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台北王道観光地と外道スポット 2016年6月の台北 男3人旅行二日目 第5話

台北のランドマークへ


次は台北101へ。ドバイのアレが出来るまで世界1位の高さを誇る超高層建築物である。てっきりスカイツリーや東京タワー等の電波塔の類いだと思っていたのだが、実際はオフィスあり、レストランあり、高級ブランドショップありの複合商業施設とのこと。池袋サンシャインの規模をより大きくしたような所だろうか。
最近出来た台北のランドマークということもあり、地下鉄の駅からのアクセスは抜群に良い、ここのエリアは先日の士林夜市で味わったアジア的カオスさや、自然豊かでゆったりとした猫空とは全く異なっている。区画整理がキチンとされた幅広い道路に、洗練された高層ビルが立ち並ぶ超近代的なエリア。台北市は東京都と比べて8分の1近い面積しかないのだが、エリア毎の毛色が東京以上に異なるのが面白い。

王道観光地台北101

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中に入る。近代的、と言うより寧ろ近未来を意識している洒落た造りだが、西洋文明のエピゴーネンではない事を強く匂わせるチャイニーズな意匠が随所に散りばめられていた。こいつは凄い建物だぜ!マカオのケバケバしさ全開の下品な成金趣味を極めたカジノホテルとも、効率と合理性に全振りした香港の高層ビルとも雰囲気が全く異なる。同じ中華文明の末裔ではあるが、各々目指す所は異なっている、ということなのだろうか。

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ここでのショッピングや食事にはそれほど興味が沸かなかったので、取り敢えず展望台に登る。受付のお姉さんが日本人だと名乗る前からオール日本語で案内してくれたのにはちょっとビビった。

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展望エリアで台北の街を見下ろす。流石にランドマーク的な所であり、ここも予想通りかなりの人。そして土産物屋は日本のこの手の施設と比べると中々派手で、簡単には手が出せない値段の物をよく見かける。
物欲が無い我々ではあるが、Bが両親のお土産を買うために展望台内の土産物コーナーを物色していたので取り扱えず彼についていくことにした。ブラブラ歩いているとこれまた結構な値段ばかりしそうな珊瑚加工品のお店に出くわす。見事な造形のものが多かったからが、Bが足を止めて眺め出すや否や、すかさず日本語担当なマダム店員がBに付く。かなり長いことBとマダムはやりあっていたが、マダムの口の巧さに呑み込まれたのか、結局Bは珊瑚のアクセサリーを2品購入していた。やはり漢民族は商売が上手い。

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台北のサウナへ

取り敢えず超メジャーな観光地である台北101に3人で訪れた、という事実が何よりも重要なので、その実績を十分に積んだと判断した所で次の目的地であるサウナ施設、亜太三温暖(三温暖でサウナと読む)へ向かう。
ここはサウナ好きである僕とBの強い要望により、無理やり旅程に組み入れた。台北101の後にしては趣味色の強い場所。


道中で先日のようなスコールに見舞われるも、上手いことタクシーを拾えたので濡れずに目的地に到着。台北のタクシー都内より遥かに安く、また運転手も随分親切。漢字でスムーズに意思疎通が取れるのも素敵。


何故か日本語でもサウナと併記されている看板に驚きながら、うらぶれた雑居ビル臭のするエレベーターを昇ってエントランスへ。古代ローマとバロック様式の合の子のようなチープな西洋風のデコレーションと、雑な造りのルネサンス風の石膏像がお出迎え。日本の老舗サウナ(船橋モンシャトーや新小岩レインボー)と方向性が同じ事に驚愕。近未来感溢れた台北101とのギャップで頭がクラクラする。

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中に入る。外国人相手であってもフロントは手慣れているのか混乱もなくチェックインはスムーズに完了。ロッカールームへ促されると十代前半と思わしきボーイのお兄ちゃんがニコニコして待っていた。各自鍵を指すよう促される。木製のチャチな造りのロッカーに鍵を指したが開かない。すると兄ちゃんが別の鍵穴に自身が持つ鍵を指し入れて扉が開いた。どうやら客と係員による二重ロックで安全性をアピールしているらしい。ロッカーの強度も弱いし、チェックも甘そうなのであまり意味が無いような気もする。ひと風呂浴びた後にスマホを回収するのが面倒くさくて嫌だなぁ、というのが正直な感想。


早速全裸になって3人でぞろぞろと人生初の台北サウナへ。随所に油絵風のタッチ描かれたコナンザグレートみたいな西洋人の濃い壁画がみられるのが面白い。これは日本の老舗サウナにもない。
途中でエアロバイクやトレッドミル等の健康器具が置かれているエリアがあったのだが、何も隠さず全裸で運動している地元のオッサンがいたのには驚愕。


