とは一キロと離れてないの。でも、中学は遠くなっちゃうから自転車通学になると思う」 「そうなんだ。自転車用のレインコートがいるね、こういう日には」  他愛ない話しをするうち、緑川さんの家の前に着いていた。そのころには心が和んでいた。  緑川さんの家は明るいオレンジ色の外壁に紺色の屋根を乗せていた。庭はよく手入れされた芝生が広がっている。 「入って」 せかせかと玄関ドアを開錠し、緑川さんはぼくを押し込んだ。ふっくら

          探偵になるまでの2,3のこと ⑪