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150円のたい焼きで心が潤った話

平日の仕事の合間に急いで行くスーパーとは違って、たっぷりと時間がある休日に行くスーパーが好きだ。のんびり隅々まで見れるから。

冷蔵庫の中身も少なくなってきたし、そろそろ行くかと気合いを入れて部屋着兼パジャマから着替える。
天気もいいし、この日はいつも行かないスーパーへ行ってみることに決めた。

ここに来るのは2度目で、1度目は初詣の帰りに行ったことがある。
売っていたドーナツが実はずっと気になっていたのだ。

よし、今日はドーナツを買おう。
自転車を漕ぎながらそんなことを考える。

オールドファッション系のハードなドーナツが特に好きだ

駅から少し離れたところにあるので、お客さんは少ないと思っていたのだがおじいちゃんおばあちゃんが異常に多い。
駅前のスーパーでは若い家族ばかり見るので『この街は若者ばかりだなぁ』と思っていたが、このスーパーに集まっていたのか。
おじいちゃんおばあちゃんが多いからなのか、はたまた土日だからなのか、急いでいる人がいなくて店内の流れがゆっくりな気がする。いいスーパーだ。

焼き芋の香りに惹かれつつも、店内をぐるりと回る。この日はひき肉が安く手に入った。グラム99円の牛豚合い挽きだった。
野菜もなんとなく安いものを買い、お目当てのスイーツコーナーに来た。

プリン、ケーキ、シュークリーム…。どれも美味しそうだ。

でも今日はこれじゃない。
少し離れたパンコーナーの近くにドーナツがあった。こっちこっち。
じっとドーナツを見つめながら考えてみると、何だか急にドーナツでもないような気がしてきた。

正直に言おう、1つ250円という価格に怯んだのだ。

フリーランスになってから、お金を使うことを渋るようになってしまった。
欲しかったキーボードだって食器だって買う時は買うのだけれど、自分のためだけに使う食費にはどうも渋ってしまう。
でもこういうおやつが心を救ってくれるし、美味しいことは幸せを運んでくるということもわかっているのだけれど…。ああ治したい。

このまま何もおやつを買わないのはなんだか寂しいので、とりあえずファミリーパックの抹茶味パルムだけを手に取る。アイスは賞味期限を気にしなくて済むし、今日食べなくたっていいのだ。
ファミリーパックは小さいからカロリーの罪悪感もない。
肉と野菜とパルムだけを買って外に出た。


すると、店のドア付近でたい焼きを焼いているおじさんがいる…。
しかも1つ150円だ。
これだ。今日のおやつはたい焼きに決まりだ。

ドーナツに対して急にそっぽを向いたのも、きっとたい焼きセンサーが発動していたからだったんだ。
そう都合よく解釈することにする。その方が生きやすいし…。

きらめいて見えたたい焼き屋さん

「あんこ1つください!」
おじさんは慣れた手つきで出来立てのたい焼きを、取っ手の無い紙袋に入れて渡してくれた。

袋にはパルムがあるので、ここに入れちゃマズいと思い財布の入っているショルダーバッグにたい焼きを乗せて帰る。

自転車を漕いでいる時も、たい焼きの温かさがお腹の辺りに伝わってきてなんだか心地よい気分。

家に着いたのは丁度12時で、お昼ご飯を先に食べるか迷ったけれどたい焼きを先に食べることにした。リベイクという方法もあるらしいが、やっぱり温かいうちに食べたいのである。

ケトルで湯を沸かし、ルピシアの福袋に入っていた緑茶を入れる。
たい焼きをお気に入りの木の器にうつしてあげる。
こたつのスイッチON。たい焼きをお腹に迎える準備は万端だ!

もっちりタイプのたい焼きだった

しっぽまで餡子がたっぷり入っていて、生地はもっちりとしていてとってもおいしかった。

そもそもたい焼きっていう名前が縁起がいい。
見た目も可愛らしい。おやつなのに鯛の形をしているなんて。
中身を変えればたくさんアレンジができるし、生地だって変えることも出来る。そういえばクロワッサンたい焼きなんてものも見たことがある気がする。お餅の白いたい焼きなんかもあったような…。
たい焼きというのは懐が深い素晴らしい食べ物なのだ。

急にたい焼きを愛おしく思った1日だった。


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