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2016年6月の台北  序章 成田から桃園空港へ 男三人観光旅行

安定と高賃金目的の転職が失敗だったと自覚した時の台北旅行記。まさに苦しい現実からの逃避行。
学生時代の腐れ縁二人と初めての海外旅行。特筆すべきことは何もしていないが、3人という人数で海外旅行に行くのは初めてだったので新鮮な気分であった。一人と違い淋しさもなく、2人と違い些細なことでギスギス仲違いすることもないし、会話が途切れることもない。やはり3,4人の集まりが最も丁度良いことを実感させられた。
そして何よりも、絶望の淵に立っていた当時の自分になんでも無い喜びのかけがえのなさと生きる希望を与えてくれたかけがえの無い2泊3日の旅行であり、強く印象に残っている。


台北までの(精神的に)長い道程


単独ではなく、いつもの友人Sと、同門の後輩Bを巻き込み三人で旅行。以前、三人で海外旅行を計画しており、後輩Bには無理してパスポートまで新規に取ってもらったのだが、僕の都合でお流れになり続けていた。3人共仕事で疲弊していたので、ここで一発ガス注入とばかりに無理矢理計画した旅行であった。
有給を取らないことが美徳の職場ではあるのだが、ここでの栄達については完全に諦めがついたので思い切って金曜日に有給取得。先輩からグチグチ嫌味を言われたが、もはや他人の評価などどうでもよくなったので気にせず休む。10歳以上離れた課長以上の上司に有給取らなかった自慢をされるのは、時代や価値観が違うため気にはならないが、同世代である3コ上の先輩に有給取らない自慢をされるのは本当に腹が立つ。お前のような奴が無意味な見栄で足を引っ張るから、この会社は未だに有給がとれんのじゃ。
しかし有給取得出来てしまえばこっちのもの。灰色の毎日ではあったが、毎晩独身寮の軋むベットの上で眠る際、来たるべき台北3人旅行への期待が頭を駆け巡り過ぎ一人興奮し中々眠れず、同行者二人に怪文書としか思えないラインを送りまくる、という傍迷惑な行為を旅行当日まで1ヶ月続ける、という暴挙に出るほど、日々の生活に彩り出てきた。友人には悪いことをしてしまったが、そこは気の置けない友人、「お前がとにかく楽しみにしているのが嫌というほど伝わってくるから、こっちも旅行が楽しみでしかたないよ」と優しい返事を毎度してくれる。やはり持つべきものは友なのである。
だがその旅行前日の木曜日、会社で信じられない大きなトラブルが発生。深夜まで対応に追われたが何とか解決の緒は見つけられた。しかし例の先輩から「俺だったら有給返上して働くけどなぁ」「休みの間もメール見て仕事するけどなぁ」等と恒例の嫌味を言われて精神をすり減らすも、直属の上司次第は理解のある方なので「有給は権利だから普通に休んで良いよ」と言われて一安心。まぁその上司に暗に休むな、と同様の嫌味を言われても、休まないという選択肢はなかったのだがな!有給返上ってなんだよ。前述したが、同世代の人間がそんなことを未だに言うのが、それも上長に聞こえるような大きい声でアピールするかのように言ってくるのが本当に不愉快極まりない。その手の忠誠心を示すやり方が日本企業の生産性を下げていることがなぜわからんのか。
最後に大きなトラブルがあったが、無事これも解決できて一安心。前日の夜はあまりに楽しみすぎて一睡もできない、という遠足が楽しみな小学生状態。だが眠れずに体力が落ちていると肝心の旅行も楽しめないため、6月の暑い中、久々に風呂桶にお湯を貯めて入浴剤まで入れて体力回復を図る始末。結局一睡もできず、だが疲労感を一切覚えない覚醒状態で朝を迎えた。ワクワクを抑えきれなかったのもあるが、寮暮らし故に普通に出社する他の社員とバッティングするのが嫌という事情もあり、朝6時過ぎに寮を出て始発のJRで成田空港まで向かった。別に早朝LCC便ではないのだが、瘴気漂う会社の寮から脱出し、自由の空気に包まれた成田空港で時間を過ごすのは、それだけで精神衛生上、望ましいことなのだ。


成田空港から桃園空港へ!

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寮が成田空港から3駅、という交通事情もあり、なんと朝6時に成田空港に到着。因みに便は昼13時成田発。7時間前に空港につく。様々な設備で溢れている成田空港だが、あまりに朝が早いとコンビニ以外のお店は開いていない。また平日という事情もあり、旅客自体もあまり見られない。流石に退屈なので友人に怪文書ラインを飛ばしたり、喫煙所巡りをしたいなど、ろくでも無い時間の過ごし方をする。内心、会社から電話がかかってこないかビクビクしていたが、幸いなことに電話はかかってこなかった。
11時にようやく友人2名と合流完了。これでこの旅行がいつもの一人旅ではなく、仲良し3人組での旅行であることの実感がわき、益々テンションが上がる。さっさとチェックインを済ませてイミグレーションを通ろうとするも、海外旅行初体験のBが2リットルのペットボトルを持ち込もうとしたため、保安検査場で早速止められる。未経験者故の失敗である。買ったばかりで殆ど飲んでないのに、と恨めしそうに2リットルの水を捨てる彼の後ろ姿には哀愁が漂っていた。
何回か海外旅行に行っている僕やSと異なり、Bにとっては何もかもが初めての体験故に、思いもよらぬ所で驚きの声をあげるのが面白い。イミグレーション突破後の噎せ返るような香水の匂いが立ち込める免税店の雰囲気、そこで売られているタバコの安さ、喫煙所の多国籍感、娑婆では見られないタバコ屋の広告がバンバン流れている所など旅行前の成田空港で相当数写真を撮っていた。一番年下であるBの初々しい行動を見て僕とSは今後我々を待ち受ける旅行が予想以上に楽しいものになることを確信し、テンションが益々上がった。まだ出発もしていないのに。
あまりにも気持ちが大きくなってしまい、普段なら高額故に絶対に近づかない、出発ロビーにある飲食店に入り、1杯800円もする高額な生ビールをそれぞれ注文してしまう、という暴挙に出てしまう。飛行機の中でいくらでもお酒が飲めることがわかっているのに。まぁ、それだけで気持ちが前のめりになっていたのだ。


台湾第3位のキャリア、トランスアジア航空に乗り、いざ桃園空港へ。このキャリアはどこかチープな感じがするが、LCCではないフルサービスキャリアのようであり、機内食や飲み物のサービスもちゃんと充実していた。機材の関係なのかビデオプラグラムは無かったが、道連れ二人がいる短いフライトなので全く問題はなし!

機内食はマカロニグラタンのようなものが出ててあまり台湾感はなかったが、飲み物には台湾ビールがあり果然テンションがあがる。台湾につく前に3人で台湾缶ビールで乾杯し、旅の無事と成功を祈った。これは一人旅では絶対できない行為である。昔からの友人達と雲の上で異国の缶ビールを飲み交わす、楽しがらずや

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終始ノリノリでここまで来たが、ここで文字通り暗雲が我々の前に立ち塞がった。桃園空港周辺が低気圧で覆われており、かなりの悪天候で着陸が難しい状況とのこと。不安が過ぎったが一時間程度の遅れで無事桃園空港に到着。三人を待ち受けるものは一体なんであろうか?




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