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大樹と巡る 櫻坂46「新せ界」

 「そこには、まるで物語を紐解いているかのようなエモーショナルな体験がある。」と公式サイトで紹介されている櫻坂46『新せ界』。

 ただの美術展示にとどまらずクリエィティブのストリー性に重きが置かれた展示会となっていて、櫻坂のクリエイティブにどっぷりと没入できる非日常空間となっています。ぜひ自分の五感と感性を解放して新せ界へトリップしてほしい。自分の目で、耳で、「新せ界」を体験することに大きな意味があると思います。


 ただ、元地方民として都合がつかずに足を運べない方の気持ちも分かります。少しでも多くの人に新せ界の雰囲気が伝わるように備忘録を兼ねてこの記事を書き残していきます。
 まだ展示期間は続きますので、展示物全てについて事細かにネタバレしていくつもりはありません。展示のされ方や、印象に残った展示内容について言及していきたいと思っています。行ったことがあるという方には、記憶の補完や心情を思い起こすきっかけにしてもらえればと思います。もう一度行ってみようかなと思ってくれる人がいたらこれ以上嬉しいことはありません。

 うっかりここまで読んでしまったネタバレ拒否派の方は、ここでUターンをお願いします。

 展示内部の様子については、公式サイトでも一部のヴィジュアルが公開されています。足を運んだことのない方は以下のページと並行しながら読んでいただければイメージが湧きやすいと思います。
 序章、1章、6章、7章は撮影可能ゾーンなので、撮影した写真を載せていきたいと思います。

 それでは参りましょう。


新せ界 ≒ 大樹

 まず新せ界全体の構成として櫻坂46の過去、現在、未来を、″大樹″というモチーフを通して辿っていく展示になっています。時間軸を辿るように根から枝の先へと進んでいく空間演出になっているのです。
・序章:根の張る暗い地中
・1章:強い光の当たる地表
・2章:太い幹
・3章:力強く伸びていく枝
・4章:枝の上からの眺め
・5章:大樹の全体像
・6章、7章:これから枝が伸びていく先の光
 以上を想起させる展示のされ方をしているという解釈を基に、各章の展示について触れていきたいと思います。

序章 幕開け いびつで神聖な時間

 新せ界の一歩目は、真っ暗闇から始まります。順路を進むとぼんやり浮かび上がるように出迎えてくれる「鳥居坂46」のロゴ。

 うっすらと白い幕を挟んだ向こう側に、欅坂46時代のジャケットアートワークなどがモニターに映し出されています。イベントやMVの小道具など印象的かつ断片的な写真もあり、全部霞がかったような見え方をしています。
 この展示の形については、渋谷川がイメージされていることが一部メディアのレポートに記載されています。始まりの地そのものが再現されているのです。

『サイレントマジョリティー』Type-B 裏面

 序章の最後にはカーテン状になったスクリーンに櫻坂へ改名発表した映像が流れます。渋谷の大型スクリーンでサプライズ発表されたあの映像です。何かを掴むように水中から出て、もう一度開かれる手。指の間から零れ落ちていった過去に別れを告げ、新しい未来を作るためにまた手が開かれたところで映像は終わるのです。

 この序章という空間自体が、大きな根の張る空間と捉えることができます。新せ界における”大樹”は白い大きな木です。渋谷川を模している白い幕に覆われた展示自体が、大きな根と解釈できます。
 入ってすぐの真っ暗闇は日の届かない地中であり、薄い白い幕が張られた展示そのものが大きな根、最後の映像の水面≒地面を暗示しています。それをかき分けて進んだ先の”地表”で私たちは櫻坂と出会うのです。

 後述する「3章 アートワーク」では、櫻坂に入ってからのシングルCDのアートワークについて展示があります。そこではCDの実物も展示されていますが、この序章で展示されているものに実体はなく、モニターに映し出されているものです。
  この章だけでなく、展示全体を通して”根元”にある欅坂時代の映像やアートワークは、決して見やすいとは言えない置かれ方をされています。徹底して見づらいのです。話題になっている欅坂時代の幻のジャケ写等も青写真に過ぎず、本来どんな色合いであったかなどを私たちが知る術はありません。
 新せ界において欅坂という存在はあくまで"根元"です。これらの展示は貴重なものであり見どころの一つではありますが、この記事では本展示会のメインである櫻坂46の展示について主に触れ、欅坂46の展示に言及するのは最低限に留めようと思います。
  同じ理由で7thシングル『承認欲求』告知関連のゲリラ展示についてもこの記事では取り扱いません。


