和唐那依

色々「わからない」ので勉強中の28歳です。神戸市外国語大学卒業、留学経験アリ。鬱及び発…

和唐那依

色々「わからない」ので勉強中の28歳です。神戸市外国語大学卒業、留学経験アリ。鬱及び発達障害で精神障害者3等級ですが、頑張って生きてます。エッセイと旅日記とたまに小説を書きます。今のところ、四国八十八ヶ所巡りの結願が人生の目標です。

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  • 降霊の箱庭

    note創作大賞2024、ホラー小説部門応募作品。 とある女子生徒たちが「こっくりさん」をしてしまったことにより、中学校は恐怖と混乱に陥れられる。 主人公は果たして、この事件を解決できるのか。

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降霊の箱庭 ~序~

こっくりさん、こっくりさん。 どうぞおいでください。 とある中学校でその日、秘密の儀式が行われていた。 儀式というのは大抵、人目を忍んで開かれるものだ。この小規模…

和唐那依
1か月前
41

【近況】note創作大賞2024応募作、完成!!

どうも、和唐那依です。 ここのところ連日小説を投稿していたので、この文体で書くのは久し振りです。何か新鮮。 今回もpicrew(ピクルー)にて、アイコンを作らせていた…

和唐那依
8日前
35

降霊の箱庭 ~終~

<前話> 一時間が経過して、約束通り空き教室にやって来た神山は、達季たち三人が教室のあちこちを調べているのを見て、目を点にした。 「あれ? どんな大きなことをし…

和唐那依
9日前
21

降霊の箱庭 ~第十三話~

<前話> 地獄もかくやというほど赤く染め上げられた、教室。 窓の赤い手形は、粘着シートに貼り付けられた虫のように、べたべたべたべたと数を増やしていく。五月の明る…

和唐那依
10日前
10

降霊の箱庭 ~第十二話~

<前話> さらに次の日の午後。 空はよく晴れ渡っていた。米野中学校にも等しく、五月の爽やかな風と太陽は降り注いでいた。 傍から見れば、そこに見えない暗雲が立ち込め…

和唐那依
11日前
7

降霊の箱庭 ~第十一話~

<前話> 昨晩、一週間の休校を知らせるメッセージが、全校生徒の連絡網に届いた。 時間に余裕ができたと考えるべきか、一刻の猶予もないと考えるべきか。 ともかく達季…

和唐那依
13日前
13

降霊の箱庭 ~第十話~

<前話> 音楽教師・神山冴雪は、空き教室の前に立った。 今やこの米野中学校にいる者なら誰でも知っている、四階の封鎖された空き教室だ。 「…………」 廊下はシンと静…

和唐那依
2週間前
12

降霊の箱庭 ~第九話~

<前話> ガシャァン!! という大きな音が体育館の方から聞こえてきたのは、達季がちょうど四時間目の授業を受けている時だった。 次いで、大勢のざわめきや悲鳴が、かす…

和唐那依
2週間前
15

降霊の箱庭 ~第八話~

<前話> 「それじゃあ、また」 朝のHRが始まる直前。 紙に書いた連絡先を交換し、昼休みに再び集まる約束をした後で、達季と蓮とまどかは解散した。 達季が何か話そう…

和唐那依
2週間前
9

降霊の箱庭 ~第七話~

<前話> 「え? 分かること、ですか?」 まどかの問い掛けに、達季は必死で頭を回す。 「そうですね……この学校のこっくりさんは、人の願い、つまり呪殺を引き受けられ…

和唐那依
2週間前
10

降霊の箱庭 ~第六話~

<前話> 狭い場所に閉じ込められていた。 冷たい。 鉄製の天井と壁と床に囲まれた空間は、牢獄そのものだ。 暗い。 空気窓こそ開いているが、そこから漏れ来る光はあま…

和唐那依
3週間前
15

降霊の箱庭 ~第五話~

<前話> また夜がやって来た。 ベッドの上で布団にくるまって、鈴木ゆうはじっと耐えていた。 あの日……空き教室でこっくりさんをした日から、一体何日が経ったのだろ…

和唐那依
3週間前
18

降霊の箱庭 ~第四話~

<前話> 「ほんっとに馬鹿みてぇだ」 図書準備室を出てすぐ。 溜息交じりに、割垣蓮は呟いた。 蓮はそもそも面倒臭がりだ。 宿題も委員会活動もきちんとこなすが、サボ…

和唐那依
3週間前
12

降霊の箱庭 ~第三話~

<前話> 喧々囂々の騒ぎが収まった後。 図書準備室内の椅子に、当事者たち三人は座っていた。 「こちらの言い争いに巻き込んでしまって、すまなかったね」 革張りの回転…

和唐那依
4週間前
15

降霊の箱庭 ~第二話~

<前話> ――どうしてこうなったんだっけ。 図書準備室にて。 一並達季は困り果てていた。 「なァおい一年生。お前は俺の味方だよなぁ?」 右方に立つのは、二年生の男…

