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麻雀で生かそう法的三段論法 前編

1 はじめに

 法的三段論法という言葉がある。

 司法試験に受かろうと思ったら、あるいは、まともな法的思考をしようと思ったら、法的三段論法という思考方法は意識しなくてもできなければならない。
 それくらい、この思考方法は重要である。

 ところで、最近、「この思考方法、麻雀の打牌選択でも生かせるなあ」と思うに至った。
 そこで、今回から何回かに分けて、「法的三段論法と麻雀への応用について」説明を試みてみる。

2 法的三段論法とは

 まず、法的三段論法とは何か。
 法的三段論法とは次の形式を踏む思考方法である。

(0、問題を設定する)
1、(問題に対して)抽象的な規範を定立する
2、具体的な事実を認定し、1で立てた規範にあてはめる
3、規範に適合するか否かの結論を出す

 法的な点を除いて書けば次の感じになる。

(規範定立)人はいずれ死ぬ(デスノートのルールの一節)。
(あてはめ)みーにんは人である。
(結論)みーにんはいずれ死ぬ。

 いきなり物騒な例を取り上げてしまったが、こんな感じである。

3 法的三段論法の説明(超簡単なもの)

 では、法的は意味を付加しながら、法的三段論法を使ってみよう。
 いきなり物騒な話をするが、次の事案を考える。

 Aが、人であるVを殺す意図で、刃渡り20センチのナイフでVの胸を刺し、よって、Vを失血死させた(正当防衛などの特殊事情はない)。

 簡単に書けば、こう置き換えられる。

AがVを殺した

 この場合にAの上記行為に対して成立する罪を考える。
 とはいえ、範囲を限定しないと話が拡散するので、Aの行為に殺人(既遂)罪が成立するかを考える。


 法的三段論法を踏む場合、第一にやるべきことは「規範の定立」である。
 この場合、刑法199条には規範として次のように書いてある。

人を殺した者は、死刑又は無期若しくは5年以上の懲役に処する。

 簡単に書けば、

「人を殺したものは殺人罪が成立する。」

になる。
 これで規範が明らかになった。
 人を殺せば殺人罪が成立する。
 換言すれば、人を殺さなければ、殺人罪は成立しない。
 例えば、動物を殺したとしても殺人罪は成立しないわけである(もちろん別の罪が成立する可能性はあるとしても)。


 次にすべきことは、事実の確認、及び、規範へのあてはめである。

 まずは、事実を確認しなければならない。
 本件の事実は、「AはVを殺した」になる。

 そして、規範に適合するか考える。
 この点、Vは人である。
 とすれば、「Aは(Vという)人を殺した」と言え、規範を満たすことになる。


 最後にすべきことはあてはめに対応する結論を出すことである。
 今回はAは規範を満たしたため、「Aに殺人罪が成立する」となる。


 このような思考方法を踏むのが法的三段論法である。

4 法的三段論法を用いるメリット

 この法的三段論法を踏むのは次のメリットがある。

 一つ目は規範(ルール)が意識できる点である。
 本件ならば、「殺人罪の成立条件」が明らかになる。

 二つ目は、現状の事実がちゃんと確認できる点である。
 本件であれば、「AがVを殺した」という事実がピックアップされ、そのことをちゃんと意識できるようになる。

 このように、法的三段論法を意識すれば、

規範(ルール)は何か
事実は何か

の2点が確認することで、規範と事実を意識することができる。
 これが法的三段論法を用いるメリットである。


 ただ、実際はこの法的三段論法を使うのは単純ではない。
 次は、上の事案を使い、もう少し細かく考えてみたい。


 では、今回はこの辺で。
(「5 法的三段論法の具体例」に続く)

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