1章 衣装 存在を支えるもの

 この1章ではMV衣装から制服、歌番組衣装まで幅広い種類の櫻坂の衣装10体が展示されています。特筆すべきは一体一体に強いスポットライトが当たっている事です。乃木坂46の「だいたいぜんぶ展」でもそうだったように、衣装展などで衣装が展示される場合、細部まで観察できるように影ができない照らされ方をしていることが多い印象があります。対して新せ界では一方向から強い光が当たることで深い影が生まれており、強烈なスポットライトに晒されているという印象まで受けます。

 1章では展示について以下の説明があります。

アイドルである櫻坂46にとって「衣装」は彼女たちのイメージを形作る重要な要素の一つだ。(中略)その時々の彼女たちの活動を象徴しているもの、それが衣装と言ってよいだろう。(中略)衣装は彼女たちの存在を支えている重要なアイテムだ。

第1章 衣装 存在を支えるもの 説明文より

 強すぎるくらいのスポットライトは改名当初から順風満帆とは言えなかった櫻坂の状況を反映したものなのだと思います。光が当たるところには影も生まれます。芽が出たばかりの木にとって、その光はなおさら強く感じられるものだったでしょう。改名してまでスポットライトの下に立つことを選んだ彼女たちと共に戦ってきた衣装たちなのです。

 真正面からの綺麗な写真は図録に収められているので、思う存分いろんな角度から眺めておきましょう。すぐ後ろにはマジックミラーが存在しており、反射で衣装の背後部分がどうなっているか見ることが出来ます。

 手前に並ぶ衣装については何点かデザイン画も展示されています。衣装に込められた意図などが読み取れる資料です。
 また9/16より10体の衣装が総入れ替えになりました。(図録に収められている衣装の数から、途中で展示内容が入れ替わること自体は予想できましたが、もう1、2回くらいは衣装替えがありそう…?)

 奥の壁には敷き詰めるように欅坂時代の衣装が掛けられています。櫻坂衣装に当たるスポットライトが消え、マジックミラーの奥の照明が点灯することにより、欅坂時代の衣装を視認することが出来ます。欅坂衣装が照らされている時間は短く、櫻坂衣装と欅坂衣装に同時に光が当たることはありません。照明自体もスポットライトではなく全体を照らすような白い光となってます。


2章 映像とダンス 記憶の残像レイヤー

  2章の空間の中心には計35台のモニターにコラージュされた映像が流れ続ける大きなモニュメントがあります。大きめの液晶2台でのMV映像と、大小様々な液晶約10台で振り入れリハの映像が流れる面があり、MV映像の面と振り入れリハ映像の面が交互に配置された全6面で構成されています。
 振り入れリハの楽曲は1-6thの表題曲とアルバムリード曲の摩擦係数で、2分弱の映像がインターバルを挟んで繰り返し流れます。一つの面の約10台にはそれぞれの画面でそれぞれの楽曲の振り入れが流れていますが、約10台の画面全てで一つの映像が流れるようなシーンもあり、その際には3期生も登場しています。この差し込まれるメンバーフォーカス映像は更新されているようで、会期序盤にはなかったドローン旋回中の振り入れのシーンを踊るメンバーが会期後半に確認できました。
 さて、このモニュメントの前に立って一番最初に感じるのは、目が!足りたない!!ということです。それもそのはず、単純計算で2分×計35台、1時間以上分の動画が一度に流れているのです。

 2章の展示についての説明は以下の通りです。

ミュージックビデオ、そして振り付けは、瞬間瞬間で形を変えていく時間のメディアだ。しかし、そのような動的なものでも、鑑賞者の記憶の中で他者と共有できるような強く固定的なイメージを残す。あの場面、あの表情、あの身体の動き。いくつもの残像がレイヤー状に折り重なり、櫻坂46の楽曲像、メンバーの人間像、さらにはグループのアイデンティティさえも形作っていく。(後略)

第2章 映像とダンス 記憶の残像レイヤー 説明文より

 つまりこの動画の柱そのものが瞬間瞬間で形を変えていく時間のメディアを体現しており、レイヤー状に折り重なる残像となっていると捉えることができます。動画の情報量に圧倒されてなんぼの展示というわけです。
 この映像群の手前に置かれているTAKAHIRO先生のメモがほぼ解読できないのもまさに残像なのでしょう。読めなくてなんぼの展示というわけです(?)。
 一つ一つの映像を見ていくと、振り入れ段階からMV撮影や歌番組に至るまでに振り付けか変わっているところがあることが見てとれます。私たちがパフォーマンスを見るに至るまでにどれだけの試行錯誤と練習量があるのか、想像せずにはいられません。

