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杉浦日向子 終わりのある旅

昨年から浮世絵に目覚め、色んな展示会を通じて江戸の情景に魅了されてきた。そんな中、YouTube 様に見透かされた様に出逢ったのが、原恵一監督の「百日紅」。
元々「アッパレ!戦国大合戦」「モーレツ!オトナ帝国の逆襲」のファンだったので、原監督の描く北斎、というのは今の自分の浮世絵モードにピッタリで、早速鑑賞。

うーん、いやいや、素晴らしい。

世界観とか、木造の両国橋をくぐる時の足音、妖と現実の曖昧な境界線のリアリティとか、そして時代考証と豆知識。
元々「アッパレ!・・・」で時代考証には定評のある監督だったんだけど、なんだかそれだけでは説明のつかない深みを感じた。

なんだろう?

原作者がいるんだ。
杉浦日向子さん。
なんだか聞いたことあるような、ないような。(ごめんなさい)
Amazonでざっとレビューをチェック。
どうやらこの方、只者じゃないらしい。
え?もうお亡くなりになってる。
そんな。
なんて気づいたのはほんの三週間前。
気づいたらこんなに読み漁ってた。(笑)


杉浦日向子さんには二面性がある。
・江戸風俗研究家&エッセイスト
・アーティスト(漫画)
どちらも一級品だけど、
読者に対して愛想のいい前者に対して、後者は別人の様に独自の世界に浸りきったアーティスト。
江戸風俗研究家という知識の土台の上に、信じがたいほどの創造性があって、本当に奇跡的な人だ。
ご本人の中では両者表裏一体なんだろう。
江戸の生活臭を、庶民の会話や情緒、心象レベルで想像して、「浪漫に浸りきった妄想」が、物語となって紡がれる。

エッセイ:
知識は勿論、その楽しみ方、なんで大好きなのか、が披露されている。

漫画:
本人が夢想、妄想、咀嚼したイメージそのものが作品化(具現化)されてる。

両方とも楽しめるファンもいれば、一方に偏ったファンもいるんだろうな。
どっちも突き抜けてる。
僕はこの人の解釈する江戸が好きだ。
さて、そのアーティスティックな一面も一筋縄ではいかない。
百日紅
合葬
二つ枕
百物語
どれも作風が違う。
目指してるコンセプトが違う。

二つ枕

凄いな。
春信、歌麿、と描き分ける試みも面白いけど、なによりも会話の移ろいと共に変化していく空気。
これ、なんだろう?
なんか知ってる感触。
ジャズかな。
コードで展開するロックとかポップとかではなくって、例えばマイルスのノートが、部屋の空気を次々と変化させていくような。
そういう印象の作品。
凄いな。

風流江戸雀


まだ読んだばかりで消化しきれてないんだけど、これまた死ぬまで手放したくない作品になるだろう。
川柳で挟み込むたった4ページの作品集。
絶妙に漂う艶っぽさが心地よい。

とんでもねぇ野郎


珍しく、ギャグ漫画の要素が強い。
声を出して笑ったのはこの作品だけかもしれない。
ただ、全体を包む心地よさは、作者の夢想する江戸時代の庶民の生活情景と心象。
どなたかがレビューしていたけど、妙に頷ける、「高田純次 in 大江戸」。

未読の作品を次々と読み漁ってる。
でもこれは終わりのある旅だ。
全て読み尽くした時がちょっと怖い。
いかんなぁ。
久々にハマった。
ゆっくり、噛み締めるように読もう。

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