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地域チャレンジャーと企業の出会いを生み出す場『めぐるめくSoup up!』初開催

めぐるめくプロジェクトでは、各地域を訪問する「食卓会議」や、地域のチャレンジャーを応援する「めぐるめ倶楽部」などの開催を通して、地域でタベモノヅクリ(※)に挑む方々の出会いの場を模索してきました。

※タベモノヅクリ:めぐるめくプロジェクトで定義している「食の生産・加工」を表す言葉。食べ物+モノづくりの造語。

今回、「地域で食の課題に取り組む人々だけでなく、地域の未来を一緒に考えていく企業が出会う場があれば、より大きな“めぐり”が生まれるのではないか」と考え、「地域チャレンジャー×企業」をテーマにした『めぐるめくSoup up!』を開催しました。

「めぐるめくSoup up!」とは…地域チャレンジャーとさまざまな企業とが出会い、語り合い、“soup(スープ)”のように混ざり合っていくことで前向きな共創が生まれることを目的にしたプログラムです。都市部ではなかなか出会うことのできない、食の課題解決に取組むチャレンジャーの想いを聞き、実際に食を味わいながら、地域と企業の価値共創の機会をづくりを目指しています。

会場参加とオンライン参加合わせて、100名近くが参加した本プログラム。食品メーカーや金融機関、旅行業など領域を超えた多様な企業の方々が参加[1] してくださいました。めぐるめくプロジェクトの価値について改めて確認するプレゼンテーションや、食に関わる方々をゲストにお招きしてのディスカッションなど、盛りだくさんの2時間をレポートします。


人が集まって、成し得ることがある

広瀬「地域の食におけるチャレンジの循環が、どんどん生まれていく世界にしたい。そのためには、地域や職業の枠を超えた多様なプレイヤーの関わりが重要です」

 「めぐるめくプロジェクトが育む都市と地域の豊かな関係」と題し、これまで各地域でおこなってきた取り組みや連携地域を紹介しながら改めて語ったのは、本プロジェクトが持つ可能性です。

広瀬「この半年間、いろいろな地域を訪問し、さまざまな方と対話をさせていただきました。めぐるめくプロジェクトが、これから地域と都市に何を提供できるのか。いまだ模索中ではありますが、少しずつその価値が見えてきたところです」

 広瀬が実感している、めぐるめくプロジェクトの価値は「地域課題への理解」「地域との関係構築」「様々なプレイヤー間の協創」の3つ。なかでも、“理解すること”が最初の大きな一歩だと広瀬は言います。

 広瀬「本やインターネットの情報だけでは、地域のリアルな姿を知ることは難しいと感じています。地域とともに歩む上で重要なのは、いかに解像度高く“知る”ことができるのか。地域によって人や環境が違うことを実感しているからこそ『地域とはこうだ』と確実に言えることはありません。ただ、直接足を運び、関係を築くことで、解像度の高い地域の現状をお伝えしていくことはできると考えています」

 地域に赴き、直接お話を伺いながら、関係をつくっていく。めぐるめくプロジェクトでは、その実直な姿勢から地域との関係が始まると考えています。そのためには、各地域の窓口になってくださる「エリアハブ」と呼ばれる方々も、本プロジェクトにとって欠かせない存在。そしてまた、彼らと企業をつなげ、相互理解の場をつくることも、大きな役割です。

 広瀬「私の好きな言葉で『和醸良酒(わじょうりょうしゅ)』というものがあります。日本酒の世界の言葉で『力を合わせれば良いお酒ができ、良いお酒を飲めば良い関係が生まれていく』という意味だそうです。私たちがやろうとしていることは、ひとり、ふたりではできないことです。今日の会場にお集まりいただいているみなさんのように、多様な領域から多くの人が参加するからこそ、成し得ることがあるのではないかと思います」

なぜ、いま「めぐるめくプロジェクト」なのか

今回の『めぐるめくSoup up!』では、2つのディスカッションが行われました。まず、1つめは、めぐるめくプロジェクト事務局メンバーとして共に活動する4社でのトーク。シグマクシスの田中がモデレーターを務め、三菱地所の広瀬、ロフトワークの玉木、70seedsの岡山、シグマクシスの福世が登壇しました。

テーマは「なぜ、いま『めぐるめくプロジェクト』なのか」。プロジェクトを共に走る仲間として、どのようにめぐるめくプロジェクトを捉え、それぞれどこを目指しているのかを語ります。

