黒光りする林檎を食べたい-タルトタタンレシピ-
プロローグ
2023年の暮れ、僕はタルトタタンの魔力に取りつかれていた。
タルトタタンというのはざっくり言うとトロっとしたリンゴがふんだんに載ったタルトだ。タルト部分にはパイ生地を使うことが多く、細かい違いはあるのだけど、ざっくりアップルパイみたいなものと思って貰って大丈夫だ。
僕が初めてタルトタタンの稲妻に打たれたのは、10年ほど前、京都・岡崎のラ ヴァチュールという店だ。
他の有名店と比べても苦みを前面に押し出していて、その奥で酸味と甘みが優しく広がる、そんなニュアンスでまぁえらい美味しかった。(が食べたのが10年くらい前なので味の記憶はかなり怪しい)
それ以降東京でも美味しそうなタルトタタンを見かけると買ってみるのだが、思い出補正だろうか、未だあの京都のタタンを超えるものに出会えていない。
こちらのお店、ネット通販もやっているみたいなのだが、ホール6,000円オーバーとちょっと勇気がいる値段の上に長らくsold outになっている。
ほんなら自分で作ればええやんという下町ロケット根性を胸に、育休中なのをいいことにここ2か月ほど試行錯誤した。
料理オタク系Youtuberから始まり、フランス人のおばちゃんの動画まで十数のレシピを見漁り※1、いろいろ試してみて一応満足いくものに仕上がったのでレシピを公開するよ。
※1 作り方動画ではみんながみんな、名前の由来がタタン姉妹からきていて、彼女たちがタルトを下に敷くのを忘れて、上にのせて焼いたら美味かったところから生まれた的な小話が出てくる。親の説教より聞いた。
今回作るタルトタタンのコンセプト
タルトタタンはレシピやお店によって結構いろんな方向性がある。
が、今回はリスペクトのラ ヴァチュールに倣って、下記コンセプトで作っている。
■今回作るコンセプト
1.ほろ苦さを前面に出す+酸味も感じれる
2.リンゴの食感を程良く残す
3.手を抜くところは手を抜く※2
※2 頑張りすぎると次作ろうという気が起きないのでこれ大事
材料と準備するもの
■材料(18cm型、薄めの場合)
・砂糖80g
・バター20g
・リンゴ5個 ※3
・冷凍パイ生地シート※4
・生クリーム、シナモン(あれば)
※3 リンゴは出来れば紅玉で作ってみてほしい。紅玉は酸味が強く、また煮崩れしづらい品種で、ぐつぐつ煮込むタルトタタンに超合う。最初何回かは他の品種を使っていたのだけど、クタッとした食感(これはこれで美味しい)と甘さ全開になるので、お好みで。ただおすすめはやはり紅玉。
※4 僕は市販の買っちゃってるけど、ガッツある人は手作り生地でいこう(でも味はあんま変わらない気が)
■道具
・タルト型orケーキ型※5
・アルミホイル
・めん棒(生地伸ばすやつ)
※5 紙製の使い捨てのとか100均で売ってた。ぶっちゃけ拘らなければ耐熱容器ならなんでもいい(グラタン皿とか)
作り方
⓪事前準備
タルト型の用意
タルト型(ケーキ型でも同じ)は底が抜けるタイプと抜けないタイプの2種類ある
シフォンケーキとか焼くときは底が抜けると焼き上がったのをスポッと外せて便利なんだけど、タルトタタンの場合、隙間からキャラメリゼした液が漏れちゃうので、あればタルトタタンのときは底が抜けないタイプを強くお勧めしたい
(けど他の料理では何かと抜ける方が便利なので、抜けないのをわざわざ買わなくていいよ)
ちなみに僕は抜けない方を持っていないのでこんな感じでアルミ敷いてます。こんなんで全然大丈夫、なはず
じゃあ作っていきます
①リンゴの下処理
リンゴの皮を剥き、6等分して芯を取ります
取った芯と皮も後で使うので捨てないで鍋とかに入れといてください。
②芯と皮のジュースを作る
リンゴの芯と皮を鍋に入れ、水をひたひたくらいまで入れてグツグツやっていきます
これ個人的にはポイントで、リンゴってペクチンっていう冷えるとゼリー状に固まる性質の成分が入ってるんですけど、種とか皮に多いらしいんですよね。こいつらを抽出して天然ゼラチンリンゴジュースを作ってやろうという魂胆です
水がほとんど飛んでうっすらトロっとするくらいまで煮詰めておきます
③キャラメリゼAをつくる
本レシピの肝なんだけど、キャラメリゼを2回作ります。(AとBって呼ぶね)
キャラメリゼってなんやねんって人は、要はキャラメルと思っといてください。砂糖とバターとちょっとの水であれを作ります
砂糖40g(僕は三温糖派だけど白糖でも全然いい)と水をティースプーン1杯、バター10g(カレースプーン1杯くらい?)をフライパンに入れ、ガンガンに火を入れていきます
なおこのフライパンはあとあとリンゴ煮るときにも使うので家で一番大きいやつにしとこう!
