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「働くために生まれたんじゃない」34歳で見つけたコミックエッセイという自己表現

「そのひとが、ただそのひとらしく生きているだけで、励まされることがある」そんな感情を抱かせてくれるコミックエッセイに私が出会ったのは約1年半前。

フラれたことも、つい夜食にラーメン食べちゃうのも、失敗も、成功も、赤裸々にコミックエッセイにして発信する「みくるべみえ」さん。

今回は、ダ・ヴィンチWebでも連載経験のあるみえさんの、コミックエッセイへの想いや、フリーター歴13年から今に至るまでのエピソードをたっぷりお伺いしました。

■みくるべみえさん
「遊びファーストな人生」をモットーにコミックエッセイ、ブログでの発信を中心に活動。フリーター歴13年を経て34歳からフリーランスへ転身。ソロ活、サウナ、お風呂巡りがマイブーム。
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激動の3ヶ月

——みえさんはさまざまなお仕事やSNSでの発信をされていますが、どういった1日のスケジュールなのでしょうか?
午前中は主にコミックエッセイを描いています。お昼からSHElikesのキャリアプランナー(※)のお仕事をして、夕方からはフリータイムという流れが多いです。フリータイムにはブログの執筆も行っています!

※SHElikesの体験レッスン参加者とのカウンセリングを担当(疑問・不安の解消、理想を叶えるプランの組み立て等)

——SNSでも「フリーター歴13年」を公言されていますよね
そうなんです。新卒で入った会社を10ヶ月で辞めてからは、大学事務やECサイトの倉庫でアルバイトをしていました。

——同時に「34歳でフリーランスへ転身」も公言されていますが、その間どういった環境の変化があったのでしょうか
2020年の9月にSHElikesに入会しました。当時、遠距離でお付き合いしている方がいて、いずれ一緒に住めるように、在宅でできる仕事スキルを学びたいと思っていたんです。

ちょうどコロナが流行しだした時期で、もともと悪かったアルバイト先の雰囲気もさらに悪化してしまい、働き続けるのは無理だなとも思っていた頃でした。

社内イベントで景品としてもらったバッグを愛用中

——そのタイミングで新たなバイト先を探すのではなく、働き方そのものを見直すことになったんですね
はい。ただ、言ってしまえば「彼と暮らすために」が一番の理由だったわけなんですが、不穏な空気が立ち込めまして。

彼に「スキルを身につけて、どこでも働けるようにがんばるよ。今の仕事も辞める!」と報告したら、全然喜んでくれなくて。

「地元で就職すれば……?」なんて言われる始末で。そんな彼の反応に不安を感じていたら、年末にフラれてしまったんです……。

——変わろう!と思った矢先に大事件が……。その一方で、自分のスキルでのお仕事初受注もこの頃だったとか
全て、SHElikes入会後3ヶ月で起きたことです(笑)。とにかく落ち込んで、何も手につかなくなったときに支えとなってくれたのが、同じSHElikes受講生の方やインスタ投稿を見て励ましてくれる人たちの存在でした。

とにかく何か動き出さなきゃと「ココナラ」でイラストのアイコン制作案件を出品してみました。すると、応援してくれる方々から1ヶ月で16件もの依頼をいただくことに繋がりました。

——フリーター時代と比較して、収入的にも変化はありましたか?
ありました!正社員時代も含めて今が一番収入が安定しています。……と言っても、SNSでもよく発信していますがフリーター時代の月収は8万円でしたからね……っ!


実は、絵を描くことは好きじゃない

生"みくるべ"が目の前で生まれてゆく……!

——みえさん=コミックエッセイスト、という印象が強いかと思うのですが、お仕事の中心はやはりイラスト関連ですか?
そう言ってくださる方が多いんですけど、実はコミックエッセイは趣味のひとつで収益化はほとんどできていません。現在のメインのお仕事はSHElikesのキャリアプランナーですね。

とはいえ、インスタアカウントはどんどん大きくしていきたいので週2ペースでコミックエッセイを投稿できるように頑張っています!