田中から「今までも似たような活動があったと思う人もいるのでは」と、本プロジェクトならではの特徴は何か、聞かれた登壇者の言葉の一部を抜粋してお伝えします。

玉木「生産者と生活者がディスカッションしながら、一緒にものづくりをする交流型のプログラム『めぐるめ倶楽部』では、オープンイノベーションの可能性を感じています。一個人から大企業まで、いろいろな立場の人がフラットに交わることって、これまで世界的に見てもなかったのではないでしょうか。枠組みを超えて価値を協創できる、日本発の仕組みになっていくと思っています」

ロフトワーク 玉木

岡山「私も感じているのは、地域や領域を超えた何重ものつながりが生まれていることですね。例えば、同じ地域の生産者でも、作っている作物が違うだけで交流がないことが多々あります。めぐるめくプロジェクトの『食卓会議』では、地域内のつながりを生む場としても機能しています。さらに、地域外の人、テクノロジーやクリエイティブなど領域の違う人たちが交わっていく。これまでは閉じられてきた地域や農業などの課題が、一気に外の世界とつながっていく可能性を、このプロジェクトで感じています」

 

広瀬「いわゆる“地方創生プロジェクト”とは思っていません。むしろ今、地域のなかで新しいマーケットやコミュニティができていて、そこで東京の果たす役割ってなんなんだろう、と考えさせられることも多い。地域で活躍するおもしろい方々と一緒に活動することが、他地域や都市の個人や企業にとっての成長につながり、結果的に日本全体の底上げにつながってくんじゃないか、と考えています」

三菱地所 広瀬

 次に、「めぐるめくプロジェクトの活動が、どんなインパクトを持ってるのか」という問いかけに対しても各社思い思いの返答がありました。例えば、経済的なインパクト。本プロジェクトで生まれるつながりによって、今後新しい食品、流通、ビジネス機会が生まれてくると福世は言います。

 福世「地域のなかで眠っているアセットが、新たな人とのつながりによってマネタイズしていく可能性は十分にあります。今まで食に携わっていなかった方々が、このプロジェクトを通してビジネスを生むことで、新しい職種までを生む場ですらあるんじゃないかなと思っています」

 そのほか、「地方と連携していくことが良い採用や人材確保にもつながる」「海外進出することによる経済価値の可能性」「従来のマスに広く届ける方法ではなく、小さくとも本質的な価値を求める市場に合った動き」などの意見が飛び交いました。また、経済のみならず、社会的インパクトの可能性についての発言も。

 福世「地域と共に歩むということは、地域が抱えているさまざまな課題を紐解いていくプロジェクトになる可能性もあります。プロジェクト名に含まれる『めぐる』の言葉のとおり、うまくいった事例をどんどん各地域に横展開していきたい。小さな社会課題解決が、たくさんの地域で積み重なっていくことで、 大きな社会課題の解決につながるのでは、と考えています」

 会場では、話を聞きながら頷く参加者の様子が見られました。さまざまな可能性を持つ本プロジェクト。今後どのような方々が関わり、めぐりが生まれていくのか楽しみです。最後に、参加者に向けて「何か一緒にできることがあれば」と登壇者が呼びかけました。

共創で加速する、食の多様な価値実現と社会課題解決

 続いて、パネルディスカッション第二部として、食の分野で活躍する3名をゲストに迎え「共創で加速する、食の多様な価値実現と社会課題解決」についてお話を伺いました。モデレーターは、シグマクシスの福世です。

【登壇者のご紹介】

三宅 紘一郎
ナオライ株式会社 代表取締役 

日本酒を低温で浄溜して造る熟成酒「浄酎(JO-CHU)」を生産する、瀬戸内海の久比・三角島に本社、神石高原町に酒蔵を構えるSAKE and BIOTECH スタートアップ。各地の酒蔵で余ってしまっている日本酒から独自の手法でアルコールを蒸留、ウイスキーのような価値の高い商品に作り変えています。「浄酎(JO-CHU)」生産時に生まれる発酵エキスのアップサイクル事業、生産工程を体験できるサステイナブルツーリズム事業も進めています。

→三宅さんの思いを伺った広島・久比の食卓会議の様子はこちら。

古津 瑛陸
株式会社LacuS 代表取締役CEO

大学2年生で会社を設立し、今春2期目に突入する大学発ベンチャー。99歳の曽祖母がミキサー食を食べていたのをきっかけに、まだまだ顕在化していない高齢者の低栄養問題の解決に目を向けました。「高齢者食×完全栄養食」という新しい市場の開拓に取り組んでいます。

