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王道の士林観光夜市を普通に堪能する 2016年6月の台北 男3人旅行 2話

台北の地下鉄


台北で最も有名な観光地の一つ、士林観光夜市へ地下鉄へ向かう。台北は東京都並に、いや東京以上に近代的な地下鉄網が発達しているため、市内であれば基本的に地下鉄だけで事足りてしまう。しかも運賃は日本の半分以下、なので素晴らしいことこの上ない。
切符が紙ではなくICが入ったプラスチックのコイン状のトークンであったり、車両の設備が日本のそれとは微妙に異なっていたり(シート、釣り皮、もたれ掛かり棒等)何気ない違いが新鮮に感じられるのが海外旅行の魅力だと再認識させられる。
特に地下鉄の優先席(北京語で「博愛座」素敵な字面)の割合が非常に多いのだが、この博愛座に座る若者が誰一人としていないのが印象深かった。博愛座どころか普通の座席すら座る人が極端に少ない。特にグループで地下鉄に乗っている層は誰一人座らず立っている。台湾人のスピリッツでは地下鉄で座ることは負けを意味するのだろうか?普通の座席は座っても問題ないと思うのだが(皆立っているので車内が圧迫感あった)
だが我々も郷に入れば郷に従え精神で、座らずに目的地に向かう。

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↑記念に博愛座に一瞬座るS

超定番観光地 士林観光夜市


士林観光夜市は日本のガイドブックなら必ず載っており、テレビの旅番組でも数多く取材を受けている超が付くほどの有名なド定番観光地である。ネットでも検索すれば膨大な情報が日本語で簡単に入手できるため、わざわざここで語るのも恥ずかしいレベルなのだが、小吃と呼ばれる軽食の類、所謂B級グルメを扱う屋台や気軽なオープンスタイルの食堂、台湾を感じさせる雑貨屋お土産を売る露天、気軽な値段のアパレル、射的やエビ釣りなどの遊戯施設が所狭しと立ち並ぶ、老若男女皆が楽しめる巨大な複合商業施設、それが士林観光夜市である。
行くだけで縁日のような気分が味わえるのだが、これが常設されているのが亜熱帯気候ならではある。

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実はこの士林夜市には半年前に一人で訪れたことがあるが、今回は気の置けない道連れ2人と一緒であるので、良い意味で当時と印象が大分異なった。無論、細かい探索は一人の方が向いているが、飲食関係は人数が多い方が絶対に楽しい。今回の目的は酒好きな3人で兎にも角にも飲み食いすることであったため、夜市のような活気溢れて、酒も肴も日本の相場の3分の1程度で安く且つ味も優れている所はまさに格好の場であった。

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ここまでの不運を噛み締めるようにしながら台北の屋台料理を食べ、薄口でさっぱりとした台湾ビールを飲む。これが楽しくない訳がない。会社で前日起きた大トラブルもすっかり忘れて、前向きな観光モードに頭も心も入れ替わる。台湾初体験の二人もエネルギッシュな夜市の光と喧騒で当初のダウナーな気持ちはすっり晴れているようであり、こちらも一安心。

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地下に犇めく食堂群

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地下にある食堂群をブラブラし1件目を探す。どこも混んでおり、客引きも激しい。日本のテレビが取材に来た際に撮影された記念写真を宣伝とばかりに貼るお店も多い。だが調理場直結の場所故に、大抵の写真は油まみれで色がくすんでいたのはご愛嬌

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しばらくブラブラしていたのだが、どうにも決定打がない。するとやたら流暢な日本語を話すおばさんに強く促され、特に拘りはなかったので、そのお店を1件目に選んだ。やたらとよく喋るおばさんなので、オススメを問うと一番高い料理(蟹や鮑)を臆面もなく勧めてくる

恐ろしい!