キャラメリゼをどれくらい攻められるかが唯一の勝敗をわけるポイントなのでここのチキンレースはなんとか耐えてください
感覚としては、香ばしい匂いがしてきて、そろそろいい頃かもって思ってからゆっくり20秒くらい。ちょっとやりすぎたかもという不安があたまをよぎったら頃合いです
普通のレシピだとここにリンゴを入れるのですが、こいつはあくまで1段目、そのまま型に流し込みます
この子の目的としては完成時の表面の薄くて硬い層、黒光りダイヤを担ってもらいます
④キャラメリゼBでリンゴを煮る
手順はAを作った時と全く同じでキャラメリゼを作ろう
そして今度はここに剥いておいたリンゴをドーン
気にせず軽くかき混ぜてから蓋をして20分くらい弱火で放置
リンゴの水分がたくさん出てくるので焦げたりはしないけど、均等にしたいのでたまにかき混ぜてあげよう
⑤小休止
料理中に生まれる隙間時間って大概手持ち無沙汰だよね。暇だからと言ってリンゴを突き回すと崩れやすくなるので、この時間は下記をやっておこう
隙間時間を制するものは受験を制す!
・オーブンを温めておく(190度くらいが良さげ)
・②のリンゴの皮と芯のジュースの様子見(汁気がほとんどなくなったら火を消してザルかこし器でジュースだけ抽出しておこう)
・洗い物
・洗濯
...
⑥状況整理
さて、ここまで出来ると調理台の上にはこんなものたちが並んでいるはず。
・タルト型
-底面は黒光りしたキャラメリゼがガチガチに固まっていて怪しげ
・リンゴ
-程良く煮込まれて硬さは一定あるけど、外周は柔らかくなってきた、鍋の中は水分が結構残ってる
・リンゴの皮と芯のジュース
-ホットワインみたいなビジュ、ちなみにこのまま飲んでも割と美味い
・オーブンレンジ
-カンカンにあったまっていていつでも来いよ、とこちらを見ている
足りないものがあったら今準備しとこう
⑦リンゴ敷き詰め
煮たリンゴを型に並べていくよ
丁寧に並べると完成時にビジュが良くなるのでここは頑張りどころ
多分リンゴが半分くらい余るはず
底が深い型を使っている人は気にせず2週目を敷き詰めたらいいんだけど、うちのは型が浅いので残りは半分に切って無理やり隙間に詰めた
最後に上からフライパンに残ったキャラメルの残りとリンゴの皮芯ジュースを混ぜたものをかけてあげよう
そしたらオーブンにinして190度で40分くらい
リンゴの水分があんま飛んでなかったら追加で適宜20-30分、ぱっと見の水分がなくなったら頃合い
⑧ぎゅうぎゅう詰める
焼き上がったらリンゴがさっきより柔くなってると思うので隙間を埋めるようにスプーンとかでぎゅうぎゅう押してあげよう
それができたら冷ますため1-2時間放置
⑨パイ生地の準備
リンゴを冷ましている間にパイ生地を解凍しよう
パイ生地は常温に戻るとクソ柔らかくなって扱いづらさMAXなのでこのタイミングくらいから冷蔵庫で解凍するのがよい
1時間くらい冷蔵庫入れとくといい感じになりがち
⑩ラスト焼き
リンゴちゃんが冷えたらパイ生地シートを伸ばしたもの(綿棒で伸ばすときはまな板にも綿棒にも小麦粉を振ろう)をかけ、余分な部分は削る ※5
そしたら空気穴をあけてオーブンで200度で25-30分くらい様子を見つつ焼く
※5 余ったパイシートをもう一回伸ばして余ったリンゴを数個載せたらミニアップルパイになるよ
⑪そして…
焼き上がったらリンゴがぐつぐつなって膨らんでいると思うのでとりあえず、上から優しめにぎゅうぎゅうする(タルトタタンはとりあえずぎゅうぎゅうが大事)
そしてすぐ食べたいのを我慢して冷蔵庫で一晩寝かせてあげよう
こうすることでしっかり固まるし味もまとまるよ
(僕は金曜夜2時に焼きだしてたのでオーブンに放置して寝たよ
そして次の日
取り出すときはうまく剝がれなそうだったらバーナー(なければ湯煎に一瞬つける)でくっついているキャラメリゼを溶かすとうまく外れるよ
そしたら好きなサイズに切って盛り付け
お好みで生クリームとかバニラアイスとかシナモンパウダーを合わせるともう最高に最高
寒い冬の午後、キャラメリゼのほろ苦さとりんごの甘さを楽しみながら紅茶でも入れたらゴキゲンな時間間違いなし、よければ作ってみてね~!
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