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猫空には猫はいない 台北郊外の山にて 2016年6月の台北 男3人旅行 4話

台北で迎える朝・無駄に早起き

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2日目。毎度のことながら海外旅行へ行くとテンションが上がり過ぎて、やたら早く目が覚めるおじいちゃんモードになる。自然に朝6時に目が覚めて一人そわそわ。ホテルの屋上が喫煙所兼ちょっとした庭園になっており、台北の朝日と風を存分に感じる。亜熱帯の都市部特有の甘臭さが混じった湿気と澄み渡る青空、遠くから聞こえる自動車の騒音が何とも気持ち良い。待ちきれなくなり疲れが抜け切れていない二人を煽って、本日最初の目的地猫空へと行く。

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台北の高尾山・奥多摩こと猫空へ

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猫空は台北郊外にある丘陵地であり、鉄観音の茶の産地としても有名な自然豊かな景勝地である。都内で例えれば高尾山と奥多摩を合わせたような場所であろうか。
特徴的な名前から猫が数多く生息している印象を受けるが、台湾語で土地の特徴を表す言葉を北京語で漢字にしただけであり、猫とは全く関係ない。ちなみにカタカナで無理やり表記すると「マオコーン」と読むらしい。だが日本人たる我々には馴染みの薄い音なので、訓読みして終始「ねこそら」と呼び続けた。
猫空の山頂までは全長4kmもあるロープウェイて行ける。しかもただのロープウェイ、という訳ではなく追加料金を払えば景色をより楽しめる底面が透明の強化ガラス製になっているクリスタルキャビン (水晶車廂)なるゴンドラに乗ることも出来る。言わばまさに一大観光地!
僕は重度の高所恐怖症ではあるが、このような機会は中々ないと思い、勇気を出してこの猫空ロープウェイを旅程に組み込んだ。ロープウェイで上からの景色を楽しんだ後、遊歩道で台北郊外の植生を眺め、特産品のお茶を風格ある茶館で優雅に喫茶を楽しむ、という僕にしては珍しくそれなりに洒落たプラン、アラサーのうだつの上がらぬ風采の男三人でやることではないかもしれぬ、と突っ込まれるとぐぬぬとしか言いようがないのだが、別に誰が為でもない、自分たちの楽しみのための旅行なのだがら別によいではないか!


最寄りの地下鉄の駅、動物園駅から猫空ロープウェイまでの道程は、奇妙な銅像・モニュメントが多い。猫空を表す物ではなく、近郊にある動物園に関する物だと何となく分かるのだが、日本人の感覚では作られることはないような、何とも言えない造形が面白い。

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底が透けて見えるロープウェイ

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休日のロープウェイは非常に混み合う、特に床が透けているクリスタルキャビンは大人気なので、朝イチで並ぶのが吉、とのネット情報を元に朝8時半の始発を狙って向かったのだが、こちらの想像以上に大人気施設であり、始発前にも関わらずロープウェイ乗り場には既に20組程が並んでいた。さすがの人気スポットである。30分程待ち、念願のクリスタルキャビンに乗って猫空へと山登り。

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高所恐怖症にも関わらず敢行したロープウェイでの旅であるが、4kmという長さに加えアップダウンが想像以上に激しい。しかも床が透けているもんだから恐怖以外の何物でもなかった。

だが貴重な経験とばかりに、この旅行のために新調したソニーのコンデジ、RX100を構えていたら、ファインダー越しでは然程怖さを感じないことに気づく。恐怖を振り払うために無駄写真やムービーを取りまくりながら20分弱の空の旅を楽しんだ。肉眼で十分楽しむことが出来ないなんて情けない男よ。

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猫空の山頂にて

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こうして着いた猫空であるが、着いた時間が9時過ぎと早すぎたせいか殆どの施設が空いていなかった。後で調べて解ったことだが、大体11時が平均的な開店時間らしい。中野ブロードウェイみたいな所よ。

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空いていたのはお茶とは関係ない、屋台スタイルのフードコート群のみ。そこで遅い朝食に洒落こむ。士林夜市をギュッと濃縮してような小さなフードコートであったが、Bが買ったダウナー系のお姉さんが作る牡蠣オムレツがとても美味しかった。牡蠣+オムレツ、これが美味しくないわけではない。

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だが全体的に士林夜市と比べてガイジン向けの観光地化はさほどされていないように感じた。オール繁体字のメニュー軍は中々威圧感がある。僕はノリでガチョウの血を固めたモノが入ったスープを選んでしまったのだがこれが味がとにかく薄い!例えるなら白湯に味のしない異物が入っているようなシロモノで全く美味しくなかった

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因みにこの台北旅行で唯一口に合わなかったものがコレだけだった。逆に言えばそれ以外はみな美味かった、ということなので台北グルメのポテンシャルの高さには驚嘆せざるを得ない。


Sはどういう訳か、新疆風羊肉と書かれた屋台に随分熱心だった。何で台北まで来て新疆ウイグル風の羊肉を食うのかよく分からないが、これもまたSだから仕方がない。

一応突っ込んだのだが「日本では中々食べられないものだし、俺はこれが一番美味そうに思えたんだからグダグダ言うのは野暮だろ」とのこと。だが上野や池袋等の新華僑が経営している中華料理屋ではこの種の羊肉の串焼は結構よく見るので、彼の指摘は的外れなのではないか、と一瞬思ったが、まぁこういう所が彼の魅力なのでイチイチ突っ込む僕の方が野暮であり、風流人ではないのだ。単純に外れを引きたくなかっただけかもしれない。羊の串焼はどう考えたって美味しいもんね!!