これぞ中華商人の抜け目のなさよ。だがそこは笑顔でスルーして、漢字を見て何となくどんなものか想像できそうな物、逆に何が出てくるかわからないものを一通り注文する。蒸し暑い台北の夜と脂っこい小吃、そして台湾ビールの3点はまさに台北観光三種の神器と呼んでも過言ではない程の最高の組み合わせであった。


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臭豆腐を勧めるおばさんとの(ちょっとした)戦い


楽しく談笑しながら酒と肴に舌鼓を打っていたら、例の日本語流暢なおばさんがしきりに臭豆腐を勧めてくる。このおばさんはテーブルの料理が減ってくる度に呼んでもいないのに現れて何かしら追加注文を要求してくるのだが、毎回その中に臭豆腐が入っている。
この臭豆腐というものは、豆腐を漬け汁に入れて発酵された物で、独特のアンモニア臭がする。要するに漢字の通り「臭い豆腐」である。発酵食品なので味は濃厚なのだが、独特の匂いを嫌う者、特に外国人は苦手な人が多いとのこと。

「貴重な経験だよ!臭いは凄いけど美味しいから絶対食べてよね!」

と捲し立てるおばさん。要するに来日外国人に無理やり納豆を食べさせてリアクションを見ようとする日本人と同じような発想で、自国のトリッキーな料理をガイジンである我々に食べさせて反応をみたい。ということのようである。この手のちょっと悪意のある策略に乗るのも癪に障るが、酒飲み男3人旅、旅の恥は掻き捨て、とばかり敵の要求を飲んでしまった。

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いざ、臭豆腐初体験!となるのだが、確かに独特の臭いはするが、大きなリアクションが取れる程のレベルではなかった。そもそもこの地下の食堂群はありとあらゆるスペースに食材が置かれ、あちこちで調理がされているため、様々な臭いが入り混じり充満している。そしてこの店以外でも当然臭豆腐は調理されており、既にある程度耐性が出来てしまっていたのである

肝心の味も濃厚ではあるのだが、特別まずいわけでもなく、取り立てて美味い、という訳でもない普通に美味しい揚げ豆腐の一種、と言った印象。
これは僕だけではなく、他の2人も同様であった。
あまりに味気ないリアクションを見て露骨につまらなそうな顔をするおばさん。そうは問屋がおろさないぜ!

夜市散策 風のように歩き回るS

あまり1件目で食べ過ぎてお腹が膨れすぎるのももったいないので、適当な所で食堂を出て、夜市周辺を散策。適当に露天を眺めたり、屋台でファストフードを互いに買い合ってシェアしながら1時間ほど散策をキャッキャウフフと3人で楽しむ。

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海外旅行自体初体験のBはありとあらゆる物が珍しく見えたようで、時折感嘆の声をあげながら散策そのものを楽しんでいた。
一方海外旅行慣れしているSは、この手のアジアの市場でマトモにモノを見ること無く、写真をサッと撮って雰囲気だけを味わい風のように速歩きで雑踏をすり抜けていく。まるでただ歩くことだけが目的のように思える。

あまりにペースが早すぎて、僕とBは度々Sに置いていかれる始末

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Sとは何度か旅行をしたことがあり、その度に思う
本当に彼はそれで楽しいのだろうか?

毎度疑問に思い問いかけるのだが、その度に本人は

「俺は充分楽しんでいる。人それぞれ価値観が違うんだから」

と毎回答えるS。

そう言われてしまうと立つ瀬がない。
何か変わったものを見る度に立ち止まってじっくり観察し、僕と感想を言い合う旅行初心者のBと比べると、彼のスタイルは随分異質だな、と改めて感じてしまう。

だがSは旅行前に旅行先について一通り調べている。適当にその場のその場の雰囲気に流されている訳では決して無い。

だから彼は旅行先が調査通りの場所か、実際にその目で確認をすることに満足感を覚える人種なのではないか、とふとその時感じた。

文系のど真ん中を生きた僕には、理系のど真ん中を生きているSの行動や価値観が時々わからなくなることがあるが、まぁそれが人間、というやつなのかもしれない。だからこそ、僕はSと長年俗物的な利害を越えた友人関係を築けているのかもしれない。


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士林観光夜市を一通り楽しむと21時近くになっていた。この時間でも夜市は人で一杯。流石金曜日の夜。だがずっとここにいるのも勿体ないため、2番めの目的地である林森北路と呼ばれる日本人駐在員向けのナイトライフの聖地へと向かうことにした。

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