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2020年3月の#わたしが帯を書いたなら

なぜ、「勝手に本の帯を書く」だなんて勝手なことをしているのか、については、年始の2020年1月の#わたしが帯を書いたなら の冒頭で、まったく説明になっていない説明を書いているので、読み飛ばしてもらっていい気がします。

そんなわけで、今月も、2020年3月に書いた「自作の帯」をここにまとめることにします。

82年生まれ、キム・ジヨン

著:チョ・ナムジュ

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とても話題になっていた本ですし、実際に書店でも何度も見かけ、手に取りかけては、辞めておく、の繰り返しでした。
正直に言うと、(無責任だけれど)ジェンダーに関わる話が、わたしはどこか苦手なのです。
わたし自身は「女性であること」で大きな損をした覚えはなくて、むしろ得をしたり楽をさせてもらったことだってあるように思っていましたし、簡単に言うと、なにも不満が無かったのです。
けれど、この本を通し、キム・ジヨンという女性の半生を生きることで、「ああ、こういうことあったな」「こういう意味だったのか」ということが本当に多くて。心当たり、という言葉が何回も胸や頭をよぎりました。
ジェンダーの問題に関わりのない人なんて居るわけがないことを、改めて知らされる一冊です。
しかし、まあ、たまたま女性側のお話ですが、きっと男性は男性で非常に息苦しさも感じているはずで。
「こうしなきゃいけない」「こうあるべき」が少しでも減って、そんなこおに縛られることのない未来にしたいなと改めて思います。

寄り添うツイッター わたしがキングジムで10年運営してわかった「つながる作法」

著:キングジム公式ツイッター担当者

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まず、運用に関するHow to本ではありません。「具体的なツイートとフォロワーの推移」みたいなこともあまりわかりません。
だけど、それで良いと思いました。どのアカウントにも効く「技」のようなものは存在しないし、日々の実際の投稿の積み重ねでしか得られないものばかりだと思うから。
ここで分類されている「宣伝アカウント」と「交流アカウント」のうち、いずれ(すでに、かもしれませんが)「宣伝アカウント」は機能しなくなるのでしょうし、いかに運営している側の人柄や想いを乗せて、話しかけ、答え続けるか。そうすることでしか、企業やメディアのカラーやポリシーを伝えることも、はたまたブランディングなんてできないのだろうな、と改めて実感するばかりでした。

春、戻る

著:瀬尾まいこ

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瀬尾さんの本は読むたび思うけれど、なんて読みやすいんでしょう。
水のようにごくごく飲めて、気づけばだいたい終わっています。
大人になるごとにわかるけれど、いろんな場所で経験を重ねれば、そしてそこで懸命にやってれば、気にかけてくれる人というのは必ずいて。
自分を思ってくれてるのって、けっして家族や恋人だけじゃないんですよね。
読みやすくて、ふんわり終わる、だけどちゃんとあたたかい一冊でした。

ブックデザイナー・名久井直子が訪ねる 紙ものづくりの現場から

編集:グラフィック社編集部 (編集)

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装丁家でブックデザイナーの名久井直子さんの取材をさせていただくにあたって勉強のため、手にとった一冊でしたがとにかくおもしろい。
活字屋さん、印刷会社、製本の現場など、「紙」に関わる、たくさんの匠のもとを名久井さんが訪ねて、実際のお仕事や仕事場を覗いていくのですが、どのお仕事も、正直ちょっと想像がつかないような世界なのです。
年季の入った格好いい道具や、驚くようなマシンなど、「この工程でこれが..?」「この素材からこれが..?」というお写真ばかり。
名久井さんの「紙」へのきらきらとした愛情がたっぷりと伝わってきますし、ものづくりについて執筆することの多いわたしにとっては、それぞれの編集や説明が本当に勉強になりました。

あひる

著:今村夏子

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こういう小説がきっとわたしは好きなんだと思いますが、とにかくもうたまりませんでした。
なんでしょう、このゾクゾク、ざわざわとした居心地の悪さは。
どこにでもある家族のようで、よくよく話が進んでいくと、あれれ、となっていくのですが、どうでしょうか。わたしは、この「主人公」が信用ならない気がしてずっとしょうがないのです。
そこで何をしてるの。何歳なの。どういうつもりでそうしてるの...と、今村さんの巧妙な「書かない」技術で、ずっとずっと引き込まれっぱなしのまま、お話は終わります。
そういうお話がお好きな方、ぜひ読んでみてほしいです。感想を言い合いたい1冊でした。

2020年3月に読んで、特によかったものを、ざっと並べてみました。本はいいなあ。帯を書いていなかったら、絶対こんなに覚えていなかったけれど。

最新の「自作帯」はこちらです。

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