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九大七不思議file~九大のスーパーコンピュータを名付けよう~

こんにちは。medien-lien・ライターのこーすけです。突然ですが、皆さんは、「スーパーコンピュータ」って何か知ってますか?京・富岳など、名前だけなら知っている、という方が多いかもしれません。実は今、九州大学のスーパーコンピュータがその「名前」を募集しているんです!本記事では、そもそもスーパーコンピュータとは?そして名前公募の裏には何が?九大にあるスーパーコンピュータ施設に潜入取材してきました!

この記事は九州大学の学生で構成されたメディアクリエイティブチーム、medien-lienのライターが、九大生が気になってしょうがないことから、明日使えるトリビアまで、徹底的に調査する「七不思議検証シリーズ」です!


1. スーパーコンピュータって、何?

 時は遡ること2週間ほど前、X(旧Twitter)上にて、ある投稿を見つけました。
…九大のスーパーコンピュータが名前を公募?

実際のスクリーンショット。

 投稿されていたスクリーンショットには、「新しいスーパーコンピュータを運用開始するにあたって、愛称を制定したい」「賞金は図書カード1万円」「九大生以外も応募可」という説明が。これは、応募するしかない。
 しかし、やみくもに応募してもまず採用は難しそう。ということで、私は早速担当者の方に連絡を取りました。図書カード、欲しい。
 お話を伺ったのは、九州大学情報基盤研究開発センターの南里豪志 准教授です。早速採用されやすい名前を聞きたかったのですが、まずはこれを聞いておかなくては。

こーすけ「まず大前提として、スーパーコンピュータって何なんですか?」
南里さん「これをどうぞ。」

渡された紙は、明らかにこの質問を想定していたようなスーパーコンピュータの説明パンフレット。文系出身の大学2年生にはうれしい限りです….!
 では、上記の画像を基にスーパーコンピュータを説明します。スーパーコンピュータとは、「大量の計算機の集合体」のことです。仕組みそのものは我々が普段使っているスマホやパソコンと同じく、計算が得意な装置が積まれています。差があるのは、その計算量。スーパーコンピュータの性能を表すのはFLOPS(フロップス)という単位で、「1秒間に行う演算の数」という意味です。例えて言えば、小学校のときにやった100マス計算です。

懐かしい….

やったことが無い方に説明すると、縦横の数字を掛け算して、答えを埋めるドリルの一種です。大体僕は一分で解き終わっていた記憶があります。となると僕の脳は100FLOPSくらいでしょうか。それに対して、九大のスーパーコンピュータはなんと、10P(ペタ)FLOPS。普通の数字に直せば、1000兆回計算を行うことができるということです。100マス計算の用紙がB5だとすれば、それを並べた面積は九州大学伊都キャンパス(247ha、多単一キャンパス敷地面積としては日本1)の約189倍。1秒で私たちの学び舎を計算結果で埋め尽くす、それがスーパーコンピュータなのです。
 現在スーパーコンピュータはビッグデータと呼ばれる膨大なデータの処理のほか、AIで話題となる言語モデルの解析、気象予報にも用いられています。もはや「日常の基礎」に近い、欠かせないインフラの一つなのです。

九州大学のスーパーコンピュータ、ITO。

2. 九大とスーパーコンピュータ

こーすけ「なるほど、すごい計算機が九大にもある、ってことなんですね。この公募で九大にスーパーコンピュータがあるって初めて知りました。いつからスーパーコンピュータはあるんですか?」
南里さん「九大に今の形でコンピュータが導入されたのは1971年です。が、ちょっとおもしろい歴史があるんですよ。」


九州大学にあるスーパーコンピュータは、「全国共同利用計算機システム」の一つ。全国の研究者や大学生が誰でも利用可能なコンピュータとして、旧帝国大学のほか、東京工業大、筑波大などに設置されています。この仕組みが始まったのが1969年なのですが、この沿革には「1971年にかけて完成した」との記述があります。同時に設置されるはずだったコンピュータのうち、唯一遅れてしまったのが九州大学だったのです。

米軍機墜落により炎上した大型計算機センター。
建物内には事故後、偵察機がぶら下がったままだった。(九大百年史より)

原因となったのは、「ファントム墜落事故」。1968年、福岡市南部にある米軍板付基地を飛び立った偵察機が何らかの原因で、当時新たなコンピュータを設置する中央施設になる予定だった大型計算機センターに墜落。建設中だった建物を失ったことで、九大のコンピュータ設置構想は宙に浮くことになってしまいました。
 この事件は様々な影響を及ぼしています。まず、この事件をきっかけに反戦を訴える学生運動が勃発。計算機センターが占拠されてしまい、設置される予定だったコンピュータは行き場を失います。最終的には九州電力の施設に仮住まいすることになり、九大の職員が箱崎キャンパスと往復することになったと言います。そして事故から4か月後、占拠していた学生たちが排除され、計算機センターは71年にようやく完成することになったのです。さらに、板付基地(福岡空港内に所在)の戦闘機を含め、航空機がキャンパス上空を飛行することに懸念を示した九大はキャンパス移転を計画します。こうして現在のド田舎キャ…、真新しく、素晴らしい伊都キャンパスが福岡市郊外に完成したのです。ある意味、このキャンパスはスーパーコンピュータと共に生きる宿命にあったんですね。

3. 愛される「計算機」に

こーすけ「苦難の歴史の末に今のコンピュータがあるんですね…ところで、今スーパーコンピュータはどこにあるんですか?」
南里さん「こーすけさんの足元、この建物の地下ですよ。」
こーすけ「え?!」

情報基盤研究開発センター。この地下一階にスパコンがある。

現在使用されているスーパーコンピュータ、『ITO』は私が取材に訪れた情報基盤研究開発センターの地下一階にあります。九大生に分かりやすく言えば、理系図書館の横ですね(分かりやすい)。実際に見学もさせていただきました。

スーパーコンピュータを解説してくださる南里さん。
そんなコード引っ張って大丈夫…?とひやひやしました。

感想は「部屋が生暖かい」。機械には大量の冷却パイプがつながっていましたが、数兆回の演算を行うコンピュータだけに、発熱も桁違いなのでしょう。2400個ものCPUが集積しているこのITOは、年間数億円規模の電力を消費しながら、過去を分析し、未来を予測し続けています。人間の熱意が、コンピュータに伝わっているみたいで、ちょっとワクワクしますね…!
 新しいコンピュータは2024年の7月に稼働予定です。現在よりも半分ほどの大きさになることに加え、計算力は2倍から8倍ほどに増強されます。国家戦略に欠かせない存在となったスーパーコンピュータ。九大にもその一つがある、ということを忘れないでおきたいものです。
最後に、本題を問うてみました。
こーすけ「新しいコンピュータの名前に求められることは?」
南里さん「まずは親しみやすさ。できれば、九州大学の地にゆかりのあるものであればよいですね。地名を付けたスーパーコンピュータはITOが初めてなんじゃないかな?愛されるコンピュータになってくれれば」
こーすけ「ちなみに、南里さんの案は…?」
南里さん「内緒です(笑)」

南里さん、取材にご協力いただき、ありがとうございました!

新スパコンの名称公募は11月24日まで受け付け中!是非応募してみてください!▼


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