 この大きなモニュメントは”大樹”の幹を表しています。何層にも折り重なるレイヤーという概念は、年輪として考えることができます。振り入れやレッスンを繰り返していくことで、幹はどんどんと大きく太くなり、グループや個人の力強さの柱となっていくのです。

 この映像群に関しては膨大な情報量が与えられるなかで、誰と行くかによって見えてくるものが変わってきます。推しメンや好きな楽曲、お気に入りポイントが違うとまるで目に入ってくる場面が違うので、色々なバックボーンの人と行ってみると新しい発見があるかもしれません。

 映像群モニュメントの周囲の壁には、MVに関する資料が掲示されています。どのMVも緻密な設定等が込められていることが分かる資料で、もう一度MVを見返そうと思わせる資料ばかりです。天井まで届くような高さまで張られている資料や、動画資料、メイキング映像、監督のスケッチや企画書まで掲示物資料も様々です。
 このあたりは図録に掲載されているので、会期終了後でも図録等のグッズがネット購入できるようになるといいのですが……

 個人的に特に印象に残っているのは『Nobody’s fault』のMV企画資料です。

櫻坂46の誕生を、最大限のカタルシスを持って伝える。
今まで縁の下で支えていたメンバー達が台頭し、こんなすごいやつらが後ろに居たんだということを痛感させる構造にする。(後略)

「Nobody’s fault」ミュージックビデオ企画書 より

 なんというか、今の櫻坂がまさにそうだよなって。センターというポジションに限らず「こんなすごいやつら」ばっかりじゃないですか。当時はそうなってほしいという希望的な意味合いも込められていたと思いますが、約3年かけて本当に「こんなすごいやつら」になってくれたメンバー達。当時からそれほどメンバーに期待してくれていた人達がいたこと、その期待にメンバーたちが見事に応えていることに胸が熱くなりました。
 大好きな「こんなすごいやつら」のこと、もっと一人でも多くの人に知ってもらいたいなって改めて思いました。7thも盛り上がりたいです。

 9/16より『Start over!』と『静寂の暴力』のMV企画資料が追加になっていますが、これに伴い会場の順路も映像群を中心とした右回りから左回りに変更になっています。
 スタオバ資料はMVのテーマや一人ひとりに当てられている設定の資料などが掲示されており、センターの夏鈴ちゃん以外にも丁寧にキャラ付けがされていることが分かります。その上でどのくらいそのキャラに準ずるかはメンバーに任せるという趣旨の記載もあり、メンバーの意向も尊重されていることが伺えます。
 静寂資料では場面の流れが記載された資料が掲示されていますが、ラストシーンは未定と書かれていたのが印象的でした。実際のMVではあの円陣が採用されていることを鑑みると、綿密な準備がされつつ制作現場では生きた制作が行われていることが分かります。


3章 アートワーク 未来への羅針盤

 3章アートワークで一番に目に飛び込んでくるのは空間の対角線を結ぶように置かれた螺旋状のトンネルです。内側の面には『As you know?』のネガポジ反転の写真がいっぱいに、外側の面では各シングルのタイプAのヴィジュアルを迫力のあるサイズで見ることができます。

 この螺旋状のトンネルそのものが力強く伸びていく枝と捉えることができます。トンネルがこの章の入口から出口へ向かう配置になっていることや、螺旋が右巻きであることから推進力を持って未来に向かっていることが表現されています。
 枝の外側は世間であるため世に出たジャケットそのままの色味ですが、内側はネガポジ反転された展示物になっています。iPhoneの設定をネガポジ反転させることで本来の色味でその写真たちを見ることができる仕掛けです。

 3章については以下の説明があります。

櫻坂46にとって、CDジャケットのアートワークは、未来へ向かうための羅針盤のような存在だ。楽曲をビジュアルとしてパッケージングするためのものにとどまらず、グループがこの先、どのようなコンセプトで活動していくのか、それを世の中にアピールするための具体的なイメージでもある。(後略)

