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(再掲)シャーマニズムの映画「ロスト マンチュリア サマン」と・・・・(2016)

2016年7月24日(日)
「ロスト マンチュリア サマン」を鑑賞してきました。


「シャーマン」の語源

「シャーマン」という言葉は、スピ系や心理系、あとマンガやアニメ好きの間では、名前は知られていますが、文化人類学など学術的に研究でもしていない限り、かなり広義の解釈で使用されています。
 ネイティブアメリカン関係の本などでも、シャーマン、シャーマニズムなどという言葉は普通に出てきますが、シャーマンの語源はツングース系語族の「薩満」(サマン)というのが最も有力な説です。
 部族内での役割としては、メディスンマン(呪医)、ヒーラー(癒し手)と呼ばれる方や、エルダー(長老)も、ある意味シャーマンだと言えるため、同義的に使われているのでしょう。

https://www.youtube.com/embed/vfjGOSQAc1M

世界初公開となる作品

「満洲語や満洲シャーマンの儀式の伝統行事を映画で公開するのは、おそらく本作品が世界初になると思われます。貴重なシャーマンたちの儀式、満洲語で歌われる「神歌」や神話、広大な、またある時は厳しい自然環境の中で彼らの民族としての自己創造の軌跡を詩的な描写により映し出しています。」

 さて、午前中に参加した別の講座では癒し手のためのシリーズで、陰陽五行の医療的な側面よりも、魂の変容、成長のための「象徴性」をおしはかる「モノサシ」として捉えた観かたを学んでおりました。
 今回は「仏教と神道」でしたが、当時話題のポケモンGOのネタから始まって、(ユング心理学で言うところの)個性化への移行=土から水への流れ(土剋水)について、その触媒となる「金」がテーマとなっていました。こちらの講座の内容も、魅力的且つ面白かったのですが・・・・
今回のメインは「シャーマンの映画」

「ロスト マンチュリア サマン」

で、「金」つながりで「ロスト マンチュリア サマン」(金 大偉監督)なのですよ。

 金さんとはユング心理学研究会で約20年ぶりに再会したのですが、会っていない間にお互いにシャーマニズムに深い関係のある道を歩んでいたようで・・・・

「今日、我々はどこへ向かって進むべきか、時代の厳しい岐路に立たされています。この映画はそれぞれの固有の文化を後世に遺すため、伝承するすべての者たちへの警鐘とも言えます。」

 私たちが師匠から学んだ様々な教え=「自然の中で、楽しく充実した生活、生き方ができるようにと伝えられている叡智」の中には、スピリチュアル的な側面も多いのですが、映画と同じように、伝承が途絶えるかのように見える「象徴的な出来事」が起きたりもします。
(これは私にとっては映画の後も続いていて、今更ながらユング系、シャーマニズム、武道・武術の流れの濃さに驚いたり、気を引き締めたり、楽しんだりしている部分でもありますが・・・・)

既に失われつつある文化遺産の救出作業


 満洲民族は森の民と言われる狩猟民族で、万物の中に神霊が存在するという教え「シャーマニズム」を信奉していた。
「サマン」とは、神霊の使者で、人間と神と霊の間をつなぐ者のこと。
 金監督は満州のサマンに出会い、彼らの思いや考え方について話してもらいつつ、満州サマン教の貴重な儀式などを撮影する。また、満州族が望む新しい視点を探りながら、シャーマニズムと人々との関係性を追求する。
 失われゆく満洲語を話す老人たち、歌う人が少なくなった満洲語で歌う「神歌」のほか、清王朝の聖地としての長白山も取材している。

 金氏は「この撮影記録は、満洲族の現在の立場から考えれば、もう既に失われつつある文化遺産の救出作業に相当する行為であると確信していた。自分のまわり、また民族同士、及び異民族の文化などを含めて、少しでも多くの作品を制作したい」と話している。


 映像の中での「蒼」のイメージは、ネイティブアメリカンの「赤」のイメージと対照的に感じられたこと、サマン(シャーマン)の作る切り絵の中に、メディスンホイールの 4sectors に通じるものが見られたり、ドラムのリズムや鈴の音、神樹と鳥の関係等々、大陸を越えたつながりを感じました。
(特に不思議だったのは、黒竜江に伝わる神話・神歌を私が知っていたところでした。・・・・というか、てっきりネイティブアメリカンの伝承かと思っていたくらい、そっくりな話を覚えていたからです)

 映画と金さんの舞台挨拶を観終えて、金さんとお茶をしながら「修行によって成る者」「天から与えられた者」との違い、今回は使われなかったけど膨大なシャーマンの儀式や話など、取材中の逸話を色々と聞くことができました。
 シャーマニズムの中ではある意味当然の部分ですが、撮影禁止の場面もあったとのこと。
 それでも、失われつつあるシャーマンの貴重な映像は、学術資料としても充分な質と量を撮影されたと聞きました。

お茶会で特に印象的だったのは、ユング心理学研究会でも写真も見せていただいた、サマン(シャーマン)だけでなく女真族、満州族の方々にとって、滅多に晴れることのない信仰の山が、金さんが訪れたときだけ晴天になったというところです。(パンフレットの写真)


妻、金監督と・・・・パチリ

 ロードムービーやドキュメンタリー映画は、どんなにいい評判の映画でも、気持ちよく眠ることになってしまうのですが、ナント!この映画は初めて、ガン観、じゃなかった、じっくりと最後まで観させていただきました。
 これは、お茶会の時に同席されていた方が「単なる映像だけでなく、音楽も(金さん自身の作曲による)使われているというところが大きいのでは・・・・」ということを話されていましたが、確かに、映像、音楽、色彩の編集(エフェクト?)などが、飽きさせない映画になっていたのかもしれません。

 伝承に関しては、口承によってのみ伝えられてきたネイティブアメリカンの伝承や、口伝、口訣などは、あっという間に変節したりして途絶えてしまいがちなので、サマン(シャーマン)に伝わる「満族神本」(「修行する者」のための教科書的な側面を持っています)は、例え、今は伝えられなくなったりしても、もしかしたら、後世で読み解く者が顕れるかもしれないという希望があると思いました。

 それは、「医心方」という古典医学の本を1,200年ぶりに解読した槇先生に稲葉さん主宰の勉強会でお会いして、学ばせていただいているからこそ、そう思えるのでした。

 それでも、危機に瀕する言語=その言葉、言語そのものを話す人がいなくなるかもしれないというのは、民族の生きた文化の消滅とも言え、やはり哀しいところでもあります。
 http://www.fl.reitaku-u.ac.jp/CEL/onEL_ja.html

金大偉監督からのメッセージ

最後に、金さんからのメッセージを引用しますね。

文明は単なる技術と文化の進歩だけではない。
人々の良き心と高度な知恵がなければならない。

古き原点的な
文明や知恵が
現代の行き詰っている社会にとって、
新しい手掛かりとなるかもしれない。

音霊、
言霊、
形霊や数霊などによる

自発的な認識が必要であると同時に、
天と地、
内と外、
陰と陽、
死と生などの

両極に向かい得る芸術媒体を通して、
無限なる自由表現を可能にする力が存在する。

創作とは、
まさに共感覚の位置から内面宇宙への旅であると言える。

~アーティスト 金 大偉氏よりメッセージ~

「ロスト マンチュリア サマン」は、女真族(満洲貴族)の中国人の父、日本人の母を持ち、女真族(満州族)の血を引く金さんの自己探求の旅ともいえるドキュメンタリーロードムービーでもあります。


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