浴場はかなり広い。真ん中に円筒状のタンクのようなものがあり、その周辺に蛇口やらシャワーが着いており、ここが洗い場のようであった。日本では端っこのほうで横一列が当たり前だが、ここでは円になって身体を洗うのがスタンダードのようだ。施設の中央にある関係上、洗体中に他人の気配を頻繁に感じるので妙に落ち着かない。

全裸でプール、自発的熱湯風呂という狂気

ここのサウナ最大の特徴は全長15メートルはある異常にデカイプール。プールのような巨大な水風呂ではなくプールそのものがある。勿論、全裸で入るレギュレーション。中世欧州風タッチのモザイク画をバックに中年太りの地元のオッサン達が全裸で思いっきり泳いでいる姿は異様そのもの。
早速3人で入ってみる。
冷たい!
室内プールのため、温水プール並の水温だと予想していたが、夏休み前の地元東北の室外プールを思い起こさせる冷たさ。22度くらい。まだ洗体のみで、身体が暖まっていない我々には冷たすぎて耐えられるシロモノでは無かった。


すかさず隣に設置してあるバイブラバスに入る。だがこれが異常に熱い。熱湯で有名な台東区にある江戸っ子銭湯の燕湯並の熱さ。46度くらいはあるのではないか?入っていて身体に痛みが走るレベル。床から湧いてくるバイブラの泡のせいで、グツグツと煮滾るマグマのように思えてならなかった。
この手のアクティビティに全く慣れていないSは脚をつけただげでギブアップ。慣れている僕とBも3分くらいしか浸かっていられず。


だが体表が無理やりポカポカになっているため、この状態で東北屋外ばりの冷水プールに入ると丁度よい塩梅に思えるから不思議だ。他に入れる所がなく戸惑っているSを尻目に全裸での水泳を楽しむ僕とB。久々に全力でクロールなりバタフライが出来てかなり楽しかったのだ。加えて全裸で泳ぐと股間部分の水流抵抗が予想以上に強く、真面目に泳ぐ場合はピッチリしたお召し物がなければ厳しい、という何の役にも立たない、そして容易に予想できる事を経験で裏付けできたのは中々貴重な体験であった。


Sは仕方が無いので洗い場でシャワーを浴びで体を丁度よい温度に温め直していた。哀れS!

普通すぎるドライサウナと殺しにかかる水風呂


ここはサウナなのでメインは2基あるサウナ施設になる。
1つ目のドライサウナは日本にもあるなんてことの無い物。平均的な日本のドライサウナより温めに感じた。ただ壁がガラス張りで外がばっちり見えるのが日本のそれとは違う所だが、それ以外特筆すべきものは無かった。
これまで良くも悪くもエクストリームな施設ばかりだったので拍子抜けするも、味わい慣れたドライサウナにBと二人でどっぷり浸かる。そもそも特異な経験をするためではなく、異国のサウナで普通にリラックスすることを目的としてここに来たので至極当然の時間の使い方である。


サウナの後、と言えば勿論水風呂。プール以外にもちゃんとした水風呂らしい水風呂があったので早速二人で入ったのだが

これが罠であった

水温5度

完全に油断した状態でドブンと入ったため、誇張ではなく本当に心臓が止まるかと思った。


例の溶岩グツグツ熱湯で感じた痛みとは違うレベルの、一瞬で生命を奪うかのような冷たい鈍い衝撃に身体が一瞬で包まれる。
1秒も経たずに脱出。なんというエクストリーム!


一方、地元のおっちゃん達は何の躊躇もなく頭がまで一気に浸かり、何事もなかったかのように平然と立ち去る。
台湾のおっちゃんサウナーは強過ぎるだろ。

スチームサウナは拷問部屋

その後、最後の設備であるスチームサウナを味わう。実は僕もBもスチームサウナは然程好きではない。サウナの醍醐味である心地よいギリキリの熱さを感じられ難いのと、蒸気のせいで汗をかいている、という実感か湧きにくいからである。


だがここのスチームサウナは違った。

沸騰した水蒸気をそのまま流しているのではないかと錯覚とするほどの超高温の蒸気が一寸先もわからぬほど部屋中に満ち満ちている。あまりに熱すぎる蒸気故に、呼吸をするのも辛い。口呼吸では気管が焼けこげる。鼻呼吸では鼻孔の毛細血管が焼き切れて鼻血が出そうな錯覚すら覚える。また常時超高温スチームが尋常じゃないほど放出されているため、室内の気流が常に流れている感覚があり、そのせいか耳の穴にも容赦なく高温の蒸気が流れ込んでくる。三半規管が焼き切れて平衡感覚が狂う恐怖すら湧く。