和唐那依
1か月前
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降霊の箱庭 ~第一話~

<前話> まるで、白い城塞だ。 校舎を見てまず初めに浮かんだのは、そんな感想だった。 職員室は、四階建ての校舎の二階部分、ちょうど生徒玄関を見下ろす位置にあった…

和唐那依
1か月前
19
降霊の箱庭 ~序~

降霊の箱庭 ~序~

こっくりさん、こっくりさん。
どうぞおいでください。

とある中学校でその日、秘密の儀式が行われていた。
儀式というのは大抵、人目を忍んで開かれるものだ。この小規模な儀式も例に漏れず、校舎の最上階・最端にある空き教室にて開かれていた。
おまけに時は放課後。大多数の生徒は部活動に向かい、そうでない生徒も帰路についた後だ。

カキーン、と。
野球部のバッティングの音が、グラウンドの方角から聞こえてくる

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【近況】note創作大賞2024応募作、完成!!

【近況】note創作大賞2024応募作、完成!!

どうも、和唐那依です。
ここのところ連日小説を投稿していたので、この文体で書くのは久し振りです。何か新鮮。

今回もpicrew(ピクルー)にて、アイコンを作らせていただきました。

さて、タイトル通りなのですが。

note創作大賞2024応募作
ホラー小説部門
『降霊の箱庭』
約57,500字
完成しました☆

今のところ、達成感より虚脱感のほうが強い……。
それでも自分の中の「5月中に書き切

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降霊の箱庭 ~終~

降霊の箱庭 ~終~

<前話>

一時間が経過して、約束通り空き教室にやって来た神山は、達季たち三人が教室のあちこちを調べているのを見て、目を点にした。
「あれ? どんな大きなことをしでかすかと思ったら、大掃除? アタシはもっとこう、能力バチバチのバトルみたいなのを期待してたんだけど」
「もう終わりましたよ」
まどかが呆れた調子で言った。
「それより先生も手伝ってください。一並君曰く、この教室のどこかに、大事な手紙が隠

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降霊の箱庭 ~第十三話~

降霊の箱庭 ~第十三話~

<前話>

地獄もかくやというほど赤く染め上げられた、教室。
窓の赤い手形は、粘着シートに貼り付けられた虫のように、べたべたべたべたと数を増やしていく。五月の明るい陽光は、その手形で塗り潰された窓を透過した結果、夕日のように赤くなって教室に差している。そして教室内には、赤い血と肉を晒した異形の「犠牲者」たちが蠢き、こちらに危害を加えようと、儀式を邪魔しようと襲い掛かってくる。
「達季に近付くな!」

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降霊の箱庭 ~第十二話~

降霊の箱庭 ~第十二話~

<前話>

さらに次の日の午後。
空はよく晴れ渡っていた。米野中学校にも等しく、五月の爽やかな風と太陽は降り注いでいた。
傍から見れば、そこに見えない暗雲が立ち込めていることなど全く分からない。せいぜい中学校近くに住む人が、最近静かだな、何かあったのかなと首を傾げる程度だ。
二階西側の職員室以外、人の気配のない敷地内。
その真下、職員玄関の扉が開かれた。

「十三時きっかりだね」
内側から開けたの

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降霊の箱庭 ~第十一話~

降霊の箱庭 ~第十一話~

<前話>

昨晩、一週間の休校を知らせるメッセージが、全校生徒の連絡網に届いた。

時間に余裕ができたと考えるべきか、一刻の猶予もないと考えるべきか。
ともかく達季と蓮とまどかは、校外で集合して話を進めることにした。昨日の朝のうちに連絡先を交換しておいて本当によかった、と達季は思う。
目的は、上島文美と鈴木ゆうから、こっくりさんをした当時の状況を詳しく聞くこと。
文美と達季は、これまた連絡先を交換

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降霊の箱庭 ~第十話~

降霊の箱庭 ~第十話~

<前話>

音楽教師・神山冴雪は、空き教室の前に立った。

今やこの米野中学校にいる者なら誰でも知っている、四階の封鎖された空き教室だ。
「…………」
廊下はシンと静まり返っている。
いや、学校全体にそもそも人の気配が全くない。

最近連続する生徒の不審死。「こっくりさん」を巡る噂。極め付けに衆人環視の中で、生徒指導部の長谷川が惨たらしい死を遂げた。他にもガラス片で怪我をした生徒、過呼吸やパニック

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降霊の箱庭 ~第九話~

降霊の箱庭 ~第九話~

<前話>

ガシャァン!! という大きな音が体育館の方から聞こえてきたのは、達季がちょうど四時間目の授業を受けている時だった。
次いで、大勢のざわめきや悲鳴が、かすかに。
「何だ?」
隣の席の間宮颯志はじめ、音に気付いた何人もが窓の外に目をやる。
授業をしていた英語担当の教師は、様子を確認するため教室から出ていき、しばしの後に深刻そうな表情で戻ってきた。
「皆さん。急ですが、本日の授業は四時間目で

