見出し画像

#27  略奪品満載の博物館へ行く 30代からの英国語学留学記 2018年2月23日

2回目の金曜日。

先日の水煙草の件と冷めたフィッシュアンドチップスを食べざるを得なかったことで、終日何となく気持ちが沈んでいたが一日を無事こなす。

僕より先に入学していた、現役大学生の日本人男性が今日が最終日とのこと。
温かく皆からfarewellされている。

結局彼とは殆んどろくに会話を交わすことはなかった。
僕が学生時代、経済的事情で断念した留学を問題なく出来ている若者への醜い嫉妬故に、一方的にこちらがコミニケーションを拒絶してしまっただけなのだが。

それに彼からしても30代の日本人のオッサンとなんぞ絡みたくない、というのが華の大学生なら当たり前の感覚だろう。

これでクラスには日本人が僕含めて2人だけになった。

僕以外の日本人はというと、前回のエントリでも触れたまだ十代半ばの女子高生。

親の戦略で日本の高校進学ではなく、語学学校に入れて英国大学へ一足飛びに入学させる算段なのだろうが、豊かな産まれではない僕にとって、一番嫉妬する嫌いなタイプである。

むろん、彼女には当然罪はない。


彼女は若いアジアンとのことで、ラテン系男子から人気があり、休み時間はいつも彼等とつるんでいる。

モヤモヤした気持ちになる。30代のアジアンなオッサンは英国ではカースト最下位なのだ。
訳もなく落ち込む。

金曜日は午前中だけ授業が終わるので、午後は授業で何度かオススメされた、シティセンターの外れにあるPitts Livers MuseumとNatural History Museumに行くことにした。

画像1



カルロスとオヌールも誘ったのだが、二人からお断りされる。

カルロスはロンドンでHSBCの知り合いとディナーの約束をしており、またアルゼンチンの家族と友人から頼まれたお土産を比較的人が少ないであろう金曜午後に事前に買っておきたい、という真っ当な理由があり、丁寧にお断りをされた。

一方、オヌールはミュージアムに全く興味がないから行きたくない、というシンプルな理由。

彼はどこかで仕入れてきたのか、バスで30分近くかかる郊外に上手いと噂のトルコ料理屋があるらしく、そこでランチを食べようぜ、とクソみたいな提案をしてきた。

そこまでしてイギリスで何度もトルコ料理を食べたくないし、オヌールと二人きりは辛いだけなので問答無用で却下し、一人で行動することに。


だがオヌールの誘いを断るのは非常に困難で、何度もNOと強く拒絶しても全く折れず、それどころか彼の申し出を断る僕が非常に不義理で最低な奴である、と口汚く罵ってきたため困った。

彼曰く、僕は「IMPOLITE SHAMEFUL HORRIBLE GUY」らしいが、何故そこまでしてオヌールは僕とメシをサシで食べたいのか、正直意味がわからない。

だがそこで白人様のカルロスの出番


You are crazy.You are terrible.とお馴染みのスペイン語訛りで怒鳴りつけたので何とか無事事は済んだ。

it's joke,it's jokeと彼はヘラヘラ笑っていたのだが、何だか腹立つ。

この展開、何度出くわしたことが。
いやはや白人バンカーのカルロス様々である。

画像6


身軽に一人でミュージアムへ向かう。

結論から言うと、ミュージアムは2つともかなり良かった。

流石世界を股にかけて略奪の限りをつくしてきた大英帝国であり、世界各国の珍奇なものが非常に多くそろっている。

これで入場料タダなんだからすごい。

そして平日というのもあるかもしれないが、両方とも若干中心部から離れたところにあるからなのか、あれほど沢山いた異国の観光客は少なく、ほぼ白人の英国人しかいなかった。


前者Pitts Livers Museumは、軍人であるピット氏が趣味で集めた世界各国の武具の展示を中心に、旧植民地から集めた様々な珍奇なものが収蔵されている如何にも英国らしい博物館である。殆どのものはオークションで買ったものだ、と明記されていたがそれが嘘であることは明白である。

画像2


目玉はアマゾンの原住民の干し首。

アマゾンの一部原住民の中には、敵の部族の首を切り落とし、頭蓋骨と脳などの臓器を抜き取ってミイラ化したものを部族繁栄や一族の復讐の印として作るという習慣があったらしい。

それに興味をもった一部の白人が、件の原住民から物で釣って干し首を買い集め出すと、当初の目的から外れた私利私欲目的での干し首作りが盛んになり、アマゾン内での部族間闘争が激しくなり多くの部族が衰退し、白人入植者のアマゾンへの侵略が加速したという如何にも白人らしいクソみたいな歴史がある。ちゃんとその手の記載が博物館にあるのはある意味立派とも言える。

画像3

その何とも呪われた歴史のある干し首であるが、実際生で見てみるとあまりに精巧すぎて本当にこれが人間の生首とは正直思えなかった。あまりジロジロ見るものではないよなーと思ったが、白人女子たちがキャーキャーいいながら干し首とセルフィー撮りまくっていたのは面食らった。文化の違いかこれは?

あと理由は不明だが日本の能面が沢山展示されていた。アマゾンの干し首と同じカテゴリーにされているのは日本人としては如何なものかと思う。

画像4

19世紀末に京都のオークションで買った、と書いてあったが絶対嘘だろう。略奪、もしくは明治日本の混乱下に騙して手に入れたものではないかと

あとは東南アジアやアフリカの遺跡から切り出してきたような石造の仏像やレリーフなんかも大量にあった。入手経路に関する説明が全くなかったが、これこそまさに略奪品だろう。

画像5


あとは創設者のPitt氏が軍人らしく、世界各国の武具が至る所に展示されていた。戦争の道具と異国の奇異な品々が同じ空間に展示されているのは、略奪で世界各国から奪いました、と言っているようなもんだろ、と心の中で何度も突っ込みながら展示を楽しんだ。

画像7


画像8


後者のNatural History Museumの方はと言うと、はく製や骨格標本がずらり。ガラスケースで隔離されているものもあったが、日本のそれとは違いかなり近くではく製や標本を見ることができるのは凄い。

画像9

奴らが私利私欲で絶滅させたドードーのリアル骨格標本を見れたのは中々感動的だった。ドードーのリアル標本があるのはオックスフォードだけらしく、オシャレなカフェやパブにはドードーをマスコットにした店がちらほら見受けられるが、自分たちの汚い欲望で絶滅に追いやった異国の生き物をシンボルにするのは正直どうかと個人的には思う

画像10

これぞブリカス仕草。過去の不幸な出来事は所詮過去の事なのである。


これで2週間が終わった。まだオックスフォードしか行けていないのだが、さすがに飽きてきた。

中心部はそこまで大きくない街なので、2日あればほぼすべて見どころは抑えられてしまう。

来週末こそはほかの場所に行きたい。そしてもっと英語をうまくならねば。気持ちだけが焦る。そして孤独感が募る

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?