そんな豪快過ぎる造りのスチームサウナに完全にたじろぐ我々であったが、地元台北のおっちゃん達は何事もなく浸かっていた。全く先が見えない高温の蒸気に囲まれながら速射砲の如きスピードで会話している二人組のおっちゃんの甲高い北京語が、地獄の密閉空間に反射していた。


まともに浸かれる施設がドライサウナしかないハードコアなサウナ施設、これが台北のサウナなのか。サウナ偏差値は高めだと自称していたが、完全に井の中の蛙であった。僕はドライサウナとプールを何往復かして、普段のサウナルーティンをこなす事でお茶を濁していたが、僕よりサウナ偏差値がかなり高いBは果敢にもハードコアスチームサウナ、マグマ熱湯バイブラバスに何度も挑戦していた(5度の水風呂は誇張抜きで生命の危機を感じるためBもさすがに浸からず)尚、サウナへの興味が皆無であるSは、スチームサウナを一瞬体験した後、さっさっと休憩所へと足を運んでいた。

昭和のキャバレーのような休憩所


サウナで闘い続けるBを置いて、僕もSが待つ昭和のキャバレーの如き内装の休憩所に逃げるように向かう。日本の老舗オッサンサウナのそれとコンセプトが全く一緒なのが面白い。ゴワゴワした囚人服みたいな肌ざわりで丈の短いバスローブを着たオッサン達がしかめっ面で寛いでいるのも一緒。最近流行りのリゾート地を思わせる洗練された造りのものとは対極に位置するこの種のキッチュさは、却って居心地の良さを覚えるのは僕らもオッサンに足を半分突っ込む年齢だからだろうか。


休憩所では無料でお茶、有料で軽食と酒が楽しめるシステム。ここで食事と酒はちょっと勿体無いと思い無料のもので我慢。漢方では冷たいものはご法度なので温いことこの上ない。


お茶を貰いにいった際、何故か少量の水が入った紙コップを店員のおばさんから渡された。訝しんでいるとこれが灰皿代わりになる、とのこと。台湾は室内喫煙が法律により原則禁止であり、当然店側は灰皿を用意できないが、その抜け道として水入り紙コップを用意しているとのこと。これがあれば室内喫煙オッケー!という理屈がよくわからんが、この抜け道のお陰で休憩室は無事紫煙に包まれていたのであった。


異常に柔らかい椅子に座り台湾版のフラッシュ、プレイボーイのような低俗雑誌を適当に眺めて休む。台北のカストリ雑誌は日本のそれと違いモロな写真はない。下着程度である。だが卑猥な内容であることは字面だけで想像がつく。威厳ある繁体字が下品な原色で彩られて随所に散りばめられている記事を読むのは中々な異次元感覚。

台北サウナの休憩所で人生初の中国象棋


30分ほどしてBがやっと灼熱極寒地獄から脱出。彼と色々休憩所内を探検してみると中国象棋が置いてあったので、人生初めての中国象棋をBと指す。

フリーWi-Fiが繋がる環境だったので、スマホで駒の動かし方を調べながら探り探り象棋を打つのは楽しい。全く何の知識もなく指し始めたのであるが、中国象棋はトリッキーな動きをする駒ばかりで頭が混乱する。何故故こんな動き方に決めたのか、そしてこれが定着したのか。これが中華民族の奥深さなのだろうか?そう言えば麻雀もえらい複雑なルールであるし(日本式と中国式と台湾式と香港式でも全然別ゲームというくらい違うが)複雑なゲームを産み出し、それを定着させる事に長けているのが彼らなのかもしれない。


象棋自体はお互い大小さまざまなポカを交互に繰り返しながら手が進み、最後に僕が致命的なポカをしてBの勝利で人生初の中国象棋は終わった。尚、Sは我々を尻目にスマホのアプリで日本の将棋を打っていた。


1局終わった所でやっとサウナを出ることにした。体力を回復するために入った筈がピーキー仕様の台湾式サウナは却ってダメージを残す事になった。ほとんど入っていないSはピンピンしていたが、長時間闘っていたBは副交感神経が麻痺しているのか虫の息、というのが皮肉である。


外に出るとすっかり雨は止んでいた。このサウナ訪問は僕とBの個人的な嗜好に基づくものであったため、次はSの要望に答え、ちょっとマイナーで観光客があまり来ない夜市と、電脳系のジャンク品を売る場所へ赴くことにした。

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