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胸を焦がす90年代香港と広東語 『恋する惑星』

現在、ウォン・カーウァイ映画が劇場で公開されていることはご存知だろうか。
私は先週知って、知った5秒後にはチケットを入手して翌日には劇場に足を運んだ。

観たのはウォン・カーウァイ映画の中でも一番好きな『恋する惑星』
94年の映画だ。
原題は『重慶森林』
高校生くらいの時にビデオで何度も観た。
何度も観て、90年代の香港の雰囲気と、金城武と、彼の話す広東語の響きに恋をした。
あの頃の熱情が劇場の大画面で蘇った。

私が危うく「胸キュン映画」とかいう何の趣も無い表現で感想を言い表そうとしていたところ、上白石萌歌が素敵な表現をしていた。

はじめて『恋する惑星』を観た時、体が火照るような、初恋のような気持ちを覚えた。
ウォン・カーウァイ監督の世界の中で人々が街を行き交ったり、笑ったりするだけでどうしようもなく心が躍る。うまく言えないけれど、ずっとずっとこの映画の中で息をしていたいと思った。
上白石萌歌  https://unpfilm.com/wkw4k/

そう、恋をするとスキップしたくなるあの感じ。世界が色付くあの感じが、90年代香港の雑多さと無国籍さと熱気によってさらに鮮やかに映像化されているのだ。

きっといつか香港に行こう!と思ってたのに、近いからいつでも行けるだろうとついつい後回しにして早数十年。
もうあの看板とネオンに溢れた魅惑的な香港は無くなってしまった。
でもロケ地は残ってるし近いうち行きたいな。

広東語の響きに憧れて言語について考える

主演のひとりである金城武は日本と台湾ハーフで広東語も北京後も日本語も英語もペラペラで、劇中では日本語でも話している。
ビョルン・アンドレセンもびっくりのイケメンで昔はよく日本のテレビ番組にも出ていた。
彼の話す広東語の響きはとてもセクシーで、その韻律が『恋する惑星』のひとつの魅力ともなっている。

言葉というのは文化そのものであり、文化の礎のもとに生まれる。
文化や概念を共有するためのものであり、逆説的に言えば、文化や概念を共有していなければ、言語は意味を為さないただの音である。

『恋する惑星』の日本語字幕に関しても、広東語話者から見れば意訳すぎて全く言葉の持つニュアンスが伝えられておらず残念だ、とのことだ。

それでも私は純粋な韻律の響きに恋をした。
綺麗だと思った。
ほとんど音楽だった。

言葉の持つ魔力については、ボルヘスの『詩という仕事について』がとても面白かった。

言葉とは何か、隠喩とは何か、そして翻訳(意訳・直訳)の持つ独特の魅力についても語られている。

広東語、学習してみようかな。
幸いにも今住んでいるマレーシアは華人が多く中華文化に溢れているので、中国語に触れる機会はたくさんある。
クアラルンプールは広東語話者が多く、ジョホールは北京語話者が多いそうだ。
ジョホールで広東語学べるとこないかなー。

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