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(元)駐妻のぼやき⑤

駐妻の「ビジネス」についてのぼやき

起業する駐妻さんを見かける

今はどうだかわからないが、私が駐在妻だった頃はインターネットを駆使して起業・開業をしたり、何かの活動をする駐妻さんをよく見かけた。

そして、それらは駐妻さんが始めるビジネスなだけあって、ターゲットもまた駐妻であることが多かった。要はよく宣伝が来たのだ。
事業の内容は有料のメーリングリストや占いに講座、とりわけコーチングやアンガーマネジメント系のものが多かった。他にも聞きなれない片仮名表記のビジネスがあったような気がするが、現時点では思い出せないので割愛する。

こうしたビジネスの始め方や活動を眺めていて、よその駐妻さんの家事育児以外にも余力がある熱意に感心しながら、ふと気がついたことがある。

形のないサービス、多すぎでは?

駐妻ビジネス、形のないもの多すぎな件

一回気になりだすとどうしても考えてしまう。家事と育児の合間の細切れの自由時間、私はビジネスやボランティアという社会活動よりも、こうした無駄なことを考えて過ごしていた。

なぜ形のないサービスを提供する事業を始める人が多いのだろう。
元手が要らないからだろうか。確かに海外引越で、渡航前から起業するつもりで商材などを色々持ち込むのは難しかろう。

コーチング、コンサルタント、占い…実際に現場を見たことはないが、どれも客の話を聞いて指導やアドバイスをするイメージだ。
言い方は悪いが、ある程度の才能があれば身1つでできそうな仕事だと思った。なんだかうさんくさいな…と、主催者の肩書を見てみると公的な資格をもって開業している人が少ないように思えた。

『キラキラビジネス』を知る

帯同先で駐妻なりにビジネスを始めた人々を疑惑の目で見て、色々と検索していた時、日本のサイトで『キラキラビジネス』『キラキラ起業女子』という言葉を知った。

・美容や心理系コンサルタントなどの分野に多い→設備とそれに伴う資金が要らない
・SNSで豊かな生活をアピールして集客
・知識がない人でも簡単に起業できるが、自営業や副業の枠を出ないことが多い

リンクを貼った記事の、キラキラビジネスの特徴を要約してみたが、他のサイトや記事でも似たようなことが書かれていた。

特徴を見る限り、『キラキラ起業』は駐妻とも親和性が高い。

海外赴任にはある程度の持ち出しがあり、駐妻になるのに退職していれば資金は潤沢でない人が多いだろう。
退職し、日本の家族や友人と離れた分、近況報告を兼ねたSNSを始めてどっぷり浸かる駐妻も多い。
日本の慣れ親しんだ生活や仕事から切り離され、自己実現欲求が強くなってしまう人もいる。

キラキラビジネスは、「仕事をしたい」「何者かになりたい」という欲求を叶えられるものだ。駐妻でも「やりたい!」「やろう!」という気になるのもおかしくはない。

それはそれとして

調べれば調べるほど駐妻が起業したくなる気持ちはわかったが、肝心のビジネスへの信頼はさらに薄れた。

そもそもなぜ私はこんなに躍起になって赤の他人の活動を調べているのだろう。
私はもやもやとした怒りを覚えていた。

何故なら、彼女らの提供しているサービスは胡散臭いのに料金が高かったから。

講座に参加をして話を聞くだけで50ドル、もっと少人数でコンサル等を受けると一時間あたり数百ドルの世界だった。

これで身元のしっかりしている人なら、必要があれば頼りたいと思うところだが、実績が分からない人や所有資格の実態が怪しい人もいた。

同じ日本人だからといって喰い物にされる謂れはない

彼女らの事業説明の中には、あからさまに「日本人向けのサービスだから、海外にいても日本語で稼げる」という下心が透けて見えるものもあった。
確かに、起業側だったら美味しい話だろう。辛いこともある海外生活をしながら起業、客は日本人、宣伝も地域の日本人向け情報サイトに無料で載せることができる。

しかし、客側にしてみればどうだろう。
こうしたビジネスの実態は、起業者の話を聞いたり講義を受けることがメインのようだ。私は日本で付き合い上仕方なくこうした講座を受講したが、自己啓発系は本に載っているような内容ばかりで、ワークショップも金と時間を使ってまでやる意義を感じられない物ばかりだった。
悪い言い方をすれば、「他所のおばさんの話を聞いて数千円~数万円払う」のである。

私は大抵の心身の不調は生活習慣、気の持ちようと気候によるものだと思っているし、それらを改善しても悩みが消えなかったら病院に行く。
子供を叱りすぎてしまって悩むくらいなら、次から全精神力をもってブレーキをかければいいだけのことだ。
知らない他所のおばさんの話をありがたく聞いても、結局その後の自分の悩みが改善するかは実行する時の自分次第である。
それならおばさんの話は聞かなくてもいいんじゃない?時間とお金を使ってまでやることだろうか?

駐妻ビジネスならではの問題点

ここまで考えて、要は私がキラキラビジネスに与しなければいいだけの話と気づくのだが、私がこの時一番困ったのは、嫌悪感を抱くような「お仕事」の宣伝が、日本人向け情報メーリングリストに載って送りつけられることだった。

「嫌なら見なければいい」の手法が使えない。なぜなら同じメールに私にとっては重要な現地子育て情報も載っていたからだ。
最終的にメーリングリストそのものから退会してスッキリしたが、これが海外在住の日本人コミュニティ内で勧誘・宣伝されていたらもっと面倒くさかっただろうなと思う。

また、当時日本のサイトや記事では『キラキラ起業』への批判や問題点がたくさん出ていたが、海外在住の日本人向けサイトや掲示板には怪しいビジネスへの注意喚起などは全く見当たらなかった。
私はたまたま興味()をもって調べたら本国のサイトに行きついたが、海外に住んでいると、日本での小さなトラブルやニュースはよほどアンテナを張ってないと入ってこない。


海外で駐妻をやっているからこそ、キラキラビジネスを始めてしまう人もいるかもしれないし、都合の良い「金の出る袋」になってしまう人もいるかもしれない。
インターネットやSNSのおかげで、おそらく昔よりはずっと駐妻生活は楽になっただろうけど、新しい危険もある。
当時私が見かけた人たちが、今どうなっているのかは全く興味が無いが、「本で読めば済む話だったな」とか「あれであの料金?」となる人が少しでも減ったらいいなとは思ってこの記事を書いた。


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