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女子教育と出生率

女の子が教育を受ける年が1年増えれば、出生率が10%減るという報告があります。

by ユニセフ  
https://www.unicef.or.jp/kodomo/teacher/pdf/fo/fo_54.pdf


 これをどう捉えるか。誰の頭にも一瞬、「じゃあ逆をやれば、日本の少子化は解決なのでは……?」がよぎると思う。noteで少子化対策について考えている記事は、自分が見る限りこのデータに言及しているものはなかった。
 
 ひょっとしたら、きちんとした社会性のある人は、こんな引用をひっぱってこないのだろうか。でも引用元はユニセフだしな。どこぞのマッドサイエンティストが女子教育を抑圧するべく捏造したデータ、とかでは全然ない。
 
 女性への教育を抑制すれば、出生率が上がる可能性が高い。その事実を前に、自分はどうすればいいんだろう。大学院まで行って、そのあと就職したわりには、学生時代に学んだことをほとんど生かしていない。こういう人間は何を言えばいいんだろうな。
 
 これが「医学部を卒業して医師になり、独身時代と同じようにバリバリ働きながら子どもを育てています。家庭の主たる稼ぎ手はわたしで、夫は専業です」とかなら「女性への教育には大きな意味があります、わたしを見て」と言えただろう。でもそうじゃない。
 
 地元で同級生だった女の子は、専門学校を卒業後、二十歳そこそこで結婚し、いま3人の子どもに恵まれている。女の子が2人、男の子が1人。同い年の自分は、最近1人目を出産したばかり。
 
 そもそも大学なんて行かなければ、もっと早く社会に出て、もっと早く結婚し、もっと多くの子どもを授かっていたかもしれない。大学に進んだことを後悔はしていないけど、そういう事実から目を逸らすのもまた、性に合わない。
 
 世の中で働いている人たちは、当然ながら皆だれかの子どもだ。コンビニにレジにいるお兄さんも、美容師のお姉さんも、地下でインフラ工事にいそしむおじさんも、飲食店で勤務するおばちゃんも。
 
 人口が減るということは、この人たちがひとりひとり消えていくのを意味する。人手不足によりコンビニがなくなって買い物が不便になり、美容院の予約がなかなか取れなくなって、停電したときの復旧作業が遅れるようになる(あるいは復旧しなくなる)。
 
 飲食店はロボットによる配膳と無人レジで運営されるようになる。これは未来の話ではなく、既に起こりつつある出来事だ。地元の秋田を見ると、とりわけそれを痛感する。伝統行事だった地域のお祭りも、担い手が減ってきた。
 
 「あなたみたいな女性が進学せずに家庭に入っていれば、そうはならなかったんです」と、頭の中の誰かが苦言を呈する。女子教育と出生率について語ると、わたしは自分を刺すことになる。自分のエゴで進学しました、出生率にはさほど貢献してません。はい。
 
 ここで「わたしが学生の時に『きみと子どもを養うよ』って男性からプロポーズされてたら、私だっていまごろ3人産んでました!」とか言ったら、うっすら男性も巻き込めたりしないだろうか、なんて。
 
 最近では、結婚相談所に入る若い人が増えているらしい。自分がこの業界でバイトをしていた頃よりも、20代前半での入会が増えていると、いろんなところから聞く。この傾向がもっと低年齢化したら、大学や高校の学生時代から婚活する人も出てくるかもね……。
 
 小学生のころ、同級生のアリスちゃんが言っていたことをおもいだす。
「わたしのお母さんは馬鹿だから、最初から結婚して男の人に助けてもらう予定だった。アリスも馬鹿だから、結婚してお金もらう」
 
 いいか悪いかは別にして、小学生のころからそんな人生計画があるんだな、と思った。勉強に向いてないと判断して別の道を選ぶこと自体は悪くない。「もし達成できなかったときにどうするか」のプランBが必要になってくるってだけで。

本を買ったり、勉強したりするのに使っています。最近、買ったのはフーコー『言葉と物』(仏語版)。