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輝く文章

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noteの中で書いた文章はこちらにまとめました。
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誰もが誰かの大葉、パクチー、花椒

誰もが誰かの大葉、パクチー、花椒

ほとんどすべての人に、好き嫌いがある。
たとえば食べ物の好き嫌い。大葉やパクチー、花椒といった食べ物が嫌いな人がいたとする。これらの食べ物は香りが強く、料理に触れている部分にまでその香りが移ってしまう。つまり、大葉やパクチーそのものを咀嚼しなくても、それらの触れた部分(料理)を口にさえすれば、それらの”存在”を感じてしまうことになる。すり潰さなくても、刻まなくても、そこに”いる”だけで存在を醸して

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辛口そして幸い

辛口そして幸い

田山花袋『蒲団・重右衛門の最後』という本を読んだ。
女弟子に熱を上げる中年文学者の生きざまを、露悪的なまでにリアルに描いたのが『蒲団』。
乱暴で放蕩な村の鼻つまみ者・重右衛門の、駆け抜けるような人生を回顧する物語が『重右衛門の最後』だ。

友人を通してこの本を知り、すぐに取り寄せて『蒲団』を読んだのだけれど、『重右衛門の最後』の方はなんとなく読まずに放置していた。それを最近思い出し、久しぶりに本を

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少し多めの悲しみを携えてGO

少し多めの悲しみを携えてGO

最近、映画を続けざまに観ている。
というのも、バンド活動を通じて知り合った映画好きの先輩に、『エイリアン』のBlu-rayボックスをお借りしたのだ。(そして、人生ではじめて『エイリアン』を観た!)
まず自宅でエイリアン1~4を視聴し、本日、絶賛上映中のシリーズ最新作『エイリアン:ロムルス』を鑑賞。過去作として残っている『プロメテウス』や『エイリアン:コヴェナント』はこれから視聴するところである。

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ねずみ

ねずみ

先日外を歩いていたら、道端で死んでいるねずみを見つけた。目を開いたまま、ぐにゃりと路肩に寝そべるように横たわっており、最初は生きているように見えた。死んで間もない状態だったのかもしれない。
はじめ、わたしは「あ、ねずみだ」と驚いて数秒見つめたのち、そのまま通り過ぎた。ねずみの毛は何だか柔らかそうで、動物として綺麗だなとすら思った。
それから思い立って道を引き返し、そのねずみをもう一度よく見た。まっ

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実家の猫のこと

実家の猫のこと

先日、実家の猫が天寿をまっとうした。もともと実家には3匹の猫がいたが、猫特有の病気の影響などもあり、順番にこの世を去り、ついに3匹目の猫も鬼籍に入ったということである。この猫はもともと線が細く病弱な体質であったが、加齢により目が見えなくなってからは逆にたくましくなり、体もややふっくらした。若い頃は擦り寄ることもしないクールな性格だったけれど、ばあちゃん猫になってからはたくさん人間に甘えるようになっ

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蝉を気にする

蝉を気にする

夏が特別好きだ、と思ったことはないが、今年の夏は始終「蝉」のことを気にしていた。今年は蝉が鳴きはじめるのが、ひどく遅い気がしたからである。
すでに猛暑の様相を呈していた6月頃から、わたしは蝉のことを気にしていた。去年は、もうこの時期には蝉の鳴き声が聞こえていた気がするけれど…。そう思いながら、ベランダに出て洗濯物を干すたびに耳を澄ませた。

7月に入ってからも、やはり蝉の鳴き声は聞こえてこなかった

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夏の予定

夏の予定

この夏に、楽しみな予定ができた。

先日、親しい友人と会う相談をしていた。すると同日、思わぬ方面から嬉しいお誘いが舞い込んできた。だからその日、わたしは夏の楽しいイベントが二つ決定したのだ。

昼日中の猛暑に熱帯夜にと、すでに猛威を振るう暑さ。なかなかに忙しい仕事。そこそこずっと疲れていて、本を読む集中力さえ失う日々が続いている。ただただ夏が過ぎるのを願うような毎日だったが、今は心にハリを戻しつつ

