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第188話 恩人


 ミトが死んだ。肉体を離れて霊魂の世界に戻っていく。
 すると、そのことを察知した宇宙子さんがほんの一瞬だけミトの意識を自分の体内に入れ、それから目の前で気を失った。慌てた私は駆け寄って、宇宙子さんのことを抱きかかえる。

 戻って、意識!宇宙子さん戻ってきて!

 腕の中の宇宙子さんから、女性特有の柔らかい匂いがした……。

……

 目が覚めてから、何もかもリアルな酷い夢を見たと思った。
 確か壁には輪飾りや、紙で作ったキャンドルのようなものが貼ってあり、まるで子供のお誕生日会みたいな雰囲気だったのに。それなのに宇宙子さんが、意識を失ってしまうなんて。

 今日はこれからセッションなのに。

……

「あれー、ひみさん、今日はまた……。」

「うん、私ね、今日はなんか嫌なんですよね。」

 宇宙子さんに知り合ってから、およそ五か月になろうとしていた。最近だと、彼女の手を借りなくても以前より色々なことがわかるようになり、自分で解決できる浄化も増えてきた。
 だけどそうなると、せっかく縁あって出会えた彼女からいずれは巣立たなければならない。おそらくはそれが嫌で、だからあんな夢を見たんだと思った。


 セッションが始まると、いつものようにハイヤーセルフと同期して、トランス状態からひとつの闇へと進路を取っていく。だけどまだそのプロセスの途中だというのに、ボロボロボロボロひっきりなしに涙が出てきた。

 苦しいなぁ。嫌だなぁ。
それでも繋がっていかないと……。


「じゃあひみさん。ひみさんの中に浮かんできた感情。いつものように聞いてみてください。
“あなたは一体、何が嫌なの?”」

 それに対して、私の内側から聞こえてくる声を通訳する。

「離れるのが嫌だ、って言ってます。」

「誰と離れるのが嫌?」

 頑なだった。
さっきからずっとお腹の中に、必死になって通せんぼしている子供が視える。その質問にギュッと顔をしかめ、「絶対口を割るもんか」と小さな両腕を広げている。

 “これを話したら終わってしまう。だから絶対に言っちゃ駄目。”

 そんな子供に、“私”の意識を介入させる。

「大丈夫だよ、大丈夫。絶対に大丈夫だから。
“あなた”は誰と離れるのが嫌だって思ってる?答えても大丈夫だよ。
 頑張って守ろうとしてくれてるんだよね。私があなたを守るからね。一体誰と、あなたは離れたくないの?」

 そんなかんじで何分か、時間をかけて優しく“その子”を見守った。感情体としては女の子。だけどそこに、記憶としての男の子の姿が重なっている。時々何度かいっそ話そうとして、それでも迷って戻ってしまう。その逡巡を、根気強く受け入れた。

 やがて、私の“心”はものすごく迷った挙句、ようやく右手の人差し指を目の前の画面に向けていく。リトがワンワン泣き崩れた。

「そうだね。
私、“宇宙子さん”と、離れたくなかったんだよね。」

 どうしよう!とうとう言ってしまった、とうとう話してしまった!

 そしてこの時なんとなくわかった。
宇宙子さんはミトの姉妹。“僕”の育てのおばさんだった。


「あのねーリト、シリウスの時と一緒だね。まったく同じことがあったね。」

 ちょっとだけ困ったように、「えへへーっ」と宇宙子さんが笑う。
 甥っ子を見つめる彼女の声は優しかった。




written by ひみ

⭐︎⭐︎⭐︎

実話を元にした小説になっています。
ツインレイに出会う前、出会いからサイレント期間、そして統合のその先へ。
ハイパーサイキックと化したひみの私小説(笑)、ぜひお楽しみください。

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あきら、けーこ、タケくん、ヤマタ先生……
彼らとの関係性がわかるたびめちゃくちゃびっくりですが、この時も驚いた。
ええー!?リトのおばさんだったの?けーこの姉妹?私、宇宙子さんのお客さんなのに?って。

本当に全てをクリアにしていくんだなぁって思い、結果、超、超訳的に「スサナル先生すごい」ってなりました。

サイレント突入時の『ツインレイと結ばれたい』っていう思いは言ってしまえばエゴのかたまり。
そして、そのエゴを『エサとして利用』することで、こっちはまんまと浄化をするわけですよ。
「私、早く先生と再会したい」とかって。
エゴを原動力として、全てを精算し、受容し、エゴそのものを解体してしまう。ハイヤーセルフってウワテです。
だからそのマクロで、エゴのかたまりでできてる三次元男性原理社会が『神に成り代わってやる』って言ったところで所詮宇宙の掌の上。
高次元はやられてるフリをしながら、ウフフ、オホホってなってるわけです笑

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←今までのお話はこちら

→第189話 私の中で、みんな生きてる。

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