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悩んだ時は諦めよう。

釈迦は説いた。
赤ん坊が泣くのは、生まれ落ちたこの世界が、あまりにも厳しいからだ。

当初、この言葉を聞いて、仏教とはなんとも無慈悲な宗教だなと思った。むしろ、幸せへの思考放棄していないか?とさえ思った。

だけど最近、いよいよ私もその抵抗に諦めを覚えてきた。人生は苦行かもしれないからだ。


前々から思っていたことがある。
なんで、仕事や家族、結婚、離婚、子ども、友人関係、お金、住む場所など、様々なことで死ぬほど悩まなきゃいけないのだろう。
そして、どんな道を行こうとも、様々なトラブルがあるし、解決したと思ったら、空虚感があり、寂しくなり、侘しくなるのだ。なぜ、こんなに日々苦しいのだろう。

そんな時に、ふと答えを探すかのように、京都にふらっと、一人旅行をした。

そこで、銀閣寺と龍安寺で枯山水という庭の様式を知った。どうやら、禅の概念を表現しているらしい。
なぜか私は、それに惹かれた。

確かに、銀閣寺と龍安寺の石庭を見ていると、それらの石庭がなぜか、今自分が悩んでいる問いそのものに見えてきた。
「あの石をこう例えると、こうだよな。」

そして、禅についてもう少し知りたかったので、東京駅のオアゾにある丸善で、鈴木大拙さん著書『禅』を買った。


なんとなく、自分の中で辻褄が合ってきた気がした。
釈迦は、問いは自分の中にしかないと言ってる。これは、アドラーの心理学でも、課題の分離という概念に似ている。最終的にその課題の責任を引き受けるのは誰か、ということだ。彼らの生きてきた時代、アプローチも全く異なるが、問いは自分の中にしかないとのこと。

そもそも、問いとは何なんだろうか。
おそらく、課題は複合的で、歪で、屈折している現実そのもので、それを解決しようとすることは、相当な苦しみが発生する。
病気、死、誕生、老化、これらは非常に極端だけど、それに付随する様々な苦行は、いつだって残酷で、えげつない。そもそも、問い自体、解決不可能な場合もある。


人生は苦行であり、現実はカオス。
不思議と、その考えを受け入れたら、悩みが薄れてきた。

今私が悩んでいる仕事は、どうやったら全国にある事業所のパワーバランスを、国際政治に倣って、上手く泳ぎきるかだ。

これの模範回答は、みんな仲良くだ。
だが、それは夢物語だ。解決不能な類いの課題であることに気づいた。

そこで、国際政治を参考にした。国際社会は、カオスで、コントロールする者がおらず、自国の国益に基づき行動している。たまに、アメリカが世界のリーダーを称することがあるが、それも昔の話。今は、インド、中国、ロシア、アメリカを筆頭とした超大国とどうお付き合いするか、日本は悩んでいるところだ。シーパワーで他国からの干渉は受けにくいことはラッキーで、吹けば消し飛ぶような力しか持っていない日本が生き残るには、平和のための自由主義諸国のアジアを主とした協調路線の維持だ。外交三原則というやつだ。とても、賢いサバイバル術だと思う。
だが、自国の利益だけではなく、お得意の経済発展を武器に、他国への交渉材料として切り出している。リソースを提供することで、相手にメリットを知らしめ、平和を維持する。非常に首尾一貫とした外交戦略で、このぐらい明確でないと外交は、やっていけないのかもしれない。
内政はというと、憲法を主とした法治国家を樹立し、民主主義的な比較的治安の良い国家が成立している。戦国時代のように、戦は無いのだ。非常にコントロールされている国だと思う。内政が安定していることは、外交上のメリットもある。外交は単なる取引で、ビジネスで、安定したお付き合いを望む。内政がしっかりしていることも含めての評価だ。


暴力的で、戦争が盛んに勃発する世界と、民間会社を一緒にしたら怒られそうだが、実際世の中は、そんなものかもしれない。

地方の事業所も含め、そこでの暮らしがあり、生活があり、賃金を稼ぐために仕事を頑張っている。だから、事業所ごとに風土もあり、ローカルルールもあり、利害関係もある。
私は最近、横断的プロジェクトを通じて、その利害関係やパワーバランスに辟易していた。面倒で仕方なかった。
それを解決する手段として、統一国家的な発想で、全員が手を繋ぎ協力し合う仕組みを画策していた。マニュアルを作ったり、雑談の場を設けたり、とにかく手と手を取り合うような仕掛けを施していた。

だが、どうにもうまくいかないし、違和感もあった。なぜなら、皆自分のことで精一杯だし、行動原理が自分の職場を改善する方向でしか動いていないからだ。
思えば嘆く事でもなく、当たり前のことだ。
皆、自分の家族が大事で、それを守るためには容赦しない。自分にメリットが無ければ、何も動かないだろう。人は、メリットとデメリットを常に天秤にかけて生きているからだ。

ということで、路線を変えることにした。その現実を受け入れた上で、打算的で、ドロドロした他事業所との外交をしようと思った。

まずは、自身のメリットを考える。
次に相手のメリットを考える。
さらに、全社的なメリットも考える。
近江商人の三方良しのモロパクリだ。

この考えから行くと、私が所属する比較的小規模な事業所は、外交上非常に不利だ。世界平和作戦は、それを解消するための策だったが、ダメということだ。

我々は何を欲しているのか?
他事業からみて、我々と付き合うメリットは何か?
我々は何を全国に提供できるか?
物量と金で負けているのなら、何に秀でているか?
そして、どうやったら事業所の存在価値を高められるか?

悩みは尽きない。
だが、禅の発想で、苦行を受け入れて、物事をあるがままに見ることで、少しは前に進めそうな気がした。


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