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はじめまして。Re:です。引きこもりたい系OL。短編小説のようなものを書くのが好きです…

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はじめまして。Re:です。引きこもりたい系OL。短編小説のようなものを書くのが好きです。たまに自分のことを書きます。

最近の記事

小さな話29 御伽話

小さい頃大好きな絵本があった。 男の子がお母さんと喧嘩して家を出た先で、同じくお母さんと喧嘩した竜と仲良くなるところから始まる冒険譚。 あの頃は竜はきっとどこかにいると信じて、空の雲を見て妄想をしてたもんだった。車に乗っているときに雲を見ながら小さなお話を考えるのが好きだった。もし竜がいたら、もし妖精がいたら、もし勇者がいたら、もし自分が誰かのお伽話の主人公だったら。 もちろんファンタジーな日常なんて私には待っていなくて、そのまま大きくなって高層ビルの並ぶ街を死んだ目をして歩

    • 小さな話28 真夜中コーヒー

      “ずっと真夜中でいいのにって溢した午前5時” コーヒーのためのポットが沸騰を知らせてコポコポと話しかけてくる。 大好きなバンドの一節が心に刺さりまくる日もあっていいよね、と毎日言い聞かせながら過ごす都会の冬は気持ち悪いほどに暖かい。 白いライトが苦手なので手元を写すのは、壁に貼り付けたテープライトとモニターの明かりだけ。 首にかけたヘッドホンが流れるn周目の日常アニメの音を聞き流しながら、久しぶりにマニキュアを塗ってみた。濃い燕脂が血色の悪い腕とバランスを取れそうに見えて、何

      • 社会人1年目としての今年

        こんにちは。Re:です。 とても久しぶりにnoteを立ち上げました。なんなら、久しぶりに仕事以外でPCで文字を打っている気がします。 2023年が終わろうとしていますが、今年はほぼnoteを触っていなかったのでなんとなく自分の振り返りをしつつ、残せればと思い書き始めました。 今年は表題にあるように大学生として3ヶ月、社会人として9ヶ月過ごしました。9ヶ月という時間があまりにあっという間で今でも今年が終わることが信じられません。 社会人になって体感時間がおかしくなっています。

        • 白骨化スマホ【毎週ショートショート】

          「森の中で自殺した人のスマホてどうなるのかな。」 「え?」 物騒なことを言わないで欲しい。特に高校という公共の場かつ今は昼食の時間である。 「人は白骨化して見つかるけど、スマホはどうなるのかな。」 「さあ、普通に錆びるんじゃない。」 「ほらさっき理科で微生物が何たらて習ったじゃん。」 「あれは分解可能なプラスチックの話。スマホは無理だよ。」 「うーん、そっか。」 リップの落ちた唇でリプトンミルクティーを吸いながら彼女は色素の薄い眉を顰める。 「ほら早くしないと、次体育だよ。」

        小さな話29 御伽話

          大増殖天使のキス [毎週ショートショートnote]

          小さい頃、宗派もわからない教会に通っていたことがある。母は熱心な信教者だ。都会で生まれ育ったプライドの高い母が父と結婚し、仕事の都合で田舎のコミュニティに放り込まれた瞬間に彼女は救いを欲するようになった。そうでもしないと母は壊れていたのだと、彼女は私に言い聞かせた。 「幸せになれる瞬間は誰にでもあるのだけど、それを教えてくれるのは神様だけなのよ。」 ”見えない誰か”について嬉々として語る彼女を父は放置していた。彼はただ彼女が人並みに生きていることが大事だと考えていたのか、それ

          大増殖天使のキス [毎週ショートショートnote]

          小さい話27 なり損ない

          私は幼少期から金平糖が好きだ。きらきらしてて、小さくて、食感が何よりいい。口の中で少し遊んでから、シャリシャリと音を立てて食べるのが楽しい。飴だとそうはいかない。彼らはいつまでもガリガリと噛み砕くしかない。 通学用のカバンの中にはいつも金平糖の瓶が入っている。今週は葡萄味のものを買ってみた。一番好きなのはシンプルな白いやつだけど、週替わりで色々楽しめるのもいいところだから。 電車に乗る前にひとつ、講義が始まる前にひとつ、部活に行く前にひとつ。 エネルギー補給みたいな形で

          小さい話27 なり損ない

          小さな話26 冷え性

          『裏垢女子始めm』 ここまで打ってから、画面の上部に着信を知らせる通知が届いた。ふたつ下の後輩。パーマをかけてから、アイドルの誰かに似てると噂され始めた可愛い顔の子。 「はい。」 「あ、先輩すみません。今大丈夫ですか?」 「うん。どうしたの?」 「今からマヒロとクニさんとラーメン行くんですけど、先輩も行かないかなあて。」 「どこのラーメン?」 マニキュアを塗り替えたばかりの爪が机の裸電球の光を鈍く反射する。今年のマストカラーと書かれたポップを信じて買ってみたが似合っている

          小さな話26 冷え性

          小さな話25 フィクション

          朝起きたら目の前に猫がいた。しかし、私には猫を飼っていたという自覚はない。つまり彼あるいは彼女は野良猫でかつ、侵入者であるということだ。薄いブランケットをどけようと手を動かせば猫が小さく鳴いた。もし漫画やアニメであれば、こちらの猫様はメッセンジャーとなるのだろうが、私は三次元に生きる人間である。そのようなことを妄想して楽しむことしかできない。 「おはよう。」 手始めに挨拶をしてみた。くりくりとした可愛らしい目でこちらを見つめる猫様は何も言わない。それもそうか。 「どこから来た

