中前結花

兵庫県うまれのエッセイスト・ライター・編集者。ラジオやJ-POPにまつわるエッセイをい…

中前結花

兵庫県うまれのエッセイスト・ライター・編集者。ラジオやJ-POPにまつわるエッセイをいくつかの媒体で連載中。 元「minneとものづくりと」編集長。 📮お仕事はTwitterのDMにお願いします。 https://note.com/meruco/n/n9749f1906bf8

マガジン

  • 日々のつれづれ (ただの日記)

    日々の中で思ったり感じたりした、ただの日記です📝

  • ソファでわたしは旅をする

    • 15本

    いつかまた自由に出かけられるその日まで、「空想の旅」をテーマに文章を書いてみることにしました。 趣味や嗜好、旅のスタイルも異なる3人の書き手・べっくやちひろ、中前結花、吉玉サキがそれぞれお届けします。 束の間でも、みなさまを“ソファの上の旅”にお連れできたらうれしいです。

  • 今月の「#わたしが帯を書いたなら」

    誰に頼まれているわけでもないですが、毎月わたしが「読んでよかった」と思う本に、勝手に自作の帯をつけてご紹介します。

  • テレビとラジオのはなし

    すきなお笑いや、ドラマについて書きます。

  • エッセイのお仕事

    エッセイストとしての記事です。

記事一覧

固定された記事

それはつまり、設楽さんなのか。日村さんなのか。

その昔、カタカナの「シ」と「ツ」の書き方の違いを、バナナマンの日村さんに教えたのは、相方の設楽さんだ。 おかしな話だけれど、日村さんは「シ」と「ツ」、ついでに「…

中前結花
3年前
558

父にはじめて手紙を書いた

4月15日。 今日で、結婚式を挙げてからちょうど1年を迎えた。 あの日のことは、まだ夢か何かだったのではないか‥‥と日々いつも思い返していて、そのくらい素晴らしい光景…

中前結花
1か月前
50

35歳にだけはなりたくなかった。

はじめて『魔女の宅急便』を見たのは、34歳のときだった。 正確には「2度目」の鑑賞だったのだけれど、 1度目は、まだ何の分別もつかない4〜5歳のころだったと聞いているか…

中前結花
9か月前
109

「結婚」はしないと思ってた。

「結婚」なんてしないだろうと思っていた。 だから、まだ付き合ってもいない彼から唐突に 「なんか……結婚したいですね」 と言われたときは、なんて気の合わない人なんだ…

中前結花
2年前
1,640

住まなかった街も思い出になる。

年下のひとたちと飲むことになった。 会社を辞めてからは、とんとそういうことがなかったから、向かうときにはすこし緊張した。もちろん、ひとつふたつ下の友は多いけれど…

中前結花
2年前
121

書いた記事をまとめました。

これまで書いた記事の一部を、ポートフォリオ的にこちらに纏めようと思います。 ✏︎ 著書初のエッセイ集『好きよ、トウモロコシ。』(hayaokibooks)が発売中です。(2023年…

中前結花
2年前
63

連載『旅するコットン。』高知の旅【3】

<第1話のお話はこちら> <第2話のお話はこちら> 木綿子は自分のくちびるが、ほんの小さく震えているのがわかった。 けれど相手は岡野だ。恐れや焦りのようなものはまる…

中前結花
2年前
39

連載『旅するコットン。』高知の旅【2】

<前編のお話はこちら> 高知はよく晴れていて、七分袖のカットソーの中はすでに汗ばんでいた。 「1時間半も経ってないなんて」 木綿子にはずいぶん長い時間に感じられ…

中前結花
2年前
30

連載『旅するコットン。』高知の旅【1】

旅エッセイの企画『ソファでわたしは旅をする』で、中前結花が担当する連載小説です。今回は第1話。 膝の上で、ビニールのボストンバッグの中身をあれこれと探っている。 …

中前結花
3年前
72

「退職」と「出発」を決めました。

この度、4月30日付で休職を頂いていた会社を退職し、『minne』『minneとものづくりと』を正式に離れることとなりました。 お世話になったみなさま、本当にありがとうござい…

中前結花
3年前
238

「いいよ」という言葉をわたしは使わない。

◆「人に聞きなさい」幼い頃、わたしは自宅でもどこでも、 「トイレに行ってもいい?」 と両親に尋ねていた。 当然「行くな」だなんて言われるはずがないのだけど、 「もち…

中前結花
3年前
197

2020年振り返り「#わたしが帯を書いたなら」

なぜ「頼まれてもいないのに本の帯を書く」だなんて、こんなに勝手なことをしているのか…については、年始の2020年1月の#わたしが帯を書いたならの冒頭で、まったく説明に…

中前結花
3年前
56

別れるとき、さくらは流れた

冬は、リビングに駆け込むと、いつも石油ストーブのムッとするような独特の香りが漂っていていて、わたしはこれが特別に好きだった。 実家で過ごしていた頃の話だ。 母は…

