見出し画像

横浜でシャーマニズムの映画を観てきたよ

2023年11月4日
先週末は、 金大偉監督の映画2本立て。

世界初のシャーマニズムの映画「ロスト マンチュリア サマン」の続編

「天空のサマン」とㅤ

詩人、古布絵作家、絵本作家、そしてアイヌの解放運動家として知られる宇梶静江のドキュメンタリー「大地よ アイヌとして生きる」

一気に、2作連続です。

当日は金さんによる舞台挨拶も2作連続でありました。

ㅤ 今回の感想は「天空のサマン」のみになります。
(アイヌについては対面のときにお話しますね)

ㅤ 以前も書きましたが、シャーマンという言葉は正確には「シベリアのツングース族における呪術師を表す「シャマン」・・・・漢字で書くと「薩満(サマン)」になります。

 彼らの研究をしていくうえで同様の役職が世界中の先住民にあることがわかり、それらの宗教観などを広義の定義として「シャーマニズム」と呼ぶようになった・・・・例えばネイティブアメリカンの「メディスンマン」なども、シャーマンと言えなくはない・・・・というわけなんです。

 まぁ、世の中、サマンでもないのに自称シャーマンの多いこと多いこと。

・・・・コホン

ㅤ「私は天空を見た。天空もまた私を見た。」ㅤ

 前作「ロストマンチュリアサマン」の最後の言葉を引き継いだのが「天空のサマン」です。

長白山

 まず映像にしばしば登場する吉林省延辺朝鮮族自治州にある山は、満洲族生誕の地とされる長白山だ。北朝鮮国境にまたがり、天池と呼ばれるカルデラ湖がある。この美しい湖は民族の発祥神話の舞台なのである。

 また中国遼寧省撫順市郊外にある永陵とヘトゥアラ城は、清朝の前身である後金の初代皇帝ヌルハチの墓で、後者は彼が都城としていた。そして、ここは満洲語では「愛新覚羅」と呼ばれる金さんの一族が長く暮らしていた土地でもある。


ㅤ とまぁ、ちょこっとだけ金さんの紹介。桜吹雪のお奉行様ではないです。

 実は、1990年代は何度か金さんと一緒にパフォーマンスをやっていたんですよ。
 そして2016年、20年ぶりに再会したのがユング心理学研究会。お互いビックリでした。(金さんは理事です)

ㅤ その間、金さんはアーティスト活動の中で、女真族・満州族のルーツの探求を。私は深層心理学や、ネイティブアメリカンの叡智を伝える世界最大のサバイバルスクール「 Tracker School 」「 Wild And Native 」に学んでいたりしていたんですね。まぁ、そこら辺は前作の感想(2015)をnoteにUPするのでそちらをご覧ください。

ㅤ 個人的な感想ですが、金さんのドキュメンタリー映画は本当にスゴイと思いました。

 ナレーションは監督自身ですが、何より立脚点が客観的で、よくある撮影者の主観によって歪められた熱、走火入魔とも言える歪なものがない・・・・いや、もちろん情熱はあるんだけど、それを決して押し付けない。

 驚くほ淡々と語っている。そこが凄いなぁ・・・・と。

 だからこそ、真に心にグッと刺さるし、深く感じ入る作品になっているのだと・・・・そう思ったんです。

 内容については是非、ご覧になっていただくことをオススメするので紹介しませんが、学術的にも貴重な映像が多く、特に上記のように気軽に立ち入ることができないところなどもあり、後々の世代へと伝えられることを期待したいものです。


公式サイト Galleryより

 そして今作では映像の美しさ、サマンによる「神歌」などに感動しつつも、その奥には「もう時間がない」・・・・「消えゆく文化」に対する思いを強く感じました。

 それはすでに100年前、清朝の時代に予言されていた(といってもスピ的なものではない)ことと、「消えゆく言語」にもあるんじゃあないかと思いました。

以下、Forbs の記事より

「ネイティブな満洲語はまもなく失われるだろう。もう時間はない」
「ひとつの民族が信仰や言葉を失うとき、それは民族のアイデンティティを捨てることにほかならない」
 金さんは、「天空のサマン」というドキュメンタリー映画を監督することで、自分のルーツである民族とその文化が消滅していく最後の姿を見届け、記録するという歴史的な役割を果たすことになったが、その想像を超えた重責を、私たちはこの作品を観ることで目撃することになる。

Forbs「もう時間がない」消滅寸前の満洲シャーマンのいまを追ったロードムービー

 個人的には、サマン(シャーマン)の儀式という貴重な映像にはもちろん興味はあったし、そこから(メディスンとして)学べるところは多かったけど、それ以上にForbsから引用した箇所にあるように「失われ、やがて去り行くもの」の記録というところにこそ大事な、大切なことがあるのではないか・・・・そう思いました。

 儀式については確かに学術的な意義はあるでしょう、学者さんたちがそこに注目するのも学者ならではですよね。

 シャーマニズム・・・・という広義の視点で見れば、サマン、シャーマンの儀式、その意義、深淵はアボリジニ、ネイティブアメリカンなどの先住民族の中に今も細々とですが残っています。

 実際にそういう儀式を私も学び、修煉をしているからこそ響くところもあります。リズム、動き、音、環境、その「場」に満ちているもの・・・・結構共通点があり、それは金さんの「大地よ アイヌとして生きる」の中にも見ることができます。
 そして、その先には「儀式は必要なくなる」というのが「スピリット」「精霊」「神々」と交流する者たちの先達の口承、口伝として伝えられたりしています。

 なので個人的には、儀式よりも言葉が消えていくことから始まる、文化の消失、そしてやがては民族が消えていくことへの生々しい、リアルな記録映像として、本作を是非とも見てほしいです。

 この「天空のサマン」というドキュメンタリー映画のタイトルは、前作の「ロストマンチュリアサマン」の最後「私は天空を見た。天空もまた私を見た。」から続いています。

 日本の空にはない「蒼」が覆う世界、白銀の大地に金さんが独り立つ姿は象徴的でした・・・・

公式サイト Galleryより1シーン
当日は監督とプロデューサーの舞台挨拶がありました
監督の金さんとプロデューサーの藤原氏を囲んで

「天空のサマン」
● 横浜シネマ・ジャック&ベティ 10/28(土)〜11/10(金)

https://www.jackandbetty.net/cinema/detail/3257/

10/28(土)〜11/3(金) 12:10〜

11/4(土)〜11/10(金) 15:25〜

https://www.shaman-heaven.com/


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?