3章 アートワーク 未来への羅針盤 説明文より

 説明文の通り、どの楽曲のジャケットデザインにも楽曲の世界観のみならず、グループにとってそのシングルがどういう意味を持つのか、あるいは持たせるのかという意味合いまで込められたコンセプトシートを読むことができます。
 1stから4thでは統一のあるビジュアルと構想でグループとしての密度を上げ、5th桜月では2nd seasonと銘打ち新しい表現に挑戦していることが読み取れます。そして、それまでは「櫻坂46をどう見せるか」という視点だったものから、6thでは日本文化の一端を担う存在として世界へ「櫻坂46がどう見せていくのか」という視野を大きく広げたコンセプトになっています。
 そのコンセプトを掲げた『Start over!』を引っ提げて、海外ステージデビューを果たしたのですから、まさにアートワークが羅針盤として活動の支えになっていることが分かります。ジャケットアートワークの時点から活動全体を見据えた制作になっていることにより、メンバーが事あるごとに口にする「作品を届ける」「楽曲を届ける」という姿勢が全くぶれないのかも知れません。

 コンセプトシートのほかに、実際の完成品であるCDや、正方形にトリミングされる前のジャケット写真も展示されています。なかでも未公開写真として、ジャケット撮影時の各シングルのセンターのソロカット写真があるのですが、それぞれに気迫や覚悟が感じられる表情となっていて、とても感慨深い一枚になっています。このカットのポストカード、めちゃくちゃほしい。

 『As you know?』の展示では、CM映像の完全版も流れています。すぐ下には構成ラフもあり、動画とリンクしているのですが、照らし合わせながら見ているとラフと小林さんのナレーションがラフ案と少しずつ異なっていることが分かります。ラフで過去形だった台詞が現在進行形になっていたり、「君は君たちを抱き寄せて」といった台詞が追加されていたり、より前向きに温かみのあるナレーションに変わっていることが分かります。


4章 彼女らの痕跡 存在と不在の狭間

5章 大樹

 4-5章の間には隔たりがなく、4章の空間の最奥に5章の大樹のオブジェが大きく立っている空間構成になっています。
 4章の入り口には『思ったよりも寂しくない』のMVで天ちゃんが使用したビデオカメラが展示されています。そのほかに3台の小さな液晶画面が離れた位置に置かれており、1台が思ったよりも寂しくないMV撮影時の映像、残る2台がJAPAN EXPOでパリに行った際の観光時の映像が流れています。
 どの映像もメンバー同士で撮り合っているだけあって、普段よりも素に近い表情が見られます。一人称のようなアングルなこともあり、まるで自分の記憶であるかのような親近感さえ覚える映像です。まさに存在と不在の狭間、オタクがよく言う″存在しない記憶″がそこに確かに存在しているのです。
 流れ弾MVの中の絵画の一部も展示されており、作品の大きさから迫力を感じることができます。
 天井からはMV撮影地や撮影小道具、メンバーの足元などの写真がタペストリーになって20枚以上も吊り下げられています。ここではメンバーにフォーカスされた写真は比較的少なく、メンバーが映っていても後ろ姿や引きの写真がほとんどです。
 (この部分、展示会開始当初からタペストリーの配置?高さ?が変わっているような気がしています。最初に入った時にメモしていなかったので不確かですが……)

 この章に置かれているものは映像もタペストリーも展示されている向きが全て違います。タペストリーを見上げながら、それら一枚一枚が生い茂る葉であるように感じたのです。小さい頃、木登りして枝の上から木を見上げた時のような感覚です。
 つまり4-5章が交わる空間のなかで、4章では枝先から大樹の葉を眺め、同時に5章のオブジェで大樹を俯瞰できる作りになっているのです。マクロな視点とミクロな視点が同時に存在している空間と言えます。

 4-5章の最後には、「Layout by KARIN」と記されてある藤吉夏鈴レイアウトのスナップ写真の展示があり、メンバーどうしで撮ったのであろうアップの写真が並んでいます。柔らかい表情が印象的な一枚一枚を注目してみたあとに、少し離れて眺めてみると直線的な並びではなく、流線を感じる並びになっているのが分かります。まるでそばにある大樹の枝がそのまま伸びたような印象です。
 そう捉えると、幹に近い右端の写真が卒業生の渡邉理佐であること、枝先となる一番左端の写真が3期生の村山美羽であることに、夏鈴ちゃんらしい思いの込め方を感じます。


6章 ヴィジョン 言葉の光

 「将来、櫻坂46がどのような存在になっていてほしいか?もしくは自分が何を実現したいか?」というテーマで敢行されたインタビューから抜粋された言葉がメンバーごとに天井から吊り下げられています。
 個人的なことからグループ全体のことまで、ヴィジョンのスケールはメンバーごとにまるで違います。具体的で身近な目標を立てるメンバーもいれば、抽象的でロマンチックな夢を語るメンバーもいます。本当にみんなまるで違います。私はそこがどうしようもなく櫻坂らしいと感じました。
 桜の花は、向日葵のように同じ向きで咲くわけではありません。思い思いの向きに咲いた花が一本の木全体で咲き誇る姿を、人々は満開と呼んでいます。メンバーそれぞれが自分のヴィジョンを持ち、一つの木の下で自分の咲かせようと切磋琢磨することで、グループ全体の力に繋げていくのが櫻坂らしい前への進み方なのではないでしょうか。