中前結花
3年前
758

ちょっと、お暇いただきます。

まだまだ、どうにもすがすがしくはないけれど、 それでもどうにか2021年の幕は開いて、また新しい1年始まって。 今年は、うんといい1年になるといいな。 そんな中、近しい…

中前結花
3年前
241

「あれは漫才なのか」とか「この人は作家なのか」とか。

なんだか季節の移り変わりや風情なんてものを、 どうにも肌で感じ辛い2020年だったけれど、 今年もまた「M-1グランプリ」が終わって、ようやく 「そうか、もう今年がいくん…

中前結花
3年前
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「東京」とは、さまぁ~ずだった。

さまぁ~ずの三村さんは、たとえば、 「気づけば、知らないおじさんがすぐ近くに立っていた話」も、 「はじめて見るものを、口に運んでみたときの話」も。 それから、「唐突…

中前結花
3年前
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それはつまり、設楽さんなのか。日村さんなのか。

それはつまり、設楽さんなのか。日村さんなのか。

その昔、カタカナの「シ」と「ツ」の書き方の違いを、バナナマンの日村さんに教えたのは、相方の設楽さんだ。

おかしな話だけれど、日村さんは「シ」と「ツ」、ついでに「ン」の書き方が怪しい。
設楽さんは何度だって「“シ”はね、“ツ”はさ、」と、その書き方について説明してきた。
その度に「そっかそっか」「またやっちゃった」と日村さんは言うけれど、おそらく、きっと、今でもあやふやなのだ。

うんと若いころ、

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父にはじめて手紙を書いた

父にはじめて手紙を書いた

4月15日。
今日で、結婚式を挙げてからちょうど1年を迎えた。
あの日のことは、まだ夢か何かだったのではないか‥‥と日々いつも思い返していて、そのくらい素晴らしい光景だった。
煌々と光るライトの下で、大好きな人たちがみな笑っている。それがとてもとても嬉しかったのだ。

そんな催しの中で、わたしが「父へ」と読んだ手紙の下書きが出てきたので、せっかくだからここに残しておこうと思う。

お父さんへ

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35歳にだけはなりたくなかった。

35歳にだけはなりたくなかった。

はじめて『魔女の宅急便』を見たのは、34歳のときだった。
正確には「2度目」の鑑賞だったのだけれど、
1度目は、まだ何の分別もつかない4〜5歳のころだったと聞いているから、やっぱりわたしの体感では「はじめて」であった。
なんとなく、
「魔女の宅急便ぐらいは見ておくか」
と思い立ち、リビングにチンと座って見たのだ。
金曜ロードショーだった。

のどかな風景。愛嬌のあるキャラクター。
わたしはすぐにこ

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「結婚」はしないと思ってた。

「結婚」はしないと思ってた。

「結婚」なんてしないだろうと思っていた。

だから、まだ付き合ってもいない彼から唐突に
「なんか……結婚したいですね」
と言われたときは、なんて気の合わない人なんだろうかと首を傾げたものだった。

「結婚は……、どうでしょう」
わたしは答える。

もちろん、そういう幸せのかたちがあることは知っているし、大切な誰かが誰かと結婚するとき、わたしは心の底から「おめでとう」と言うことができた。
けれど自分

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住まなかった街も思い出になる。

住まなかった街も思い出になる。

年下のひとたちと飲むことになった。
会社を辞めてからは、とんとそういうことがなかったから、向かうときにはすこし緊張した。もちろん、ひとつふたつ下の友は多いけれど、十もちがうとなれば、
「大丈夫かしら……」
と不安になったりもする。文章を書くひとたちの集まりではあるけれど、話についていけるだろうか。
場所は赤坂で、ほどよく街も店内もがやがやとしていた。
「こっち、こっち」
と呼び寄せられテーブルにつ

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書いた記事をまとめました。

書いた記事をまとめました。

これまで書いた記事の一部を、ポートフォリオ的にこちらに纏めようと思います。

✏︎ 著書初のエッセイ集『好きよ、トウモロコシ。』(hayaokibooks)が発売中です。(2023年3月)

✏︎ エッセイ記事▼連載「 いつもJ-POPを聴いていた」

▼連載「TBSラジオ、まずはこれから」

▼連載「そのとき、J-POPが流れた」

▼連載「 小さい出会い、長い付き合い」

などなど。

✏︎

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連載『旅するコットン。』高知の旅【3】

連載『旅するコットン。』高知の旅【3】

<第1話のお話はこちら>
<第2話のお話はこちら>

木綿子は自分のくちびるが、ほんの小さく震えているのがわかった。
けれど相手は岡野だ。恐れや焦りのようなものはまるでない。
ただ、少しの緊張と、“岡野が目の前に座っている”ということへのたまらない気持ちで、胸がいっぱいだったのだ。