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終わりし

終わりし

ネットで買い物をしようと、色々と商品を物色していた時のことだ。ふと、夏用の服が欲しいなと思い、「デニム 薄手」というワードで検索すると、たちまち候補商品が現れる。しかし、その商品の大半が異様な写真。異様に腰が細く、異様に足が長い、不自然なほど加工された細長いモデルの写真だ。
しばらくスクロールを続け、信用できそうなアイテムがないか探してみたが、それは砂場の中から一粒の砂金を見つけるくらい骨が折れる

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音楽

音楽

好きなバンドが新譜を出した。他のバンドとコラボしたEPだった。
個人的にはそのコラボに胸を打たれるような相乗効果を感じず、「コラボなしでの新譜が聴きたかった…」と思わなくもなかったが、バンド活動をしている現在の身からすると、彼らがその音源を作るに至った情熱や苦労がその新譜に詰まっているのだから、これはファンのわがまますぎるなと反省する。

ところでその流れで、そのバンドが過去にコラボしていたミュー

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鈍く、分厚く

鈍く、分厚く

なんだか仕事っていろいろだ。
わたしの仕事は一人で完結できる側面もあるけれど、ライターというよりディレクター業に勤しむようになってからは、「対ヒト」の側面が強くなった。で、いろいろな感情を持つ人と関わる機会も増えた。

仕事上のパートナーであっても、いい大人であっても、「嫌い」が漏れ出ちゃっている人がいて、現在おそらく、そういった感情に当てられている。これは人生で稀によくあるケースなのだけど、今回

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爪切り解禁

爪切り解禁

先週、5月10日で先住猫が6歳になった。
当時3歳だった保護猫の彼を譲渡していただいて、一緒に暮らして約3年目。先日、なぜか自ら人間用体重計に乗った彼の体重は6.95kgで、うちに来てから確実に”成長”していると感じた。もとから大きな猫だったし、わたしも大きな猫は大好きだけれど、大きすぎは時に健康障害にもつながるため、今後も健康管理には努めようと思った。

そんな猫、うちに来て1年目は非常に警戒心

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鳥…。

鳥…。

雨が降る寒い日のこと。
部屋の空気がこもりがちなので、薄く窓を開けながら仕事をしていると、その隙間から鳥の鳴き声が聞こえてきた。聞こえてきたというより、鳥の声がやけに大きく、否が応でもその声が耳につくのである。

それもそのはず、ベランダの物干し竿に一羽の鳥がとまっていたのだ。あろうことか、その鳥はそこで離れた仲間の鳥と会話をするように鳴き声を交わしているのである。まさに雨宿り中といった様子で、降

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空気を読めるかどうか問題

空気を読めるかどうか問題

空気を読めるか、読めないかという話。
ある企画について話し合いを進めており、その企画資料が出来上がった時のこと。資料作成者が関係者各位に「資料について誤りがないか、気になる点がないか、忌憚なき意見が欲しい」と言った。
その資料について、わたしは個人的に気になる点があったが、指摘の仕方によっては”揚げ足取り”ととられかねないため、まずは周りの出方を伺う。すると周りとしては、特段資料に気になる点がなか

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3月の空気

3月の空気

先日、友人と食事に行った。仕事を終えたあと、二人で街に繰り出すと、どこの店も満員御礼。それは、華の金曜日というタイミングだからという理由だけでなく、3月下旬に差し掛かった今が、異動や退職や卒業といった送別にまつわる時期であることも関係しているようだった。

去年もnoteに書いた気がするが、わたしは春の雰囲気が苦手である。入園・入学・入社など新しい環境へ飛び込む者たちの期待と不安、また彼らを受け入

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