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#28 テムズ川沿いを無為に散策し、アルゼンチン人のオッサンの下着購入に付き合わされた2度目のオックスフォードの週末 2018年2月24日

二度目の土曜日。
正直オックスフォードも飽きてきたので、念願のロンドンに行きたかったのだが、いつもの二人が難色を示す。

カルロスは来週が最終週であり、最後の週末はHSBCロンドン本社にいる友人達からロンドンを案内される事になっているため、今週は最後のオックスフォードを楽しみたい、とのことで、これはもうしゃあない。

ただこの種の話をちらっと聞くと、カルロスは俺と違って相当エリートなんだよな、とビビってしまう時がある。世界トップクラスのメガバンクのマネージャーなんだから、雲の上の存在の筈なのだが、南米人特有の気さくさのせいか、四六時中一緒にいても気が重くなることはない。

オヌールなのだが、こいつも来週友人(女性含む)がロンドンに来るので、わざわざ今週行きたくない、とのこと。結局は女の子とロンドン観光を愉しみたい、という腹なのね。
多数決で負けたので今回も仕方なくオックスフォード観光。因みに全くのノープラン。頑張って一人で考えたが思いつかず。

恒例の屋台で飯を買って寒空の下公園で昼飯を食べる所からスタート。
カルロスは飽きもせずパエリア、オヌールも飽きもせずケバブ。

ほかにお前ら食わんのか。

僕は元英国植民地であるジャマイカカレーを食す。ジャマイカでもカレーあることに驚く。
ヤギ肉が入っているのが特徴だが、程よい香辛料とクリーミーな味付けのため、ヤギ独特の臭みが旨い具合に中和され、洋食屋のカレーに近い味わいで中々美味しい。流石エゲレス、植民地由来のメシは旨い
しかし毎度のことながら寒空の下、立ちながら昼食を取るのは侘しいしシンドイ。二人とも気にしないのが不思議でならない。

どこか行く当てがあるのか一応聞くが、全く決めていない、お前が決めろ、と予想通りの返事が返ってきたので、とりあえずテムズ川に行き、そこのボートクルーズを目指す。


ただテムズ川の発音が全員違うため、僕の提案が中々二人に伝わらなかったのには参った。

アルゼンチン人のカルロスはタメシス、トルコ人のオヌールはタメス、と主張。テはねぇよ、テは。タだろタ、と二人は得意げに僕の発音をバカにしだす。
だがアングロファイルな僕は知っている。
これはテムズである。

タとは絶対英国人は言わない!

3人とも俺の発音が正しい、と言い争ってやまない。
まさに不毛な議論。

だが二人とも僕のEngrish発音を普段から馬鹿にしていると、最初の発音がタという所で一致している強みがあるのか、お前の発音だけは絶対に違う、と断言され正直腹立つ。

日本と異なりテムズ川はスペイン、トルコ共に歴史的に馴染みが深い場所故に英語本来の発音とかけ離れた発音が慣習的に定着しているのかもしれない。

二人は全く譲らないから困ったものだが、奴らは妙に行動力があるため道すがら地元民らしき人にどの発音が正しいのか尋ねる、という暴挙にでる。

「Thames? テムズだよ」

ざまぁ、俺の勝ちだ!

地元民から絶対的な自らの異常な行動力で回答を引き出したにも関わらず、何故rか納得しない二人。だらだら歩いてテムズ川沿いに到着。整備された遊歩道のような所を歩く。目標はボート乗り場。無論僕が必死に道すがら調べた。

だが予想していたことではあったが、二人ともこちらの指示を一切聞かず、好き勝手に歩きまくる。オックスフォードを流れるテムズ川には支流が結構あり、川沿いをただあるけば良いという訳では無い。迷いに迷う。




加えて二人とも綺麗な女性を見かける度にテムズ川の発音確認を口実に意味もなく話しかけるナンパ野郎のため、結局2時間近く歩き回る羽目になった。

やっとのことでボート乗り場についたのだが、冬季ということもあり、既に新規ボート貸出は停止とのこと。

結果、オッサン3人で目的もなくテムズ川沿いを歩くだけという椿事。
まぁ、野性のリスをたくさん見れたから良しとしよう。野生のリスなんて日本では滅多に見られないが、ここ英国オックスフォードではムクドリ並みに平然と出くわす。


テムズ川ではオックスフォードコリッジ(カレッジじゃなくてコレッジで発音するのが英国流らしい)の学生が競技用のボートをひたすら漕いでいた。大会が近いのだろうか。

東京の国立大学でやたらボート競技が盛んなのは彼らの真似だと聞いたことがあるが、本場のリアルオックスフォード学生のボート練習を生で見れたのは中々感動的だった。

ただボートに乗っているのは男女問わず全員白人。

アジア系の学生(殆んど中華系)がここオックスフォードにも増えてきているらしいが、スターバックス等のチェーン店以外では殆んど見られない。

余裕のある白人だからこそ、この種の文科的アクティビティに勤しめるのだろうか。

がり勉アジア人オックスフォード学生はクラブ活動をする余裕はないのか、それとも人種の壁が残っているのか?