——コミックエッセイとして描くネタやエピソードの取捨選択はどのようにされているのでしょうか
私は本当に家で過ごすことが好きなので、生活の中に大きなイベントが起こらないんですよね。なので最近はソロ活の話が多いかもしれません。あとは、何かモヤッとしたことがあったときに「みんなはどう思うかな?」と問いかけてみることも多いですね。

——1投稿分のコミックエッセイ完成までにどのくらい時間がかかるものですか?
ひとつの作業をずっと続けることが苦手で、1日30分程度しか描かないんです。2〜4日で仕上げるので、大体1本描き上げるのに2〜3時間ほど使ってますかね。

私、プロットやネームといった下書きはせずに、思ったまま直接描いていくんですよ。たとえば、サウナに行ったのなら「サウナについて描こ〜」と、思いつくままにGペンで直接ペン入れからやっちゃう、みたいな。

犬田のお気に入りキャラ・マッスルみくるべ

——なんと!私の場合「これ書こう!」と思い立ってnoteを書き始めたものの、途中で何が言いたいのか迷子になってボツになる、という経験が多いのですが……。
描き始めていた内容がボツになったことは……ないですね。私の場合、「これについて描こう」と思ったときにある程度「落とし方」まで見えているんです。落とし方さえ見えていれば、あとは間のストーリーを繋いでいくだけなので、ボツになりません。

ただ、落とし方が弱いかもと思うことはあるので、そういったときは「おしまい」「そんだけ」と最後に書いています。探してみてください!(笑)

あ、でもおっしゃるとおり、私もnoteはよくボツにしますよ。書いている途中で「これ、つまんないな」って。

——それは、みえさんの中で「文字」と「絵」で何か思考回路に違いがあるからでしょうか
単純に、漫画を描くのって大変で疲れるんですよ。だから「描くことに費やしたこの時間を無駄に(=ボツに)したくない!」という想いが強いんだと思います(笑)。

そもそもなんですけど、絵を描くの好きじゃないんです。

——えっ
「イラスト上手だね!」って言っていただけることが多くてうれしいんですけど、一生懸命描いて、あの目が「点」の絵なんですよ(笑)。

漫画で表現しなくて済むのであれば、描きたくないほどに好きじゃない(笑)。だって大変だから……!

私が好きなのは、あくまで「発信」なんですよね。
これを発信するには文章のほうが適しているなと思えばブログで投稿しますし、あくまでこれは絵のほうがわかりやすいと思う内容を絵にして発信しているだけです。

——なるほど!みえさんにとって絵で表現することは「好き」の延長にあるものではなく、手段のひとつなんですね
そうですそうです。でも、そもそも漫画を描くきっかけは大昔に同人活動にハマっていたからですね。「美少女戦士セーラームーン」や「魔法騎士レイアース」が好きで、そのあとはジャンプ作品にハマって……。

二次創作をするにあたって、小説が書けないから漫画を描くことにしたんです。当時、オタ活専用のSNSのアカウントで「ビッグサイトで◯◯さんとお会いしました!」といったイベントレポート漫画も趣味で描いていて、それが楽しかったんですよね。その経験が結果的に今の活動に繋がっているような気がします。


「当たり前」を丁寧に描く

——読み手を意識して描いているポイントはありますか?
基本は、完全に自己満足です!(笑)
ただ、過去の経験から「そんなの知ってるよ!」というテーマを詳しく描くと結構バズる、という法則があるような気がしていて。そこは意識しています。

たとえば、最近のサウナの投稿では
・全裸で入る
・サウナ前にタオルで身体を拭く
といった内容を丁寧に描きました。

サウナ好きからすれば「そんなの知ってるよ」という内容も、実は世間一般的には知られていないことだったりするんですよね。それと同時に、みんなの中でも「これって当たり前のことなんだろうな……」と思うから他人に聞きづらいことでもある。

その界隈では当たり前とされているようなことも、くどいくらいわかりやすく描く。すると、結果的にたくさんの方に見てもらえることが多いんです。

——サウナの投稿であれば全5回に投稿を分けてらっしゃったと思うんですが、構成にこだわりポイントはありますか
基本は「次の投稿が見たくなるシーン」で分割するというのを心がけています。

でも、そもそもインスタで漫画を読むときって1枚1枚スワイプしていくじゃないですか。次の投稿を見たくなってもらう以前に、まずは次のページにスワイプしたくなってもらわないといけないんですよね。

なので1枚1枚、全部の画像が「次に進みたくなる終わり方」になっているか、というのは常に意識しています。

——思いつくままに描き始めるスタイルの中、逆に「こういうネタは描かない」と決めているジャンルはあるのでしょうか
10代の頃のエピソードですかねぇ……。黒歴史すぎて書けないです!(笑)シンプルに、読んでいても楽しい気持ちになれないし。

あとは、私のコミックエッセイの読者さんは中高生ではないんです。同年代が多くて。私は、私のエッセイで"今"気持ちがラクになったり、共感したりしてもらいたいんです。多くの読者さんにとって、過去を振り返らないと共感できない「終わった内容」は避けるようにしています。

あとは、他人の悪口。自分の主観だらけになってしまうからです。自分の怒りの気持ちは、テーマとして取り上げないようにしています。

本当に一発描きでするするキャラが生まれていく

——これまでに、失恋や病気、アルコールハラスメントの経験なども描いてこられたと思うんですが、エッセイにするにあたってどうしても辛いことを追体験することになりますよね
そうですそうです。失恋の話は、もう泣きながら描いていました。

