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【群ドローン攻撃】「木村太郎」氏による記事の間違い

毎度のことながら日本のメディアにおけるドローン記事には不正確なものが多く目立ちます。木村太郎さんによる『FNNプライムオンライン』2021年7月12日付記事「原爆級の破壊力を持つドローンの「群れ」作戦 “新たな大量破壊兵器”をイスラエルが初めて使用か」もそのひとつです。本稿では木村太郎さんによる記事の誤りを訂正していきます。

尚、これまでもTwitterやnote記事『【群ドローン(ドローンスウォーム)】とは何か?』『【世界初】AIによる「群ドローン攻撃」が実行された』などで「未来の大量破壊兵器」と言われるAI(人工知能)搭載自律型ドローンの「群ドローン」(drone swarm)による「群ドローン攻撃」(drone swarm attack)の脅威を書いてきましたが、ジャーナリストをはじめとして日本社会にはあまり理解されていないのが現実のようです。

「群ドローン」とは何か?

「群ドローン」とは「drone swarm(ドローンスウォーム)」の日本語訳で複数(多数)のドローンによる集団飛行、つまりドローンの群飛を指す一般名称です。(詳細は『【群ドローン(ドローンスウォーム)】とは何か?』を参照ください。)

「群ドローン攻撃」とは何か?

「群ドローン攻撃」(drone swarm attack)とは「群ドローン」(drone swarm)による人や基地、インフラなどへの攻撃のことです。(詳細は『【群ドローン(ドローンスウォーム)】とは何か?』『【世界初】AIによる「群ドローン攻撃」が実行された』を参照ください。)

自律飛行による群ドローン

AIベース自律型ドローン(autonomous drone)による群ドローンは、個々のドローンは目的に則して自律飛行しており編隊を組んでいるわけではありませんが、椋鳥(ムクドリ)の群飛のように総体としては集団を形成します。この自律型ドローンによる群ドローン攻撃が「未来の大量破壊兵器」(新たな大量破壊兵器)と目され、世界の脅威となっているのです。(詳細は『【群ドローン(ドローンスウォーム)】とは何か?』を参照ください。)

群ドローン攻撃は今回が世界初ではない

木村太郎さんの当該記事には《同誌(※筆者註『New Scientist』)によれば、ドローンの「群れ」が実戦で使われたのはこれが初めて》とありますが不正確です。

『New Scientist』2021年6月30日付記事「Israel used world's first AI-guided combat drone swarm in Gaza attacks」が伝えているのは「AI制御自律型ドローン」を用いた群ドローン攻撃が「世界初」だということです。遠隔操作やプログラムによる群ドローン攻撃は、これまでにも多くの紛争やテロで使用されています。

将来的には「AIが攻撃を判断」

「AIが攻撃を判断」は近い将来確実に実行されるようになるでしょうが、イスラエル国防軍(IDF)広報官によると、今回(2021年5月中旬)のガザ地区でのハマスに対する作戦「Operation Guardian of the Walls」ではAIによる攻撃判断は行われていない模様です。(『【世界初】AIによる「群ドローン攻撃」が実行された』を参照ください。)

ドローンライトショー世界最多機数記録

当該記事の《中国は2020年11月に、3051機のLEDドローンを飛ばして空中にアニメーションを描き、ギネス記録を更新しており》ですが、群ドローンによる「ドローンライトショー」の世界最多機数記録は今年(2021年)4月2日に3,281機、5月18日には5,164機に更新されています。(詳しくは『【ドローンライトショー】とは何か?』を参照ください。)

自律型致死兵器システム

当該記事の《「自立型致死兵器(LAWS)」を規制する国際的なルール作りが求められるようになってきている》ですが、「LAWS」(Lethal Autonomous Weapons Systems)は「自立型致死兵器」ではなく「自律型致死兵器システム」です。「自律型」であることと「システム」であることがポイントになります。

カウンタードローンシステム

当該記事の《せめて防御手段の研究はすべきではないのか》については以前の記事『【ドローン最大の冤罪事件】ガトウィック空港ドローンミステリー』で書いた通り、嘗て日本企業が世界初となる空港専用カウンタードローンシステム(C-UAS)を開発していましたが、技術とシステムを海外企業に買収されました。

今年に入り東芝インフラシステムズ株式会社がアメリカの対ドローンセキュリティ企業Fortem Technologies社に出資しましたが、ドローン検出(検知)システムをはじめとしたアンチドローンシステムは外国からの輸入に頼るしかないのが日本の現状です。

デュアルユースのパースペクティブ

世界初となるAI搭載自律型ドローンによる群ドローン攻撃が実施されたことにより、群ドローン(ドローンスウォーム)は「未来の大量破壊兵器」から「現実の大量破壊兵器」のフェーズに移行しました。

【ドローン最大の冤罪事件】ガトウィック空港ドローンミステリー』で書いた通り、ドローンをはじめとしたテクノロジーはデュアルユース(軍民両用)の視座に立った研究開発・事業企画が要諦です。《せめて防御手段の研究はすべきではないのか》という指摘は極めて重いものだと思います。

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