ヒコロヒー 「きれはし」
この本との出会いは古本屋でなんとなく手に取った。お笑いが好きでバラエティ番組をまあまあ見る。最初に読んだ芸人さんの本はなんだったっけ…?
最初のお話は「まるこ」、ちびまる子ちゃんに関してだった。私は静岡出身で清水も近い。家でゆっくり読もう、と購入。
しっかり笑えて、しっとりと優しい
言葉選びや考え方、ヒコロヒーイズムが随所に散りばめられた本書。芸人になってからのエッセイが多い。「宇宙」の回では幼少期から学生時代の話も。やはりこの頃からヒコロヒーさんはヒコロヒーさんなのだなぁと思う。
———そして芸人として活躍できていない時のお話もある。
がっつりシリアスな話の中にもギャグを交え(「まるこ」「彼女たちについて」)、全てがコントの中のような回もある(「コリドー」「ドンキのジーパン」「方言」)。どれもとても読み応えがある。
笑える回で大好きなのが「方言」。
自身が四国の片隅で生まれ、方言に関して一家言ある彼女。この回で出てきたワードで好きなのが「方言餌撒き(えまき)」。
私は妖怪方言餌撒き(現存するのだろうか?)に出会したことはないのだが、出会いたい存在のチェックリストには入った。
もう一つ大好きなのはシリアス回「彼女たちについて」。
同じ所属事務所の女性芸人コンビの二人、通称がんもどきと一筆書き。(どんな通称)
好いた惚れたにあまり縁がない3人。3人で呑み歩き、呑むたびに他愛のない会話をする。餃子の一番美味しい食べ方、部屋に置くゴミ箱の色、宝くじの当選額はいくらが幸せなのか。繁華街のハロウィンへ行ったり、六本木のクラブへ行ったり、ライブに遅刻したのをごまかしてもらったり。笑
そんな2人から「解散します」と、
一筆書きから「辞めます」と言われる。
2人の意思を尊重したい。なんとか気の利いた、背中を押してあげられる言葉を掛けたい。そんな彼女の口から出た言葉は、そんな自分の思いとは真逆と言ってもいい、2人の後輩と一緒にいたいと言う感情だった。
何かを諦めるのは簡単じゃない。ここには2人のコンビ、それ以上に1人と1人の意思があり、もうそれはどうにもできないものだった。
自身の時間と彼女たちの時間の交錯。
それがとんでもない幸運だったと語る。
私にも学生時代からの友人がたった1人いる。彼と時間を交錯した私にもとんでもない幸運が宿っている。
いくつ歳を重ねても、自身を良く言う事には抵抗があるが、こう言わなければ彼に失礼だと思う。
この本を読んで得た気づきの一つ。
このエピソードは涙なしでは読めない。
私がnoteを書いたのも彼の人のエッセイを読んだ影響が少なからずあるだろう。自身を変えたいと思う私は、今までの私にはさよならをしなければならない。
最後にこのエピソードの結びをお借りしたい。
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