——テーマとして取り上げるというのは、つまりご自身の中で何らか心の整理ができた証明なのでしょうか
私がこういったテーマを発信する目的は「知ってもらいたい」が大きかったですね。辛かったことを自分の中だけで閉じ込めておくと、まるで辛いことを大事に大事に抱え続けているようにも思えて。誰かに知ってもらうことでラクになることってあるじゃないですか。

「私もそういうことありました」と共感して励ましあうために発信しているんです。ただ、辛さが伝染するような描き方ではなく、ちょっとコミカルに。アルハラであれば「こういう状況には気をつけてね」という注意喚起の意図もあります。

——みえさんの「フリーランス日記」のインスタ投稿では、ラストによく「今日からやりましょう!」と書いてあるのが印象的です

見てくださってありがとうございます!だって、「動き出さないと13年以上何者にもなれないよ」というのは私が証明しちゃってるんで。頭の中で思ってるだけだと、私みたいになりますよ、あなたはそれでいいんですか?というのをいつも伝えたいなと思っています。


"一歩"はいずれ必ず踏み出すことになる

——「実は絵を描くことが好きじゃない」というお話もありましたが、「コミックエッセイで食べていきたい!」という将来像ではないということですよね
今は考えてないですね。私はSNSでもよく「働くために生まれたんじゃない」と言っているんですよ(笑)。なので、労働でお金を稼ぐのではなく、ストック収入(※)を増やしていくために、今は真面目に取り組んでいるという感覚です。

※労働や売買といった対価による収入ではなく、資産(ブログ収入なども含む)によって継続的に収入が積み上がっていくタイプの収益

あとは、私は未来を考えるのがすごく苦手で。その分、今をめちゃくちゃ楽しむをモットーにしています。ブログもSNSも結果的には未来のために頑張っていること。今が続いて、未来になるのだと思っています。

——最後に、30代から生き方を変えるための大きな一歩を踏み出したみえさんから、同世代の進路に悩む女性にメッセージをいただきたいです
13年のフリーター生活があるからこそ言えるんですけど、誰かに救ってもらおうと思っていても、誰も救ってくれないんですよね。もし自分に何か悩みや変わりたいという気持ちがあるなら自分の足で歩くしかない。

でも、それってすごく怖いことだと思うんです。だったら、その「すごく怖い」という気持ちをSNSで発信してみることをおすすめします。その悩みや恐怖を自分だけのものにしないで、外に出す。すると、共感してくれる人と出会えて励ましあえるかもしれない。

自分を変えるための一歩って、「勇気がもてたとき」か「限界が来たとき」に、遅かれ早かれ必ず踏み出すことになるんですよね。私の場合は限界が来たタイミングでした。そのせいでメンタルもお腹も壊しながら頑張ることに(笑)。

だからこそ「どうせいつか勇気を出すんだったら、今出しちゃおうよ。やりたいことは、5年後の自分がやるくらいだったら、今やっちゃおうよ」と強く思います!


\ 「固定費教えてください!」コーナー /

その人の固定費は、その人の価値観をあらわしているみたい。そんな、このインタビュー企画のお決まり質問「あなたの固定費教えてください!」。みえさんにも「固定費」を聞いてみました。

———みえさんの固定費ってなんでしょう?
「Nintendo Switch Online費用」、「サウナ代」、「漫画代」ですね!私は大人になってからゲームを始めたんですが、今では気分転換のためになくてはならない存在です。

自分にとっての固定費を考えたときに、気になったときにためらいなくお金を払えるもののことだよなぁと感じていて。そうなるとやっぱり漫画代ですね。アニメにハマると必ず原作を読みます。最近も「僕のヒーローアカデミア」を全巻買いました。

あとは、最近ハマり出したサウナです!今では気になるサウナを見つけたら次の日には行くようにしていて、1週間で3ヶ所回りました(笑)。


取材・執筆・撮影/犬田メメ



ブログやSNSでも「目指せ"超余白暮らし"」を公言しているみえさん。取材中のみえさんの言葉や笑い声は、風みたいに軽やかに吹き抜けて、気づけば「余白」を削りながら働いてしまっている私の心をすっとラクにしてくれました。

つい「私は何になりたいんだっけ?」と未来を想像できずに今の自分を否定してしまうことも多い日々の中で、みえさんの「未来を想像するのは苦手。でも未来って今の延長でしょう?今をめちゃめちゃ楽しむよ」という言葉は、私にとってのお守りです。

取材させていただき、ありがとうございました!

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