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残された時間を大切にしていました

妹は亡くなる1年ほど前から、自分に残された時間はそう長くはないことを自覚していました。

今から2年ほど前の時点で、既に乳がん治療に使える抗がん剤を全て使用し、いよいよ転移を抑制する効果の高い治療薬が無くなってしまいました。

藁にもすがる思いでもあったのでしょう。遺伝子検査を受けて、もしもタイプが合えば使える薬がある、というものを調べたりもしましたが、残念ながら不適応でした。

その後はもしタイプが合えば、少しでも延命が出来るとして、胃がんに使われる抗がん剤や、大腸がんに使われる抗がん剤を試したりしていました。しかし、なかなか良い結果を得られることは叶わず、副作用が強いものも頑張りましたが、長く使えるお薬はだんだんなくなってきていました。

「あんまり長くはないと思う」

2人きりになったときに、ぽつりとつぶやいた妹。私は「大丈夫やで。私がいるから。お金の心配もしなくて大丈夫。みんなで援助するから」と言ってあげることしか出来ませんでした。

その頃からは病院に通う回数も増え、体調が良い日の方が珍しい状態になっていきました。
「もうこれが最後かもしれない」と思いながら、

行きたいところに今のうちに行っておこう。
食べたいものは今のうちに食べておこう。
やりたいことは今のうちにやっておこう。
会いたい人には今のうちに会っておこう。
見たいものは今のうちに見ておこう。

年単位での実現が難しくなってきた現実に、妹は本当によく頑張っていたと思います。

1ヶ月、1週間、1日、数時間が、妹にとっては大切な大切な時間でした。

妹は2021年の夏頃に「家族写真撮りたい」と言いました。私の長男がその年明けに成人式だったので、みんなで一緒に記念に撮ろう!となりました。

その時に妹は「自分の遺影も撮るねん」と、明るく言っていました。
「うんうん。毎年撮り直したらいいねん!カメラマンに美人に撮って貰おう!」と、家族写真と一緒に妹のシングルショットも撮ることになりました。

常に現実を冷静に受け止め、前向きに頑張ろうとする姿は、本当に妹らしいな、と思いました。だからこそ、私たちが泣いていてはいけない、といつも反対に励まされていました。

「じゃあ私も遺影、撮っとくわ!」と、母も一緒にシングルショットを撮ることにし、成人式を迎える長男、中学に入学した次男、そして妹、母、とみんなでポートレート撮影大会になりました。

富田林市内にある個人宅のスタジオで、本当に綺麗に撮っていただき、妹もとても気に入ったので、
「毎年遺影を撮りにこようよ!」と話していました。

しかし、この翌年となる昨年秋に急逝してしまった妹。亡くなる前月の10月初旬に「今年も写真撮りに行こうな!」と話していましたが、そこから急激に体調が悪化し、2回目の家族写真の撮影は叶わずとなってしまいました。

家族全員で撮影した写真は通夜・葬儀の会場内のボードに飾らせて頂きました。妹もとても気に入ってくれていた写真です。

遺影を選ぶ際、普段の日常生活の中での笑顔の写真もいいかなと思いましたが、本人が1番気に入った写真にマークを入れていたので、それを使うことにしました。

元気な時は活発な妹でしたが、写真撮影の際には可愛らしいおしとやかな表情を見せてくれました。妹のこの写真は私たち家族にとっても宝物になりました。

亡くなる数ヶ月前からは、身体も常に浮腫みがちで、ずっと「冴えない顔でいややわ…」と気にしていたのですが、本当はこんなお上品な顔も出来るんだよ〜と皆さんに覚えていて欲しいのではないかな?と。

早いもので、来週に四十九日を迎えます。
可愛い妹の一面も、皆様の記憶の中に残していてくだされば幸いです。

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