だいぶ疲れたので、途中でバスに乗って中心部に戻る。
ハブ・アンド・スポーク式のため、知らない場所でも取り敢えずバスに乗れば勝手知ったるシティーセンターに戻れるから異国の人間でもバスは使い易くて助かる。

日本でバスを使いこなすのは、地元であっても至難の業だが、ここイギリスオックスフォードでは利便性のすぐれた公共交通機関であり、これは素直に素晴らしいことだと思う。


カルロスが子供と同僚のお土産を買いたい、というのでシティーセンターの若干外れにあるショッピングセンター、Westgate Oxfordへ向かう。
再開発で最近出来た所だけあり、モダンな造りになっている。中世の街並みを抜けると突如出現する近代的な構造物は異質な感じがしないでもない。

適当に中を散策。オックスフォード独自の、イングランド独自の店は少なく、グローバル展開している著名な店が多くを占めている。

すると突如。「日本のブランドあるぞ!」とカルロスが得意げになってあるテナントを指差してきた。

だがそれはSuperdry。残念ながら日本のブランドではない

このスーパードライというのはイギリス発祥の服飾ブランドなのだが、「極度乾燥しなさい」という珍妙な日本語のロゴがデカデカと目立つ所に入っているのが最大の特徴である。
創業者が日本旅行の際にアサヒスーパードライに触れたことをヒントに立ち上げたらしく、日本以外の異国では様々な所で見受けられる。

このように確信犯的に立ち上げたブランドのため、日本では当然のように展開していない。そういう小賢しい所がいかにもイギリスらしい。

ハイブランドではなくカジュアルよりではあるが、だが値段はそこそこ高く、ビビットな色合いが洒落ており縫製も良く質自体は結構良いため、日本人からするとふざけたモノのように思えるが、いわゆるワンシーズン使い捨てのファストファッションではない。ちゃんとしたアパレルである。

カルロスにこれは日本のブランドではない、と説明したが、知識人である彼はちゃんとそのことは知っており、あくまでジョークとして敢えて僕に声掛けをしたとのこと。

性格悪いぜ。。。

本場英国のスーパードライ製品をお土産として買おうか彼は迷っていたが、結構値段がするためか、結局彼は何も買わなかった。

最終的にプライマークというアイルランド発祥のGU的な店でカルロスはお土産を買うことにしたようだ。

英国は全体的に物価が日本より若干高いのだが、このプライマークという店の服や雑貨は驚くほど安い。大体どこも10ポンド(当時1500円)以下で、パッと見た感じではそこまで粗悪品という感じはしない。お金のない若者や移民たちが大量にごった返ししており、妙な活気がある。

だがカルロスは世界的なメガバンク、HSBCのブエノスアイレス支店の監査部門のマネージャーである。どう考えても金持ち行員のはずなのだが、無駄な出費は極力避けるのがモットーとのことで、同僚でのお土産はこの種の店で十分だと宣っていた。

しかも彼が買っていたのは何故か男性用の普通の下着ばかり。
アルゼンチンでは知人男性に下着をプレゼントするのは別におかしいことじゃない、とのことだが、どれも5ポンド以下のかなり安いものばかりなのが気にかかる。

そしてどれもMade in Englandではなく、Made in Bangladeshなど南アジアの旧英国植民地オリジンのものばかり。
それで本当にお土産としrて良いのかと一応問うと、

「いいよ。別に下着だし。下着の原産地を気にする奴なんているか?俺の友人は気にしないから」

何とも身もふたもない返事。
金持ち銀行員の発言とは思えない。いや金持ちだからこそ、こういう所では支出を渋るのだろうか。

オヌールも何やら探していたようだったが、彼はスーパーサイズなのでxxlじゃないと服が合わないらしく、このアイルランドのGUでは彼に合うサイズはなかったようで、何やら文句を言いまくっていた。
彼は何処にいても人を不快する発言と行動ばかりする。

これはある意味才能である


その後、Westgate Oxfordn内をブラブラウインドウショッピングしたが、特に何か買うべきものは見つからなかった。

最後にショッピングセンター近くにあった英国独自のコーヒーチェーンであるcostaに入り、安いフィルターコーヒーを三人で飲みながら談笑。

談笑と言いながらも週末ということもあり、カルロスとオヌールの二人はフットボール(サッカー)について何やら議論を交わしていたが、フットボールへの興味は薄い僕には全く入ることができず、ただただ二人の会話を聞いて終わった。

晩御飯がサーブされるちょっと前に家に帰り、ディナーにありつく。
今日も一人でディナーを食べる。ルームメイトの二人は週末は家に帰らず何処かで過ごす習慣があるようだ。

独りで食べるディナーは寂しい。だがしょうがない。

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