 この章で流れているBGMの中には、インタビュー中の声が逆再生(もしくはなにかしらの加工が)された音混ざっています。言葉を聞き取ることは難しいですが、誰の声か分かる瞬間が度々あります。保乃ちゃん、まつりちゃん、綺良ちゃんの声は耳に入ってきやすいです。

 私の推しメンは守屋麗奈ちゃんなので(唐突)、僭越ながら彼女の言葉を紹介させてください。


 


 えー……

 もう…そういうところ…
 

 本当に好きなんですけど。
 

 普段あれだけヘラヘラしてておバカでポンコツでチョコレート狂いでパン好きでMOCOちゃんに塩対応される飼い主さんで、実はあんまり心の内を明かすタイプではないけれど、熱いものをちゃんと胸に抱いている麗奈ちゃんがね、好きなんですよね。このビジョンが実現される日に私も立ち会いたい。必ず、必ずみんなで叶えよう。

 麗奈ちゃんだけでなく、どのメンバーの言葉も、推している人はこの子のこういうところが好きなんだろうなと思わせる言葉ばかりでした。それらに飛び込むように光を抜けて、最後の7章の「新せ界」にたどり着きます。


7章 新せ界

 新せ界は一面真っ白な部屋になっています。まるで光そのものの中にいるような感覚になります。

 「せ」の部分が空白になった新せ界のロゴが並んていて、訪れたメンバーはその「せ」と自分の名前を書き込んでいます。
 何色にでも染まれるとの意味が込められた白が櫻坂のグループカラーですが、もう彼女たちには色すらなくとも自由に自分を表現することができます。黒いペン一本で、枠からはみ出るような「せ」を書くメンバーもいれば凝った「せ」を書くメンバーもいます。名前も縦書きと横書きそれぞれいて、文字の大きさも様々。イラストで装飾をつけるメンバーもいれば、先日の新せ界YouTube生中継の時に書き足したと思われるコメントもありました。一つとして同じものがない自由と可能性に溢れた「新せ界」が並びます。
 どこに誰が書くかも決まっていないらしく1,2,3期が入り混じっている並びも今の櫻坂らしさを表しているように感じます。文字がやたらデカい先輩に対抗しにいっているような3期生さえいて、一番の後輩たちがそういう風に伸び伸び書き込むことができるグループの雰囲気の良さが滲みでています。


 こうして光のない一歩目から始まった大樹を辿る旅は、真っ白な光に包まれて終わりを迎えます。


 未来への展望を描いた言葉に胸打たれたままグッズコーナーに向かうことになるので、買うつもりのなかったグッズまで気づいたらかごに入ってたりするんです。もうこれは仕方ない。だってポスターとポストカードとアクキーとマグネットが全部違うカットだって聞いてないし。どれか一つとか選べないくらい全部ビジュがいいし。
 大樹を辿る旅のお土産を買うまでが新せ界です。


 さて長々と書いてきてしまいましたが、ここまでお付き合いいただいた皆様、ありがとうございました。
 欅坂時代の展示への感想が真っ先にSNSに上がっていた印象のある新せ界という展示会ですが、メイン展示である櫻坂の展示の工夫のされ方や熱量の籠った雰囲気がこの記事で伝わっていれば幸いです。

 愛のあるクリエイターに恵まれ、愛のある制作が行われていることが新せ界を通して実感できたと同時に、私たちBuddiesも最大限の愛をもって櫻坂46のことを応援していきたいなと改めて思いました。


 最後になりましたが、『桜月』ジャケットのコンセプトシートの一節を引用して、この記事を締めたいと思います。

答えのないものは人を豊かにしてくれます
(中略)
耳で 視覚で 五感で
目に見えない
脳が処理しきれない情報で
理屈じゃないものに出会ってしまう事がある
 
それが 感動だとおもう
なんで感動したのか 答えはない
自分の経験の積み重ねの上に突如現れた 謎の感情
 
ただ 出会ってしまった という事

『桜月』ジャケット コンセプトシートより


 私たちはただ 櫻坂に出会ってしまったのです。


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