12月21日〈木〉メディア日記

 沖縄県名護市辺野古での米軍新基地建設を巡り、福岡高裁那覇支部は20日、国が県に代わって埋め立ての設計変更を承認する「代執行」を認める判断をした。 辺野古推進派の産経新聞は21日の社説で「知事は敗訴を受け入れよ」と書き、社会面での見出しは「『民意こそ公益』は通用せず」と問答無用の記事を掲載した。さらに産経の正論メンバーの弁護士、高井康行は「行政の長たる首長は、民意の尊重にも限界がある。法治主義の下では、裁判の結果に従うことは不可欠だ」と言い放った。
 20日のNHKニュースによると、防衛省は手つかずの辺野古の改良工事にはこれからおよそ7万1000本のくいを最深およそ70メートル(90メートルという説もあり)に打ち込む計画と大浦湾側の区域の埋め立てには辺野古側の5倍以上のおよそ1700万立方メートルの土砂が必要だということだ。工事が順調にいっても完成まで14年から15年、沖縄県の試算では2兆円超ともいわれる底なしの予算だ。建設に沖縄県民の7割は反対だ。何が「『民意こそ公益』は通用せず」と言えるのか。
 
 外務省は20日、1992年の史上初の天皇訪中に関する外交文書(17冊6518ページ)を公開した。朝刊各紙はスペースをとって特集した。中でも外務省が天皇訪中実現のため、報道の影響を懸念して水面下でマスコミ工作をした経緯は興味深い。
 橋本恕駐中国大使の共同通信に対する対応は異常だ。橋本大使はマスコミ対策で一時帰国し、共同通信の犬養康彦社長に対して、「共同の記事は天皇訪中を阻止するためとるに足りない中国の民間の少数意見を誇大な記事にしている」と抗議し、「もし、中国側が共同通信の支局閉鎖とか特派員の国外追放になっても日本大使館は面倒見ない」と脅した。橋本駐中国大使が直接メディアのトップに恫喝をかけ、犬養社長は、誤報したわけでもないのに「ご迷惑をかけた」ということになっている。
 またNHKに対しては、当時の谷野作太郎アジア局長が小浜維人解説委員長に対して、「NHKもぜひ天皇訪中の実現の方向で風を起こしてほしい」と要請。さらに谷野アジア局長は、当初、天皇訪中に反対していた産経新聞について、「産経でも賛否両論を載せており、他の新聞も大丈夫」と中曽根首相に報告したことが記録されている。政府の世論調査で「天皇訪中7割は賛成」という結果が出たが、自民党右派の藤尾正行元文相らが「天皇陛下の政治利用になり、許されない」と反発、「結局のこの調査は発表しなかった」と時事通信は報じた。

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