          小さな話25 フィクション

          小さな話24 #3phobias

          私は恐怖症と呼ばれるものを三つ持っている。 ひとつ、集合体恐怖症 ひとつ、先端恐怖症 ひとつ、髭のある人恐怖症 最初のふたつは一般的に知られているものだと思うし、共感してくれる人も多いのではないだろうか。集合体恐怖症は、たくさんの穴や点を見ると気分が悪くなるもので、先端恐怖症は、その名の通り先端の尖ったものを見たときに恐怖を感じるものだ。きっかけははっきりとしていないが、たぶん幼稚園のときに蟻塚を覗いたときに無数に這い出てきた蟻が怖かったのと、注射に対して極端に嫌な思いがあ

          小さな話24 #3phobias

          小さな話23 熱帯夜に必要なもの

          天気予報でミントグリーンのワンピースを着た若手アナウンサーが真っ赤な唇と共に今日の最高気温を告げる。 『連日の暑さはまだ続きそうです。今日も熱帯夜でしょう。』 私の額から落ちた汗はだらしなく開いたワイシャツの襟へと吸い込まれていった。 バイト終わりの22時。体型を気にする華の女子大生の私は夜ご飯をどうしようかと頭を悩ませていた。いつもはバイト前やバイト中につまみ食いをして飢えを凌いでいたのだが、今日はあまりの忙しさでその余裕がなかった。 腹の虫は気まぐれでさっきまでは食べ

          小さな話23 熱帯夜に必要なもの

          小さな話22 美しい君の居場所

          写真を撮ることが趣味の私は、肌寒さの残る中桜の撮影に足を運んだ。 毎年訪れている川沿いの道は休日ということもあり、家族で溢れていた。出店のいちご飴を太陽にかざす女子高生、アニメキャラクターのついた綿飴の袋を振り回す少年、犬と散歩する老夫婦。誰もが思い思いの花見をしている春の一コマ。 人の顔が写らない程度に彼らの姿をカメラに収めていく。 カメラのシャッター音で一瞬世界が止まるような気がする。 撮影しながら歩き続けると、人がまばらになっている場所があった。 溢れんばかりの花でし

          小さな話22 美しい君の居場所

          2022年の私との付き合い方を考えてみる

          あけましておめでとうございます。Re:です。久しぶりの投稿な気がします。 今日は、01月07日ですか。仕事始めをされた方も多いと思います。今年は、就活の年なので、なんとなくそういうことにも敏感になり始めてしまいますね。 今回のnoteは、タイトルにもある通り、「2022年の私との付き合い方」ということを書いてみようかと。私の今年の目標のひとつに、「自分と向き合う」というものがあります。就活の年でもあると同時に、大学生として過ごす最後の年になるだろうということで、自分をもう少

          2022年の私との付き合い方を考えてみる

          小さな話21 on-LINE

          新型のウイルスによる侵食が進む中、私たちの日常は確実に変化をしていった。インターネットを馬鹿にしていた大人ほど置いていかれた。先輩は、すごく年が離れているわけではないのに、インターネットに追いつけなかった一人だ。 『今日からテレワークが始まるので、注意事項を送ります。』 会社の方針で、テレワークが始まって、阿鼻叫喚地獄に陥ったのかというくらい混乱していた。メールで送ればいいのに、先輩は即電話を掛けてきた。しかも、携帯の番号。SNSで掛けてくれれば、通話料かからないのに。

          小さな話21 on-LINE

          小さな話20 「推し」

          忙しく、殺伐とした現代を生き抜くために多くの人は、「推し」を持つようになっている。「推し」とは、要するに「好きな人」の総称である。 「推し事」「推し活」などと、推しを中心とする生活をするのも当たり前になりつつある。私も例に漏れず推し活をしている。 私が恋してしまったのは、画面の中の三次元の配信者だ。三次元で生きているはずなのに、会えない距離感は、二次元の存在と変わらない。だが、いつか会えるかもしれないという可能性がゼロではないのだ。だからこそ、「推し活」にも力が入ってしま

          小さな話20 「推し」

          小さな話19 高嶺の花には棘があって

          私は、一般的に言う美少女だ。 私が学校で歩けば、そこらへんの男子生徒は釘付けになる。女子からは羨望と嫉妬の眼差しを向けられる。教師からは好かれる。特に男性教諭は特別扱いをしてくれる。 私が街を歩けば、デートしているカップルの男性は私を二度見してしまい彼女に怒られている。男性店員は、サービスをしてくれる。アパレルショップの店員は次々におすすめの商品を持ち出してくる。 私は、美少女だから。 月一の美容院やエステは欠かさない。大学生の身分で贅沢だと言われても、それを許しても

          小さな話19 高嶺の花には棘があって

          小さな話18 あたしの神様

          「ここの神社には、恋愛の神様がいるのよ。」 おまじないや占いが大好きな姉が私にそう囁いた。別に関係ないよ、そう言いたかったのに姉は鈴を鳴らしに階段を登っていた。 姉の白いスカートの裾が賽銭箱に触れる。賽銭箱にはもちろん五円玉を投げ込む。乾いた音がころんと転がる。鈴を控えめに鳴らすのは、恥じらいからだろうか。 目を瞑り、綺麗に彩られた唇がかすかに揺れる。誰を想っているのだろうか。前に話していたクラスの男子か、はたまた部活の先輩か。恋多き女性は大変そうだ。 「ほら、あなた

          小さな話18 あたしの神様