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降霊の箱庭 ~第八話~

降霊の箱庭 ~第八話~

<前話>

「それじゃあ、また」
朝のHRが始まる直前。
紙に書いた連絡先を交換し、昼休みに再び集まる約束をした後で、達季と蓮とまどかは解散した。
達季が何か話そうとしていたのが気になったが、残念ながらそれを聞き出す時間はなかった。
「あまり首を突っ込みすぎるんじゃないよ~」
少し見せた真面目な雰囲気はどこへやら、神山はひらひらと手を振って職員室へ去っていった。相変わらず飄々として、掴みどころのな

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降霊の箱庭 ~第七話~

降霊の箱庭 ~第七話~

<前話>

「え? 分かること、ですか?」
まどかの問い掛けに、達季は必死で頭を回す。
「そうですね……この学校のこっくりさんは、人の願い、つまり呪殺を引き受けられるくらい強力だったとか?」
「そうだね、その通り」
幸いにもまどかの合格をもらえる回答だったようだ。
「三つほど考えられる説があって、一つはまさに一並君が言ったものだよ。だが確率の低い説でもある。
今更語るべくもないが、『こっくりさん』

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降霊の箱庭 ~第六話~

降霊の箱庭 ~第六話~

<前話>

狭い場所に閉じ込められていた。

冷たい。
鉄製の天井と壁と床に囲まれた空間は、牢獄そのものだ。
暗い。
空気窓こそ開いているが、そこから漏れ来る光はあまりに心許ない。
身じろぎすると、一緒に閉じ込められたバケツや箒が、がたんと背後の壁に当たった。

――出して!

空気窓に口を付けるようにして、叫ぶ。

――出してよ!

扉に体当たりするが、踏ん張りの利かないスペースでは大した力も出

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降霊の箱庭 ~第五話~

降霊の箱庭 ~第五話~

<前話>

また夜がやって来た。

ベッドの上で布団にくるまって、鈴木ゆうはじっと耐えていた。

あの日……空き教室でこっくりさんをした日から、一体何日が経ったのだろう。学校に行かず家に引き籠りっぱなしで、日付や曜日感覚はとうに失われていた。
いやそもそも、そんなことを気にする余裕など、今のゆうには全くなかった。
二つの「恐怖」に苛まれていたからだ。

一つは、非難されるかもしれない恐怖。
奈々絵

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降霊の箱庭 ~第四話~

降霊の箱庭 ~第四話~

<前話>

「ほんっとに馬鹿みてぇだ」
図書準備室を出てすぐ。
溜息交じりに、割垣蓮は呟いた。

蓮はそもそも面倒臭がりだ。
宿題も委員会活動もきちんとこなすが、サボれるものならいくらだってサボりたい。そうしないのは、教師に叱られるという上位互換の面倒を避けるために他ならない。
服装や髪型は、この面倒な日常に対するせめてもの抵抗だった。
最初は当然、叱られた。生徒指導部室に呼び出され、完全に不良生

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降霊の箱庭 ~第三話~

降霊の箱庭 ~第三話~

<前話>

喧々囂々の騒ぎが収まった後。
図書準備室内の椅子に、当事者たち三人は座っていた。

「こちらの言い争いに巻き込んでしまって、すまなかったね」
革張りの回転椅子に腰掛けた三年生の女子生徒は、倉闇まどかと名乗った。
「とはいえ、ええと、一並君。『よく分かりません』という回答はいただけないね。質問に対して、深く考えもせずに『分かりません』と言うのは逃げだ。もっと自分の意見をしっかり持ちたまえ

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降霊の箱庭 ~第二話~

降霊の箱庭 ~第二話~

<前話>

――どうしてこうなったんだっけ。

図書準備室にて。
一並達季は困り果てていた。

「なァおい一年生。お前は俺の味方だよなぁ?」
右方に立つのは、二年生の男子生徒。
既に身長は百七十センチに達していると思われ、その証拠として今も達季を威圧するように見下ろしてくる。
着崩した制服、オールバック気味に流した髪。達季の苦手な、不良またはヤンキーと呼ばれる部類の人間だった。

「一年生君は私の

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降霊の箱庭 ~第一話~

降霊の箱庭 ~第一話~

<前話>

まるで、白い城塞だ。
校舎を見てまず初めに浮かんだのは、そんな感想だった。

職員室は、四階建ての校舎の二階部分、ちょうど生徒玄関を見下ろす位置にあった。この中学校の校舎全体が城塞ならば、この職員室はさしずめ物見櫓といったところか。
学年主任とクラス担任に挨拶を済ませ、母親が帰っていった後。
「じゃあ、行こうか」
三十代くらいの女性担任に促され、職員室から教室に向かうことになった。

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