「というわけでね……、わたしが高知に行って、建ちゃんに食べてもらいたいと思ったものはこれなの」

岡野はふっと細長

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連載『旅するコットン。』高知の旅【2】

連載『旅するコットン。』高知の旅【2】

<前編のお話はこちら>

高知はよく晴れていて、七分袖のカットソーの中はすでに汗ばんでいた。

「1時間半も経ってないなんて」

木綿子にはずいぶん長い時間に感じられたけれど、高知までの飛行時間はそんなものだ。
「下調べに」と空港内のお土産屋さんも見てみた。芋けんぴや鰹節にカツオのフレーク……と、どれも味見してみたいものばかりではあるものの、建士のために持ち帰るべき「いちばんおいしいもの」を空港で

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連載『旅するコットン。』高知の旅【1】

連載『旅するコットン。』高知の旅【1】

旅エッセイの企画『ソファでわたしは旅をする』で、中前結花が担当する連載小説です。今回は第1話。

膝の上で、ビニールのボストンバッグの中身をあれこれと探っている。
「モバイルバッテリー」が荷物の中に入っていると、空港では預かってもらうことができないらしい。

つい数分前、抜けるような空のブルーを窓越しにぼんやりと眺めながら搭乗口まで進んだところで、「お客様……」と呼び出され、わたしは荷物を預けた窓

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「退職」と「出発」を決めました。

「退職」と「出発」を決めました。

この度、4月30日付で休職を頂いていた会社を退職し、『minne』『minneとものづくりと』を正式に離れることとなりました。
お世話になったみなさま、本当にありがとうございました。

2016年に入社し、在籍していた期間は4年と少し。
ですがこれは、わたしにとって、これまでの職場の中でも最も長い期間で、
そして、その期間のすべてを『minne』というサービスを担当して過ごしました。

『minn

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「いいよ」という言葉をわたしは使わない。

「いいよ」という言葉をわたしは使わない。

◆「人に聞きなさい」幼い頃、わたしは自宅でもどこでも、
「トイレに行ってもいい?」
と両親に尋ねていた。
当然「行くな」だなんて言われるはずがないのだけど、
「もちろん、どうぞ」
と言われてから、わたしはタタタッと廊下を駆ける。

勝手な憶測ではあるけれど、これは、うんと小さい頃から
「わからないことがあったら、人に聞きなさい。みんなやさしいから」
というのが、厳しさのカケラもないわが家の、
唯一

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2020年振り返り「#わたしが帯を書いたなら」

2020年振り返り「#わたしが帯を書いたなら」

なぜ「頼まれてもいないのに本の帯を書く」だなんて、こんなに勝手なことをしているのか…については、年始の2020年1月の#わたしが帯を書いたならの冒頭で、まったく説明になっていない御託(ごたく)を書いているので、読み飛ばしてもらっていいような気がします。

そんなわけで、本来は毎月更新していたものでしたが昨年後半は余裕なく…。
すでに2021年も2月ですが、2020年下半期に読んで、おすすめしたいと

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別れるとき、さくらは流れた

別れるとき、さくらは流れた

冬は、リビングに駆け込むと、いつも石油ストーブのムッとするような独特の香りが漂っていていて、わたしはこれが特別に好きだった。
実家で過ごしていた頃の話だ。

母は働きに出てはおらず、1日のほとんどをこのリビングで過ごしていた。
娘のわたしが帰ると、必ず玄関まで迎えに来てくれる。
「寒い!寒い!!」
と慌てて靴を脱ぐわたしに、
「おかえり。お部屋あったかいよ」
といつもリビングの扉を開けて招き入れて

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ちょっと、お暇いただきます。

ちょっと、お暇いただきます。

まだまだ、どうにもすがすがしくはないけれど、
それでもどうにか2021年の幕は開いて、また新しい1年始まって。
今年は、うんといい1年になるといいな。

そんな中、近しいひとにはお伝えしていたのですが、
実はいま、わたしは仕事をしていません。
それは、例年の「お正月休み」ということではもちろんなくて、
職場では「休職」という扱いにしてもらっています。

「復帰」ということを前提にもらっているお休み

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「あれは漫才なのか」とか「この人は作家なのか」とか。

「あれは漫才なのか」とか「この人は作家なのか」とか。

なんだか季節の移り変わりや風情なんてものを、
どうにも肌で感じ辛い2020年だったけれど、
今年もまた「M-1グランプリ」が終わって、ようやく
「そうか、もう今年がいくんだなあ」
と年末の気配をふんわりと感じることができるようになった。

わたしにとっては、1年で1番のたのしみと言っても支障ないほど、
心待ちにしているイベントでもあるから、
今年はともかく、無事に開催されたことが本当に本当に嬉しか

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「東京」とは、さまぁ~ずだった。

「東京」とは、さまぁ~ずだった。

さまぁ~ずの三村さんは、たとえば、
「気づけば、知らないおじさんがすぐ近くに立っていた話」も、
「はじめて見るものを、口に運んでみたときの話」も。
それから、「唐突に奥さんに呼び止められたときの話」だって、
おおよその経緯(いきさつ)を話し終えると、
丁寧に一呼吸置いて、

「すこ〜し、こわいじゃん。わかる?」

と、よく大竹さんの方に視線を送る。

俯き加減のまま大竹さんが、
「わかる。わかりま

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