→古津さんがチャレンジャーとして参加した新潟めぐるめ倶楽部の様子はこちら。

井上 豪希
TETOTETO Inc.代表取締役 /食のクリエイティブディレクター

商品開発やブランディング、店舗開発など、食分野の事業デザインを生業とする食のクリエイティブディレクター。主に食の地域課題をワクワクに変換し、ビジネスや6次産業化につなげています。料理と料理以外のスキルを掛け合わせて活動する新しい料理人。

 会場では、ナオライのお酒に使われている広島産「ミカドレモン」を使ったレモネードと、完全栄養アイス「ME ICE」が配られ、参加者は試飲・試食をしながらディスカッションを聞く形式が取られました。

広島産「ミカドレモン」を使ったレモネード
完全栄養アイス「ME ICE」

福世より投げかけられた「地域で食に関わるおもしろさとは?」という質問から、第二のディスカッションのスタートです。

井上「地域の『自分たちの抱える課題をどうにかしたい・もっとキラキラさせる方法はないのか』という感情から出てきたものが非常に個性に富んでいる印象です。特に事業継承をしていく若い方たちが世の中の動きに敏感で、彼らが作っているプロダクトには、尖ったものが増えてきたのがおもしろいですね」

TETOTETO 井上 豪希さん

 三宅「本来、北海道と九州でつくる日本酒は全く味が違うはずですが、この40年ぐらいで金太郎飴のようにどの地域も同じ味になってきています。今ご試食いただいているレモンも含め、その土地と風土にあった特徴を活用して、そこでしか作れないものをつくるのが、地域ならではのおもしろさかなと思います」

 そんな地域のおもしろさが、「他地域や都市部とのコラボレーションでどのように変化していく可能性があるのか」という質問に対しては、長野県から新潟県に移住した古津さんの発言が印象的でした。

 古津「もともと地域にいる方々にとっては当たり前でも、外から見ると輝かしい価値のあるものがたくさんあります。都市部にいる方々が、地方に来た時に何を体感するのかを客観的に伝えることで、新しいイノベーションを起こせるのではと考えています」

株式会社LacuS 古津 瑛陸さん

古津さんの話を受け、福世からは「企業も同じかもしれない」と発言がありました。企業にとっては当たり前の技術でも、地域で活用することで新しい発見があるのではないか。地域とつながることが自社の特徴や強みを再確認することにもなる可能性があります。

 井上「地域の外から関わる人が『その地域で何をしたいのか』をしっかり据えることは大切ですよね。単純に『儲けたい』という動機付けでは地域に受け入れられない感覚があります。最近は、僕らTETOTETOや、めぐるめくプロジェクトのように、叶えたい世界のために地域に関わる人たちが増えてきたように感じています」

最後に、このあとのネットワーキングの時間も含め、今後どのような企業と出会ってみたいかという質問に、三宅さんが答えました。

三宅「地方で最先端のものをつくっていくんだ、という想いを持っている企業とご一緒してみたいですね。新しい社会の形、人の生き方までをつくるようなことを議論してみたいなと思っています」

ナオライ株式会社 三宅 紘一郎さん

“Soup up!”な化学反応を期待して

 ディスカッションが終わり、最後のプログラムは「ネットワーキング」です。登壇者や事務局と、プログラム参加者のみなさんが会場内で混ざり合い、挨拶や情報交換をおこないました。20分間という短い時間ではありましたが、普段はなかなか出会えない地域や領域で活動している人たちが、互いの活動について熱く話し合う姿が印象的でした。

今回のプログラム名「Soup up」は、「アップグレードする」「活気づける」「おもしろくする」などの意味もある言葉です。本プログラムを通じて、新たな共創が生まれ、まさにSoup upな化学反応が起きることを期待しながらの閉幕となりました。

 都市部ではなかなか出会えない、地域のチャレンジャーたち。地域にいると話す機会の少ない、都市部の企業の方々。めぐるめくプロジェクトでは、今後もこういった多領域な方々の架け橋となるようなコミュニティを目指していきます。

 

めぐるめくプロジェクトでは、地域について一緒になって活動していていく企業やプレイヤーを募集しています。

地域に対して主体的な行動をしていきたい企業・プレイヤー
自社の領域を超えた共創に取り組んでいきたい企業・プレイヤー
地域や日本全体で次の時代を作っていきたいとビジョンをお持ちの企業・プレイヤー

上記にご興味がある方は、めぐるめくプロジェクトWEBサイトよりお問い合わせください。

https://megourmake.studio.site/contact


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