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全部、クレアーズだった

長く伸ばした髪を、ふたつに結んだり、カチューシャでとめたり。
学生時代は、「髪飾り、いくつ持ってるの?」
と笑われるのが、なんだかわたしは好きだった。

アクセサリーブランド「クレアーズ」が、
日本から撤退することになったという。
国内に110ある店舗も、10月末までに順次閉店していく。

「クレアーズ」との付き合いは、日本で展開されていた期間のすべて、そのまま25年間になると思う。
小学校に上がったころから、わたしが思う「キラキラ素敵なもの」は全部「クレアーズ」に詰まっていた。

100円じゃ買えない。
だけど、1,100円あれば、ちゃんとかわいいアクセサリーが買える。
その絶妙な価格帯が、わたしとクレアーズの蜜月を支えていたのだと思う。
お店を見つけると、ふうっと中に吸い込まれてしまう。

小学生のときには、お母さんにヘアゴムを買ってもらった。

中学生になったら、友だちと出かけた。
テスト期間の最終日には、大阪・梅田のクレアーズで揃いのボンボンを買ってプリクラを撮るのだ。

高校生になったら、ひとりで出かけた。
気になる人と隣同士の席になったから、毎日リボンを取り替えなければいけなかった。
キラキラの石がたくさん付いたヘアブラシを机に置いて、
授業中は窓から入る陽が反射するのを惚れ惚れと見ていた。

コンビニと値付けのアルバイトで貯めたお金を握りしめて、「阪急百貨店」に出かけた。
はじめて自分で買った財布は「PINKY&DIANNE」。
そのPINKY&DIANNEの財布を握りしめて、真っ先に出かけたのも、やっぱりクレアーズだった。
レジのお姉さんが「お財布かわいいですね」と褒めてくれるので、
わたしは本当に本当に浮かれてしまった。

大学生になる前には、クレアーズのピアッサーでみんなが耳に穴を開けた。
わたしは予防接種にさえ怯えるような、大変な小心者だから、それをただ黙って隣で見ていた。
結局、とても自分で自分の体に針など刺せなくて、なぜか「高須クリニック」で開けることになる。6,000円だった(当時)。
誰もが「そっちの方が勇気要るわ」と言った。

男の子と花火に行くときにには、クレアーズで浴衣に似合うピアスを買った。
卒業式の袴に似合うヘア小物も、もちろんクレアーズで買った。

上京して1週間後には、池袋のサンシャインシティでクレアーズを見つけた。
ヘアブラシと靴下を買ったら、「クレアーズさえあれば何とかなるだろう」という自信が生まれた。

わたしの眩しい思い出は、全部全部クレアーズだったのだ。

子ども頃から見ていた番組も、雑誌も、アイドルグループも。
そしてお店もブランドも。
気づけば、そのほとんどが過去のものになり、わたしの傍から無くなってしまった。

「大人になるとはこういうことなのか」
と思うと、なんだか途端に心細くなる。
とはいえ移り変わるからこそ、それは「カルチャー」なのだけど。

そんな中でもクレアーズは、本当に長く傍に居てくれた。
ノスタルジーに溢れた、わたしにとって大切な場所だった。

10月までには、あれもこれも落ち着いて、
キラキラの店内に女の子が溢れているといいけれど。
またひとつ、努力のしようのないお祈りごとが増えてしまった。

エッセイ執筆の糧になるような、活動に使わせていただきます◎