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猫空を歩く

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猫空の頂上のフードコートで思い思いに朝食を食べつつ、猫空の山から見下ろす異国の風景を味わうのはそれだけで気持ちが昂ぶる。だが時間が経つにつれ、当然と言えば当然だが増えだす観光客。地元のの老人旅行サークルの一団から大学生風の若者グループ、果ては山道を攻めるスポーツ自転車集団、そしてお決まりの大陸からの観光集団。


言葉は分からなくとも風貌と態度で一発でどのような集団なのかなんとなく察せられるのが面白い。最初はここに来るのがちょっと早すぎたか、と後悔したが、却ってこのくらいの時間の方が変に待つこと無く丁度良かったのかもしれない。

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人の流れに乗って猫空の遊歩道を散策する。眼下に台北中心部のメトロポリタンな都会が広がる中、木々に囲まれた道を歩くのはそれだけで気持ち良い。ここ台北は日本に近い異国とは言えやはり亜熱帯。植生が日本と明らかに異なる。色濃い瑞々しい木々と草が元気に伸び伸びと生い茂っている。東北出身の僕には青々と茂った元気ある植物群を見る度に何処か新鮮で爽やかな印象が心に流れる。

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初めて上京した際、雑草が東北のそれと比べて元気であることに驚いたものだが、ここ猫空の雑草達はそれ以上にエネルギーに溢れていた。日照時間のながさは大正義である。偶然見かけたヤモリもどこか誇らしげだ。俺はフォルモサのトカゲだぜ!と全身で主張しているかのようである。

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茶館、ではなく何故か意識高い系カフェにて

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30分ほど散策し、暑さに耐えきれなくなったため念願の茶館へ洒落込もう!と思ったのだが、トラディショナルな茶館より綺麗で洒落て、尚且クーラーがガンガン効いている快適で清潔な店に入りたい、とSが強く主張。年長者であり、彼の主張に押され、彼の主張に完全にマッチした洒落たカフェに入る。近代中国の租界にある西洋人向けをモチーフにしたカフェであり、表参道や自由が丘にあってもおかしくはない瀟洒なお店。日本でこの3人でこんな店へ行くことは絶対にない。店内ではアラレちゃん風メガネをかけた綺麗で小洒落たお姉さんがせっせとお店を切り盛りしていた。


僕とBはオススメの熱いお茶を注文する。折角台湾茶の特産地に来たのだから最もスタンダードな方法で味わいたかったからであるし、店もそちらをオススメしていたからである。一方マイペースなSは「暑い」というシンプル且つこれ以上ない理由でアイスのお茶を頼む。


Bは特産品の鉄観音。飾り気のないシンプルで優しい味がした。僕が頼んだ台湾茶葉の紅茶はアルコールランプのようなものでポットが熱せられた出てきた。随分と意識高けぇなオイ!と関心したが、中には棗等の木の実が大量に入っており、外面だけではなく内部も十分意識が高い趣。鉄観音とは逆で不思議で複雑さ甘さが舌に長期間残る。こういうの好きな人もいるのだろう。


因みにSのアイスティーはライムがこれでもかとドカドカ入っており、加えて中国茶とは思えないほどの甘さ。しかもストローがタピオカ式の異常に太いタイプで、吸う度にライムの種が口の中に入る代物であった。だが味自体は僕個人の感想としては中々ありだと思ったが、Sは不服そうではあった。だが彼が選んだモノだからね。責任は彼にある。

下界に帰る


カフェを出て再びロープウェイに乗って猫空を降りる。もう少し猫空にいても良かったのだがなにせ2泊3日の旅行。他にも行きたいところがいくつかあるため、ここらでお暇。

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復路のロープウェイはかなりの渋滞であったが、よく観察してみると通常のゴンドラ乗り場はそこまで混んでいない様子であり、すかさずそちらの列に並ぶ。

結局20分程度と大して待つこと無くかった。地上に降り立ち、興味本位で往路のロープウェイ乗り場を覗いてみると、クリスタルキャビンのゴンドラ乗り場は気が滅入るほどの渋滞、通常ゴンドラも見るだけで諦めたくなるレベルの大渋滞であり、屋根が無い外まで人が溢れていた。タッチの差で並ばずに済んだのは幸運。それだけでちょっと上機嫌になった。

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